新スキーム改善問題の現況

昨2012.01.17:第288回理事会にて年度内理事会の開催予定は終わり、鑑定協会現行役員の任期は事実上終了したと感じておりました。 とはいうものの、第46回総会第13号議案その他により、現役員(理事)任期は公益社団法人設立登記を行った日から最初に開催する総会の終結時までは残任期間を残しています。
公表されている役員会日程によれば、2012.06.19開催予定の総会(新公益社団法人)までに4月理事会と5月理事会の開催が予定されており、次期新公益法人事業計画並びに予算審議という課題が存在します。 それらのなかでも群を抜いて重要であろうと考えられる事項は「新スキーム改善問題」決着であろうと考えられます。 そこで新法人移行問題と合わせて新スキーム改善問題について考えてみたいのです。


昨年初めに新スキーム改善について問題が提起されて以来、何回もの小委員会(新スキーム改善特別委員会・企画小委員会)開催、並びに本委員会開催、そして数次の常務理事会報告、理事会報告、士協会会長会議報告(諮問)等の他にも全国各地でのブロック説明会などの経緯を経てきました。
しかし、問題点が会員に正しく理解されているというにはまだまだ遠い状況にあると見えます。 新スキームの現状を整理すれば次のように云えると考えます。
1.現行の資料管理状況は個人情報保護法ガイドラインに照らしてみて、十全の安全管理措置を充足しているとは言い難い状態にある。 しかも制度発足以来七年もの期間を無為に過ごしてきた。
2.新スキーム関連資料を一般鑑定に利用する正統性が整理されているとは言い難い状況にある。
3.新スキーム関連資料を鑑定協会会員が利活用するに際して、透明性が確保されているとは言い難い状況にある。
以上の事柄については、『鄙からの発信』において何度も指摘してきたことですから、ここではこれ以上はふれません。 今茫猿が問題であろうと考えるのは、前記三項について危機感を煽るネガティブキャンペーンに偏より過ぎてはいないかということです。
執行部が危機感を表明するのであれば、まず最初にしなければならないことは、七年間も問題を放置してきたこと、あるいは問題の存在に気付かないふりをしてきたことについて、その責任の所在を明らかにしなければならないということです。
問題点の存在について正しく説明されることなく新スキーム調査に協力することのみ要請され続けてきた挙げ句、突如として管理方法を改める、あるいは開示方法を改めると通告されても、多くの会員は戸惑うばかりであろうし、資料開示がもたらすかもしれない業務機会の変化について不安のみ感じるのもやむを得ないことと思われます。
さらに、この問題については2011.06及び2011.11の二回に及ぶ士協会会長会議にて経過報告並びに説明が行われました。 この報告等は事実上、諮問と表現しても宜しかろうと考えます。 二回の会議席上では議論が錯綜し紛糾し、多くの士協会会長からの質問に対して納得し得る執行部答弁が行われたとは言い難い状況でした。 両会議は議論が並行し時間切れに終わったと記憶します。
現時点においては、
1.資料管理に関わる安全管理措置の徹底について、理解は深まったのであろうと認められます。
2.しかし、資料を鑑定評価に利用することの正統性明示(十全の整理)については、何の光明も見出せないどころか、その至難さのみが明らかになったと云えます。
この項に関しては「ディファクトスタンダード (2011年12月14日)」をご覧下さい。
3.長年のあいだ、資料を士協会が管理することにより得てきた地域密着・精通性というアドバンテージを失いかねない会員の不安は増幅こそすれ解消されていない。同時に協会執行部に対する根強い不信感とも云うべき求心性の欠落が見え隠れします。
茫猿は新スキーム改善問題に一定の区切りを付けるとともに、新しいアドバンテージというか新しい地平線を示すことを望みます。この種の将来展望無くして、改善問題についての会員の理解は得られないと考えます。
一、透明性の向上
資料利活用の透明性向上は都市圏会員が地方圏資料の利用に便宜を図ることのみ言われますが、それだけではなくて透明性確保は地方圏士協会の内部においても透明性を図るものであるということを理解したいと思います。ただし、固評利用等に伴う透明性向上は極めて微妙な問題を孕むものであり、協会執行部が指摘することではなくて、士協会の自治に委ねられる問題であろうと考えます。士協会内部に於ける閲覧料徴収問題も同様であろうと考えます。
