新スキーム論議白熱

新スキーム改善に関わる論議がネット上で白熱しています。 とは申しましても、公開WEB上ではなく、所掌委員会内でe.Mailの行き来が白熱しているのです。 10/05開催予定の新スキーム改善委員会を前にして委員長案が提示され、その委員長案を対象とする論議が白熱しているのです。
委員会開催予定時間は限られており、稔りある審議を行うには時間不足は否めないことです。そこで、従来からの審議経過を踏まえて委員長試案が提示され、委員各位の意見を事前に求められたというわけです。 この試案は09/21理事会に報告された第一次改善案を、さらに練り上げたものです。


さて、『鄙からの発信』はこの問題について何度も記事にしてきましたが、いよいよ委員会審議が峠を迎えた気配があります今の時点で、問題点を再度総括してみたいと考えます。
一、新スキーム改善問題は突然に浮上したものではない。
個人情報保護法(H15.05.30公布)が施行されて、従来は提供されていた移動通知閲覧申請書が簡単には提供できなくなったこと、取引情報データベースの安全管理措置が強く求められたこと、さらには当時の国交省土地・水資源局・市場課が、「取引価格情報提供制度」の創設を企画したことを起因として、地価公示スキームによる取引価格情報収集:いわゆる新スキームが始まったのである。
この際に注目しておくべきなのは、2003.07.30年当時に国交省が行った「取引価格情報の開示」に関わるパブリックコメント募集に対して、鑑定協会は、2003.08.29付けにて概略以下の意見書を提出していることである。

「鑑定協会は、この意見書のなかで、A案(個別物件情報開示)に賛成と表明し、収集開示された取引価格の地価公示制度や鑑定評価制度への活用を求めている。また同時に、異常と認められた取引価格に関する調査権の付与を求め、「地価の番人」たる機能と権限の付与を求めている。」

2003.08.29付け意見書は様々に読めるものであるが、少なくとも個別物件情報開示に賛成の意思表示を行っていることは紛れもない事実である。 以上を踏まえれば、新スキーム制度発足当初から、取引事例の安全性確保(一括管理)と透明性確保(全面開示)が鑑定協会に与えられた課題なのである。 それらに対処すべく鑑定協会は安全性確保と透明性確保を旨とする「資料の収集、管理・閲覧・利用に関する規程」と「不動産取引価格情報提供制度に係る情報の取扱基準」を数年前に自主的に定めているのである。
いわば、今日に至るまでに、新スキーム発足後に然るべき対応体制を整えるために、既に数年間の猶予期間を与えられていたのであり、今日までこの課題解決を放置してきたのであれば、不作為あるいは無為の責は免れないことである。 しかし、執行部のみにこの責を問えばよいというものではない。 無作為に過ごした鑑定協会会員の全てが責を負わねばならないと考える。
二、新スキーム改善問題は優れて対外的課題である。
この問題を審議するに際して、鑑定協会内部における取引情報の非正規利用防止ばかりが話題となる傾向が強いが、それはまさに協会内部に於ける自治あるいは自律に関わる問題なのであり、対外的には個人情報データファイルを安全に管理していると認められるのか、透明にかつ衡平に利活用が行われているのかが問われているのである。 この件を置き去りにした、協会内部における従来からの経緯とか閲覧の不衡平などに議論が集中するのは、決して好ましいことではない。 枢要な論点は鑑定協会自身のコンプライアンス姿勢如何なのであり、CSR(Corporate Social Responsibility)意識なのである。
対外的課題という側面からいえば、改善改良時期を明らかにする姿勢も重要である。速やかにとか、成る可く早期になどというお座なり表現ではなく、今年度末までにとか次年度半ばまでになどという、到達時期の明らかな表明も求められているのである。
三、システム構築の課題
鑑定協会のような組織に於けるシステム構築は将来におけるシステム改良に備えて、オープンソース採用を原則としなければならない。(オープンソース:設計にあたるソースコードを、インターネットなどを通じて無償または低額で公開され、誰でもそのソフトウェアの改良、再配布が行えること)
多くの場合、ベンダーは顧客の囲い込みを意図して、独自ソースの組み込みを行おうとするものであり、それは排除されるべきである。
もう一点は、利用者(鑑定士)のコンピューテイング・スキルを考えれば、やたらと作り込んだ包括的総合システム構築を目指すべきではなく、複数モジュールから構成される、多少は使い勝手に劣っても、改良が容易なシステム構築を目指すべきである。 シンプル イズ ベストなる所以である。
四、総括すれば
小異を捨てて大同につくと申しますが、今は小異を残して大同につく時であろうと考えます。 骨太の方針を決めて、安全性確保と透明性確保を旨とするコンプライアンス姿勢並びにCSR(Corporate Social Responsibility)を内外に鮮明にするべき時と茫猿は心得るのです。 夏は去りゆきましたが、新スキーム改善委員会は暑い季節を迎えているようです。
蟷螂が愛車の上で何かを狙っているようです。 よくよく見れば、車の屋根には小さな蜘蛛が何匹かいます。 彼(彼女?)の、まさに蟷螂の斧をふるって冬を迎える準備を整えようとする姿に、なにがしか励まされる思いです。

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