Rea Map 2011

2008年6月からスタートしました「NSDI-PT(地理空間情報システム構築事業)」も四年目の事業年度を迎えました。 茫猿はこのプロジェクトに提案者として当初より参画していますが、今年度も委員として参画できるとの内示を受けました。そこで、これまでのおおよその経過と、今2011年度の事業計画について整理してみようと思います。


一、Rea Map の試験施行
2010年度はRea Map の試験施行が東京、大阪など全国14の都府県士協会にて実施され、現在も継続中であります。また今年度は試験施行区域の拡大も検討されるでしょう。 この試験中のRea Map は以下の仕様です。
1.背景の電子地図は地理院地図及びYahooMapを使用しています。
2.搭載データは地価公示、地価調査、相続税標準地、固定資産税標準宅地、並びに取引事例である。 公示、調査データについては国土数値情報を用いるものであり、その他の評価データ並びに事例データは参加士協会が提供するデータを、当該士協会会員に限定して閲覧に供している。
(注)ReaMapはReaNetの機能の一部であり、ReaJireiともリンクするものである。ReaMapにて閲覧参照できるエリアは所属士協会所掌エリアに限定される。
(注)電子地図上に公示地や事例地を表示する上で必須とされる情報は緯度経度情報(地理情報)である。地価公示と地価調査については、国交省が提供する国土数値情報が用意されているが、他のデータには公開されている地理情報はない。したがってデジタル地図のASP機能等を用いて緯度経度情報を取得する等(ジオコーディング)、事前に地理情報を準備しておく必要がある。
二、Rea Map を使用する事例調査《Map Client》
Rea Map における第一項、即ち閲覧機能はNSDI-PTの本筋ではない。過去データをReaMapにて閲覧できることはそれなりの意味があるとはいえ、閲覧機能はNSDI-PTの副産物に過ぎないのである。 取引事例調査を含む鑑定評価の全工程に地理情報システムを広汎かつ縦横に機能させることが目標であり、特に事例調査の負担を軽減すると同時に調査結果の均質性を確保することに意味がある。
この事例調査地理情報システムを Map Client と仮称する。Clientの意味はネット上の地図(Yahooもしくは地理院地図)を背景図として使うが、データはクライアントマシン上におきオフライン作業を行うという意味である。 Map Client はベータ版の構築を2010年度事業として終えており、2011年度は試験施行が可能である。
(注)Map Client の構築に際しても、Simple is Best を心懸け、必要以上の作り込みを行わない。
三、Map Client の概要
1.オフライン処理
オフライン処理を原則とし、Yahoo地図からは所要のデータを受け取る。Rea NetあるいはRea Mapサーバへのデータ送信は行わない。
2.調査対象とする事例元データ
調査対象とする事例元データは、各会員が自己のPCに保存済みの事例調査地点基本データ(XMLファイル、CSVファイル)をMap Client に取り込んで利用する。データのフォーマットはJirei10.Txtである。
(注)各会員の利用するスタンドアローンPC内における処理であるからセキュリテイに関わる新たな問題は生じない。
ここで見落とされがちなことは、取引事例地に関わる緯度経度情報を調査のどの段階で取得するのが良いのかという点である。現在までのRea Map(地図システム)による事例閲覧はいわゆる五次データについて、ジオコーディングを行って緯度経度情報を取得しデジタルマップ上に表示するという工程を経ているのが通例である。 当然のことながら住居表示が施行されていないエリアでは正確な位置が表示されないし、住居表示施行地域でも若干のズレは避けられない状態にある。
筆者はこの地理情報取得作業を、いわゆる三次データ調査段階(新スキーム事例調査)で行おうと提案するものである。三次データ調査工程のなかで緯度経度情報を取得し正確な地理位置を確定することにより、施設距離データも自動取得できるし、三次データの閲覧(データ利活用)に際しても効果的なのである。また自明のことであるが、公示等事例カード作成における位置図も簡単に作成できるという効果もある。何よりも三次データの利活用に寄与する効果が高いという点に着目したいのである。
3.Map Client の地理情報機能
事例元データを取り込むと、Yahooジオコーデイング機能によりネット接続するYahoo地図からおおよその場所を検索して表示する。(位置表示される地図縮尺は1/3000もしくは1/8000)
続いて調査担当者が、地形図等資料により具体的な場所を1/1500図面にて特定し確定することにより、当該場所の緯度経度情報を取得し事例ファイルとして保存する。位置の確定保存作業はドラッグ&ドロップにて行う。
4.各種施設距離情報の取得
並行してYahoo-API(ルーテイング機能)を利用することにより、事例属性データとして所要の施設名称並びに道路距離情報を取得する。(Yahoo Mapとネット接続されていることが条件である)
取得する属性データは最寄り駅、最寄り小学校、最寄り商業施設、その他特定施設または地点への道路距離情報である。 各種施設については、予め設定した条件に基づく自動取得(あとで変更可)、あるいは施設名を入力して道路距離情報を取得保存するものである。 駅等施設のルート検索条件は、市区町村単位で事前に設定しておくものである。
四、その他の事項
1.取引事例調査とのリンク
前三の4項で取得し、会員PCに保存されるファイル内のデータ項目は、事例番号、所在地等の基本的事項の他に施設名称と距離情報、並びに緯度経度情報である。この保存データを用いて(当面は印刷して)新スキーム調査補充資料とする。

2.地図の印刷
地図の印刷は、(a)複数事例地の位置図印刷及び、(b)単体事例地について所定の書式(公示事例・二枚目)にて印刷(PDF化)の、二方法を用意する。
※位置図の他に求められる地形図については、ドキュメント管理ソフト(フリーウエアもしくは廉価なものが望ましい)を利用して、地形図のスキャニング、切り取りコピーという行程を経て、前記PDFファイル(公示事例・二枚目)に貼り付けることで提出データを完成させる。
3.固評標宅等の地理情報取得
固評標宅等について緯度経度情報を簡易安価に取得できる方法が見あたらない現状では、JIREI10フォーマットに準じたデータフォーマットを用いて、前三の3機能を利用して地理情報を取得するのが、もっとも簡易であろうと考えられる。
4.各種分科会等における価格検討
公示をはじめ固評等における価格検討業務に前三の3項機能を利用できるものである。会議場がiNet環境にあり、プロジェクターが利用できれば、Map Client に価格検討に必要なデータを取り込み電子地図上に表示して、会議資料として活用できる。
公示・調査について、見込み価格や変動率をデジタル地図上に表示し価格検討や均衡比較を行うツールとしての利用は、テストラン士協会を中心にして既に普及しつつある。
五、茫猿追記
デジタル化を進めて行こうとする時に、常に障害として存在するものがある。 それは従来からのアナログ型書式や作業手順などにこだわり、デジタル型への(不連続的な)転換を認めようとしない考え方です。
例えば、Rea MapやMap Client を使うことの最大の意味は、
1.地価公示事例カード二枚目に象徴される、紙と鋏と糊的処理を無くすこと。
2.デジタルデータはデジタルのまま利用し、間違っても印刷などさせない。
という点にあります。《印刷は、漏洩や改竄などの発生原因に為りやすい。》
Map Client で緯度経度情報を取得すれば、紙であれPDFであれ従来型の位置図はもう不要である。 緯度経度情報を用いるからこそ、多数の事例データや評価地点データを時空を超えて一覧一括処理できるのです。 また、デジタル処理の進捗は多数の数値データ取り扱いを容易にします。 その時には、散文的データなどは無意味である。

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