一、利便性向上
もっと重要なことは緯度経度情報等地理情報の活用により、資料作成における無用の手順をはぶき使い勝手のよい資料作成に資するものであること。
同時に資料の散布状況や価格帯推移を手軽に分析することが可能になり、それは面的な価格均衡分析や時系列的価格動向分析に大いに寄与するものであり、それらを随時行い得る地域在住鑑定士のアドバンテージを増強させるものであることであり、優れて士協会の自律性に委ねられるべきものであろうと考えます。 なお緯度経度情報を活用することから「いわゆる事例二枚目:位置図地形図」情報の取扱が話題となろうが、この問題は優れて士協会マターであり、前項と同様に士協会自治に委ねられるべきものであると考える。
一、存在感の強化向上
その種の日常的評価(分析)結果を地域社会に還元することによって、エリアに於ける鑑定士の存在感を増してゆくことが可能になる。 このことは士協会の自立ならびに発信力向上が不可欠であろうと考えられます。
一、地域密着の優位性
鑑定評価は本質的に地域密着性の高い業務である。 質的にも量的にもより地域性の高い資料並びにデータを保有し更新し発信し続けることは、その結果として地域からの信頼感を高めることにつながると確信できるのである。 その一つの具体例としては、資料の位置図・地形図などというアナログ資料はこの際廃止し、緯度経度情報に一元化すべきである。 同時に資料の背後に潜んでいる地域密着情報の深度を深め精度を高めてゆくことが地域に於ける鑑定士の存在感を高めると確信するのである。
これらについて、2011ビジョンは既に幾つかの施策を提案しているものであるが、それにとらわれることなく士協会が地域性と独自性を発揮してゆくことが期待されるし、そうあらねばならないと考えます。 そういった際に各士協会が何を関連業界団体に提示できるかが問われているのであろうと考えます。
従来からの業務延長線上でものを考えるのではなく、新しい発想が求められているのであり、その具体例がDI調査であり、市民講座であり、利回り調査であろうと考えますし、他にも様々な試みが有り得るのだろうと考えます。
それらの活動が直ちに好影響を業界にもたらすとは考えられませんが、二年三年と継続することにより望外の効果が得られるものと確信します。
一、開示の方向性
資料利活用の透明性向上だけでなく、須く開示してゆくのだという方向性に舵をとれば見えてくるものも多かろうと考えます。 適正な価格形成指標として鑑定評価が存在し、評価結果は開示が所与であるという方向性を見定めることにより、資料利用の正統性も自ずと確立されてくるのであろうと考えるのです。
今は法的制約下にあり守秘対象であるが、取引情報とか取引資料などというものは全面開示が相当であるという方向に鑑定業界が舵をきれば、自ずと状況は変わってくるのであり、そこでは個々の情報の掘り下げ度が問われるし、集合体としての分析能力が問われることとなる。 鑑定士が資料収集屋から脱却して、資料分析者として世間にその真価を問う状況が見えてくると考えるのである。
新スキーム改善問題処理について協会執行部に望みたいのは、年度末任期切れに近い理事会に於ける機関決定を急ぐことなどではなくて、次年度の新公益法人理事会構成メンバーに予定されている全国士協会会長会議を有機的にかつ柔軟に活用することにより、多くの会員の理解と求心力を高めて頂きたいと考えます。
01/17理事会において緒方会長は三月に臨時理事会を開催して新スキーム改善一次案の承認を求めると云った意向を漏らされましたが、見切り発車的な行動は避けてほしいものです。
もう一言、構築を予定する管理閲覧システムについて述べれば、現行のRea Netと構築予定システムとのあいだに大きな差異は存在しません。 Rea Netの拡大充実では図れない何が存在するのか、いまだに明らかにはされていませんが、この既存システムの適否を忌憚無く示すことも、問題解決の橋頭堡になろうと考えるのです。

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