ただ今の鑑定協会は、「新スキーム改善問題」並びに「依頼者プレッシャー対策問題」に直面しています。 新スキーム改善問題が浮上してから既に半年が経過し、依頼者プレッシャー対策問題が国会で審議されてから既に一年余が経過しています。 しかし、鑑定協会はこの両問題について、その解決にあたる基本方針を未だ明確に示すことができていません。 今こそ理事会は、協会定款第13条並びに第21条に定められる権能を、速やかに果たすことが求められていると考えます。 今、理事会が為すべきは、両問題解決の基本方針を審議決定することであろうと考えます。 そこで私は、その基本方針を明らかにする決議案についてRea Netを通じて、常務理事会並びに理事会に以下の提案を致しました。
同提案が理事会に上程されるためには、常務理事会の承認、もしくは理事会運営規程第13条に規定する「理事会構成員の10分の1以上の賛成者の氏名及び所属地域の記名」が必要です。この規定を踏まえて、理事各位には、議題提案に賛同頂けるなら、「賛成の意思表示」メールをお寄せいただくようにもお願いしました。
「理事会決議(案)」
1.新スキーム改善特別委員会が新スキーム改善案を策定するに際しては、資料の収集・管理・閲覧・利用に関する規程に規定する「相互主義」、並びに不動産取引価格情報提供制度に係る情報の取扱基準に規定する「関係法令・ガイドラインの遵守」に則ること。
2.鑑定評価業務適正化特別委員会が依頼者プレッシャー対策案を策定するに際しては、平成23年6月1日公開の不動産鑑定業将来ビジョン研究会報告書に記述する「ⅢのⅠ-⑧」に準拠遂行すること。
《提案の背景説明》
一、新スキーム改善問題に関して、鑑定協会が先ず為さなければならないことは、自らが定めた規程並びに取り扱い基準を遵守するという「コンプライアンス基本姿勢の確認」にあると考えます。 理事会決議として、改めて以下各項の遵守を表明し、当該規程並びに取扱基準に則った改善案の策定を求めるよう提案するものです。 自らが定めた規程すら遵守できない鑑定協会が社会から信頼を得ることはなかろうと考えます。
「資料の収集・管理・閲覧・利用に関する規程」
(士協会等間の相互主義)
第4条 士協会等は、共存共栄の理念のもと、協議の上、士協会等間相互において、資料の収集・管理・閲覧・利用について、他の士協会等が自らの会員に対して提供するのと同程度の便益を、他士協会等の会員に提供するよう努めなければならない。
(関係法令・ガイドラインの遵守)
第5条 協会団体及び会員は、資料の収集・管理・閲覧・利用に関して、鑑定法、地価公示法、個保法をはじめとする関係法令、主務官庁及び本会の定める不動産の鑑定評価等業務に係る個人情報保護に関する指針(ガイドライン)などを遵守しなければならない。
「不動産取引価格情報提供制度に係る情報の取扱基準」
(閲覧事務のコンピュータ化)
第4条 新スキーム情報により作成された閲覧用データの閲覧事務は、原則としてコンピュータ化するものとする。
2 前項については、規程第31条により本会が別に定める「事例資料等、閲覧事務のコンピュータ化に係る実施基準」(以下「コンピュータ化基準」という。)を遵守しなければならない。
二、依頼者プレッシャー対策に関しては、ビジョンに記述される方針を断固遂行されなければならないと考えます。
Ⅲ.ビジョン実現に向けた取り組みの提案
1.専門性と信頼性の向上に関する提案
(8)態勢の整備
③ 具体的提案 ・証券化対象不動産の鑑定評価や財務諸表作成目的の鑑定評価等、その結果が広く一般投資家等に対しても影響を及ぼす業務や公共用地の取得や国公有財産の売払い等、国民の財産に関わる業務については、特に、鑑定評価制度の信頼性・透明性向上の観点から、鑑定業者・鑑定士自身が社会に信頼される態勢(受託審査・報告書審査体制、コンプライアンス態勢等)を整備することが必要である。
ビジョンが述べる「態勢の整備」は鑑定業者・鑑定士に求める記述となっていますが、先ずは鑑定協会が先頭に立って、態勢整備を図るべきであろうと考えます。 提案主旨は鑑定評価の透明性確保であり、鑑定協会が「鑑定評価書の原則開示」を社会に対して宣言することにあります。
鑑定協会が鑑定書の原則公開を宣言し、次いでコンプライアンスやCSR(corporate social responsibility)の観点から、依頼者の協力を要請すべきであろうということです。 その上で、官公需であれ民需であれ、社会的影響度の高い鑑定評価書の骨子を協会が設けるWeb Siteに公開して、利害関係者をはじめとする社会一般のレビューに供するというのが提案骨子です。
(注)本決議提案に関する背景の詳細は、『鄙からの発信』に掲載しました以下の記事をご覧下さい。
「理事会の果たすべき役割について」
政治は結果 (2011年8月26日)
新スキーム改善の行方 (2011年8月18日)
「新スキーム改善問題について」
新スキーム(名)を捨てる時 (2009年6月20日)
不動産センサス制度創設提案 -1-(2011年7月10日)
不動産センサス制度創設提案 -2-(2011年7月10日)
「依頼者からの不適切な示唆に関わる問題について」
Client Influence Problem (2010年8月15日)
Rea Review 制度創設提案 (2010年8月18日)
Rea Review Q&A (2010年9月 4日)
【追記】
幾つかの最近の本サイト記事、並びに茫猿のこの常務理事会並びに理事会宛の提案行為は、様々な批判を招くであろうことと承知しています。 されども、今為し得ることは何かと考えたときに、これしかないであろうとの結論に至りました。 歯牙にもかけられない蟷螂の斧であろうと承知しています。 蟷螂の斧に然れども、茫猿は遠吠するに如かずと考えるのです。
関連の記事
- 第285理事会配付資料&質問 : 2011年9月18日
- 茫猿の提案 : 2011年7月21日
- 第二次改善・修正案への疑問 : 2012年10月15日
- 新スキーム小委レポ : 2006年12月25日
- 新スキーム説明会資料 : 2005年8月18日
- 新スキーム小委再編成 : 2006年4月17日
- 第二次新スキーム改善 §Ⅳ : 2012年9月29日
- 新スキーム特別委? : 2011年6月30日
- 新スキーム・リポート : 2005年2月26日
- No289理事会報告 : 2012年4月11日
御無沙汰しております。
久しぶりに「鄙からの発信」を拝見しました。(お気に入りに入れています。)
いつもいろんな事に言及され、それを自分なりに解釈して、ストレートに発信する事には本当に、本当に頭が下がります。
最近は理事に就任され、また一段と舌鋒はさえていらっしゃると感じたのは私一人ではないと思います。
大先輩の貴殿に百も承知のことと思いますが、「情報」は口から口に、face to faceで、伝わります。
また、情けに報いるとも書きます
一度、印字にしたら、活字にしてしまったら、資料(データー)の類です。
勿論、データーは大切なものです。
資料がなければ、何も出来ませんから。
私の看護官が郷里静岡に帰り、今日から二日休みです。
幼馴染が病気を苦にして縊死したそうです。
今年六月一日に、郷里大分の弟以上に可愛がっていた奴が縊死しました。
原因は今もって不明です。
「先に逝く不幸は許せど、残りて悲しみを抱く身の辛さよ。」を味わっています。
残暑の砌、ご自愛下さい。
時間があれば事務所にお立ち寄りください。
協会から近くです。
阿南逸郎 拝