被災地の桜

私には、自分が見たものを、言葉にして伝える力がありません。テレビ映像や新聞報道から想像していた状況と同じなのですが、被災地の真ん中に立った時感じたものを表現する力はございません。 車の音は聞こえます、海鳥の鳴く声は聞こえます、ときおり人の声も聞こえますが、異様なほどの静寂を感じます。 常であれば潮の香りが漂っているはずです。 常であれば町なかの様々な音が聞こえてくるはずです。 買い物客の会話、交差点の信号音、行き交う車、いつもの町のいつもの光景のありふれた音や景色があるはずです。

何もありません。 あるのは破壊された残骸と瓦礫の山、他には所々で作業する警察や自衛隊の人たち、何かを探すのか佇んでいる人、かつての町の中心街をはずれた山あいの、とある入り江には人影もなく、残がいすらも波にさらわれたのか建物の跡らしきものと潮風の音だけがあります。 海が間近なのだから潮の香りを感じるはずなのに、被災後一ヶ月半を経ても漂ってくるのは表現し難い異様なニオイです。 目を山側に移すと、なぎ倒された木々のあいだに人々の生活の痕跡を示す様々なものが、津波の到達位置を示すかのように残されています。


2011.04.27 前日に岐阜羽島ICから名神高速、小牧JCTから中央高速、岡谷JCTから長野道、更埴JCTから上信越道、上越JCTから北陸道、新潟中央JCTから磐越道、郡山JCTから東北道花巻南ICへ、そして27日には花巻から国道283号を経て釜石市、目的地岩手県大槌町へ、合計往復2000kmの距離を走って、ささやかな支援物資をお届けしてきました。
1959年、岐阜県輪之内中学卒業の同級生5名は、地元自治会や商工会役員あるいはまだ現役の会社経営者など立場は様々ですが、3.11被災者にささやかでも何か役立ちたいという思い、ある人は地元の防災に何かを得たいという思い、ある人はこれからの自らの人生に何かを得たいという思いなど、様々な思いで、「年寄りの冷や水」と笑われるのは覚悟の上で大槌町を訪れました。 あまりの惨状にそれほど多くの写真は撮れませんでしたが、何枚かの写真を掲載します。
報道で見た記憶がありますが、津波で陸に揚げられた貨物船です。 間近で見れば、船の大きさ見上げる高さに息を呑みます。(釜石港にて)

高さが10mくらいはあるでしょう、頑丈なはずの防潮堤が崩壊していました。
破断している道路は、画面右上の道路へ続いていたものです。

同じ防潮堤です。子供が崩したブロック遊びのように崩壊しています。
この防潮堤がブロック倒しのように崩壊したのは「函塊構造」であることと、越波の破壊エネルギーの凄まじさによるものと思われます。 越波はともかくとして、函塊構造の採用は、予算的制約、工期短縮などによるものと思われます。

波にさらわれた建物の跡にはヘドロが堆積しています。瓦礫処理もたいへんですが、ヘドロ処理も難事であろうと思われます。

建物屋上に打ち上げられた車。

倒壊した建物には、調査結果を示すマークが書かれています。瓦礫処理は個々の旧所有者との関係が複雑であり、単純一括処理ができないことがネックとなっています。

津波とその後の火災を受けて飴細工のように折れ曲がった鉄骨。火災の原因は、漁船や車から漏れ出た重油やガソリン、港の重油タンク、ガソリンスタンド等々によるもので、海面に漂うそれらの油に何かの要因で引火したと思われます。

一昨年に私が乗客となった三陸鉄道リアス線の線路。
線路も路床も橋桁も流失しています。三陸海岸をつないでいる、そうでなくとも経営状況が厳しい三セク鉄道の将来が危ぶまれます。原発の補償問題とも関連しますが、公共インフラの民営化に潜む問題点を突きつけています。公設民営の拡大を改めて考え直す時期かもしれません。

同じく三陸鉄道。

大槌町の桜は常と同じように咲いていました。 何があっても変わらぬ自然の移ろいと述懐するのは容易ですが、瓦礫越しにみる桜は「癒しなどではなく」、「非情さ」を感じさせます。

被災した建物に残された標語が、何を教えてくれるのか考えさせられます。

支援物資集積センターにて、自衛隊の皆さんに手伝って頂いて、お届けした生活雑貨や調味料等物資をトラックから降ろす輪之内中学1959年卒同級生です。

帰り道、磐越道磐梯山SAから眺めた磐梯山。SA駐車場には観光バスの姿は一台も無く、トラックと支援関係者標識を付けた車ばかりでした。2000kmの行程中にすれ違った観光バスは数えるほどだったと記憶します。

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被災地の桜 への1件のフィードバック

  1. 福田勝法 のコメント:

    本当に、本当に、お疲れ様でした。文面、画像、言葉がありません。

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