鎧袖一触-Ⅱ

予想どおりと云うか予定どおりの結果となりました。 何がかと云えば、2011.09.06付けにてRea Dataにて開示して、提案賛同者の募集を行った常務理事会並びに理事会宛の決議案提案の結果です。
11/09/06にReaDataを通じて発信した理事宛先数 53件
11/0913までに詳細表示またはダウンロードされた理事数 30件(56%)
11/09/13までに寄せられた提案に賛同する意思表明理事数  0件
蟷螂の斧は見事に鎧袖一触されました。予定どおりとはいえ、ものの見事な空振りでした。
もっと驚いたのは、今に至るも53名の理事のうちReaNet未接続理事が8名(15%)を数えたことです。
ReaDataのログは詳細に表示されますから、理事個々の閲覧結果もわかっておりますが、そのことは言わぬが花でしょう。 この結果は予想していたこととはいえ、とても寂しいことです。

昨日、2011.09.21開催の第285回理事会の議案資料並びに報告案件資料が届きました。 昨夜から今朝にかけて、二度ほど資料の全てに目を通しましたが、今は暗然としています。 その配付資料に記される内容の、あまりにも「Too Late,Too Little,Too Fuzzy」なことに言葉を失っているのです。 もうひたすら黙することに徹しようかとも思わないでもないのですが、茫猿は遠吠することに意味があり、蟷螂の斧を振るうことに存在理由があるのだと、萎えがちな自意識に問いかけています。
第285回理事会配付資料については、理事会開催前ですから、その詳細を語ることは信義則として自重します。 いずれ理事会終了後には、理事会報告と重ねて記事に致します。 今の時点ではザクッとふれておきたいと思います。
《仮称:鑑定評価監視委員会設置(議題)並びに依頼者プレッシャー対策》
鑑定評価監視委員会を設置し、鑑定ビジョンにも記述されている「依頼者プレッシャー通報制度」を創設する方向で検討が進められているようです。
茫猿は「依頼者プレッシャー通報制度」には、重大な欠陥が潜んでいると考えます。 すなわち依頼者からのプレッシャーを受けたとして、鑑定事業者がその事実を監視委員会に報告することは大きな負担あるいは影響を覚悟しなければなりません。 顧客の適切でない働きかけを鑑定協会に通報し、先々に公開されるかもしれないリスクを負うことは、顧客を失うことに他なりません。 仮に鑑定評価依頼を謝絶した後に報告したとしても、その影響は小さくは無いことと思われます。 そのようなリスクを覚悟の上で通報する鑑定事業者が現れるかどうか危ぶまれるのです。
もちろん、そういった制度が存在するという事実は、一種の予防手段にはなるだろうと思われますが、実効性の乏しい方法であるだろうと考えるのです。世間向けのアリバイ工作に過ぎないと云えば言い過ぎでしょうか。 ここでRea Review制度創設を云えば我田引水と受け取られるでしょうが、何よりも全ての鑑定評価書を開示する、開示することが社会の利益につながるのだという、我々自身の覚悟の意志表明が最初に為すべきことのように思います。

 証券化対象不動産の鑑定評価や財務諸表作成目的の鑑定評価等、その結果が広く一般投資家等に対しても影響を及ぼす業務や公共用地の取得や国公有財産の売払い等、国民の財産に関わる業務については、特に、鑑定評価制度の信頼性・透明性向上の観点から、鑑定業者・鑑定士自身が社会に信頼される態勢(受託審査・報告書審査体制、コンプライアンス態勢等)を整備することが必要である。(鑑定ビジョンより引用)

先ずは鑑定協会が先頭に立って、態勢整備を図るべきであろうと考えます。 その主旨は鑑定評価の透明性確保であり、鑑定協会が「鑑定評価書の原則開示」を社会に対して宣言することにあります。
鑑定協会が鑑定書の原則公開を宣言し、次いでコンプライアンスやCSR(corporate social responsibility)の観点から、依頼者の協力を要請すべきであろうということです。 その上で、官公需であれ民需であれ、社会的影響度の高い鑑定評価書の骨子を協会が設けるWeb Siteに公開して、利害関係者をはじめとする社会一般のレビューに供するという姿勢を社会に明らかにすべきであろうと考えるのです。
《新スキーム改善問題》
標題については、所掌委員会より第一次改善案が報告されました。
この件については、鑑定協会が定める「資料の収集・管理・閲覧・利用に関する規程」に規定する「相互主義」、並びに不動産取引価格情報提供制度に係る情報の取扱基準に規定する「関係法令・ガイドラインの遵守」等について、依然として曖昧なままです。
同じく、「不動産取引価格情報提供制度に係る情報の取扱基準(閲覧事務のコンピュータ化)第4条 新スキーム情報により作成された閲覧用データの閲覧事務は、原則としてコンピュータ化するものとする。」とする規定の適用についても曖昧なままです。
また閲覧ログ管理や、閲覧料徴収管理方法も曖昧ですし、なによりも事例調査作成報酬の支払いについては何も記述されていません。 閲覧システム構築と閲覧料徴収そして作成報酬支払いに至る道筋が不透明というか霧のなかにあります。 閲覧システムに地理情報を位置付けることに至っては一行も記述されていません。 さらにいえば、鑑定ビジョンが記述する情報データベース整備に関わる記述も認められません。
本日はここまでに致します。 これから9/21理事会に質問書を提出するかどうか、提出するとしてどのような内容にするのかを考えます。 ところで、配付資料のなかに興味深い一節を見ました。

【研修名に「倫理」が入ると、対外的なアピール度が低いので、「コンプライアンス」等の表現を研修名に取り入れてはどうか。】

鑑定協会は「不動産鑑定五訓」なる倫理綱領を持っていますし、倫理規程第7条には法令・規則等遵守規定を持っています。 倫理は専門職業家としての高度な使命感を達成するための矜持を表すものであり、コンプライアンス(法令・規則等遵守)は鑑定士であれば最低限守らなければならないことであろうと考えます。 意味の異なるこの両者を「対外的アピール度」のために使い分けるような意識こそが糺されなければならないと考えます。

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