Associate Professor Shimizu

 世界を駆け巡ってご活躍の清水氏ですが、彼のTwitterに興味深い発言がございました。引用してご紹介します。

 住宅は,投資財か消費財か。人はなぜ住宅を所有することを意識するのか。投資財であれば資産としての側面が重要となり,その資産価値が経済活動の中で重要な意味を持つ。消費財であれば,その対価となる賃料と他の消費活動とのバランスが重要となる。そのサービスから受ける効用との対応が重要となる。
9:33 PM Aug 26th webから

 ここで物価といったときに,CPIを意味しますが,その30%近くを家賃が占めています.家賃は,業界人であれば常識ですが,強い粘着性があります.つまり,変動しないのです.そのシグナルを見て金融政策をしていては限界があります.
1:55 AM Aug 28th webから

  スコットランドのスカイ島に到着。すばらしい景色。今日は,lovely day。賃貸レポートを書いていて思ったこと。賃貸市場とか分譲市場とか分断して議論をすることはできない。今,われわれが考えないといけないのは,人と「家」との程よい関係をどのように構築していくことではないか。
12:17 AM Aug 30th webから

 住宅という言葉を,「家」へと変えたときに,人と住宅の程よい関係が見える。ヨーロッパに来ていつも思うことは,「住宅」というものが,われわれの生活の中で求めているものと違うような気がすること。日本は,資産価値として捉える住宅に固執しすぎたのではないか。それが住宅を貧困にしたのでは。
12:21 AM Aug 30th webから

 英国人の研究者が日本のリノベ市場の研究をしていて,その報告を聞く。コメントしたこと。リノベ投資と住み替えを促進するということは,ある意味対立すること。たとえば,家族の変化に応じて家と不一致が起こったときに,転居するかリノベで対応するかを考えるはず。日本は,住み替え確率が低い。
6:58 AM Aug 31st webから

  ということは,リノベで対応しているかというと,欧米よりもその投資額は小さい。つまり,住み替えもしないとリノベもしない。住宅との不一致が起こっても,何もしないということ。何でなのかと逆に質問されたが,日本人は,家に対して何も考えていない,我慢するものだと思っているということか。
7:00 AM Aug 31st webから

 住宅に投資しない分,教育に投資をしてもよい。旅行で消費をしてもよい。われわれは,住宅に何を期待しているのか。何も期待していないければ,投資も発生しなければ,住み替えも起こらない。日本語だったらもう少しうまく説明できたんだけど。自分の研究報告も終了。統計学者からの評判はよかった。
7:02 AM Aug 31st webから

 戦後の日本で長く続き、今も続いている持ち家政策についての評価は、茫猿も同じような考えを持っています。 持ち家ということは、いわば人間のイソギンチャク化であり、人生の選択肢を小さくします。 フリーオプションからノンオプションへ移動すると云えましょう。
 でも持ち家政策は、国民を小さな馬鹿高い家に固執させることで、高度成長を実現させたとも云えます。 個人資産の形成という惹句で国民を誘導しておいて、その実、個人の所得を支払い金利として移転させ、二十年もすれば劣化する建物を所有させ、二十年もすれば居住者の高齢化や社会変化で価格下落を招く、坂道の多い郊外住宅団地小区画を保有させたと云えます。 ミニ開発建て売り住宅などは個人資産の浪費だけでなく、地域社会環境の劣悪化(スラム予備軍)と評価するのが正しいのです。 
 持ち家を社会的ステータスと今も誤認識させている風潮は、結局の処、資産形成のつもりが十年、二十年スパンでの浪費であり、国富を消耗させただけではないのかと考えています。 湾岸エリアでの超高層マンションなどは、十年、二十年単位で想像すれば、地震と自己の高齢化と家族構成の変化に思い至って、そうでなくとも職場の変動を考えればとても買えたものではないのですが、何故かステータスに置き換えられているのです。
 湾岸エリアでの高層マンションライフなどは、持ち家でなく五年単位でのレンタルであれば、憧れるライフスタイルだと思うのです。
 話は全く変わりますが、日本にはクオリテイ・ペーパーがついぞ生まれなかったことが、金融業界、住宅不動産業界、電鉄業界などの広告出稿に大きく依存しているマスコミが、この国民資産形成のノンオプション化に大きく力を貸したと云えましょう。
 先に述べた、坂道の多い郊外住宅団地やミニ開発建て売り住宅などは、資産形成におけるマイナスのスパイラルを誘導するものであり、今話題になっている教育機会における貧困階層再生産にもつながっていると考えています。
 資産形成ともいえない浪費が招く住宅ローン返済に追われることは教育投資を限定させますし、受けられたであろう教育機会も居住地に限定されます。挙げ句、家族が同居しないことにより家族内所得が分散して、家族資産形成にも悪い影響をもたらします。資産形成と云いながら四散を招いていると云っても、言い過ぎではないでしょう。
 冒頭に引用しました清水氏のようなオピニオンリーダーが、日本の住宅政策の舵を、”ハウス:家屋”から”ホーム:家庭”へと、大きく切り替えていってくれることを期待したいものです。

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