この季節、我が陋屋のあたりでは、伊吹山から吹きおろす風が強くなります。伊吹颪(オロシ)という北西方からの強風です。 楓も公孫樹もあっというまに枯れ葉を吹き散らされてしまいますし、畑仕事には寒む風が身に沁みます。 晴れていても、急に雲が低くなり時に霙(みぞれ)混じりのしぐれ雨が通り過ぎます。
こんな季節になると、生前の母はいつも切り干し大根を作っていました。畑で栽培した大根を細切りにして、笊の上に並べて寒風にサラシ干しするのです。 数日するとカラカラに乾いた切り干し大根が出来上がります。
生前の母はいつもこんな風に言っていました。 切り干し大根なんかスーパーで買えば安いものだが、それでも自分で作ったものは、きれいだし甘味が違う。なんと言ったとて、天日干しに優るものはない。 一昨年の秋までは、そう言いながら大根を刻み、干していました。
この秋、私が作った大根は結構良い出来でしたが、冬まぢかになって「ス」が入るようになりました。収穫してみても漬物を漬けるわけでなし、どうしようかと迷っていましたが、ふと母の切り干し大根を思いだし、母の作業をなぞりながら切り干し大根を作ってみました。
一週間ほど干しておいたら、まずまずの出来になりましたから、今日は二度目の作業を行いました。一度目より二度目で、作業には手慣れましたから、最初のものよりはさらに美しく甘くできそうです。 写真の右下は三杯のザルが干し上がってできた一回目の完成品です。
切り干し大根を干した後は、柚子を収穫して柚子ねりを作りました。 これは昨年に続く二度目の作業ですから、柚子の香り豊かに甘酸っぱくほろ苦い柚子ねりが出来上がりました。 しばらくはトーストに塗ったり、柚子湯を楽しんだり出来そうです。
大根を抜いたあとの畑は青色と云ったら葱や玉葱苗以外は冬枯れ状態ですが、これからは菊の株分け植え替えや春の作付けのために耕耘作業などが待っています。 果樹の剪定もありますし、この秋に切り倒した木や切りおろしした枝が山積みになっていますから焼却するなどの処分もしなければなりません。
昨年、母が亡くなったあとの台所に残されていた切り干し大根を捨てるにしのびなく、帆立貝柱と焚き合わせてみましたら結構な味にできあがり、まだ達者だった父とふたりで母の手作りを味わったことを思い出します。 その父もいなくなって一年、この冬に作った切り干し大根は誰と味わおうかと考えている茫猿です。
だいこ(大根)干し しぐれを避ける 冬ひなた (茫猿)
だいこ(大根)干し 母の手しのぶ 暮れまぢか (茫猿)
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