木の芽田楽

 この春は好天続きで降雨量がとても少ない。サクラには恵みの天候にしても、畑の苗物にとっては恨みの晴れ続きであるが、夕刻からは久しぶりの雨である。 本格的な降りを期待したいところである。 今夜は芽吹いた山椒の芽を摘んで山椒味噌を作り、木の芽田楽を楽しんだところである。


 山椒味噌は、山椒の若芽をすり鉢で摺り下ろし味噌と合わせるのである。 味噌は信州麦味噌に煮きり酒と砂糖を加えたものである。 田楽の食材は、焼き豆腐、コンニャク、それに今が旬の筍である。 田楽とはいいながら竹串は省略した。 味噌の色が鮮やかな緑色にほど遠いのは、ホウレン草を用いなかったからである。 飲食店の山椒味噌が鮮やかな緑色なのは、白味噌をベースにホウレン草をすりつぶして混ぜてあるからで、山椒の緑のせいではない。 一本をもとめて湯がいた筍の残りは、明日にでも飛騨牛と炊き合わせるつもりである。 筍は若竹という、若布と竹の子の炊き合わせが季節ものであるが、旨さという点では筍と牛肉の炊き合わせに優るものはない。
 
 筍と云えば、筍御飯、若竹汁、刺身筍などの調理法があるが、なんといっても筍の旨味を味わえる調理法は焼き筍である。 掘り立ての筍をできれば竹林で皮付きのまま焼き上げ、アツアツに味噌か醤油をかけて食するのが絶品である。とはいっても、いつでもどこでも食せるというものではないから、畑に孟宗竹を育てようかなどと、この季節になるといつも考えるのである。 竹林を育ててみても食する筍の量はしれているし、広がり始めた竹林の始末も厄介だから、孟宗竹の移植はいつも考えるだけで終わっている。
 畑にはジャガイモやトウモロコシなどの他にも、種を播いてある大根や青梗菜が芽生えている。この雨で成長が早くなるだろうから、晴れたら抜き菜をしてオヒタシや味噌汁の具にしようと考えている。 こうして3.11大震災に始まったこの春も過ぎてゆき、鄙の茅屋の景色も晩春から初夏へと移ろってゆくのであろう。

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