Rea Netの現状と展望

2011年度を総括するにはまだ早いが、年度末が近くなれば鑑定協会の各委員会等においては次年度を見据えた事業総括と事業計画案つくりが開始される。 組織とはそういうものだし、plan-do-check-actというPCDA事業管理サイクルからすれば当然のことでもある。 最近ではcheckに代えてstudy(評価)を用いることも多いと聞く。
そこでRea Netについて、その現状と展望について考えてみようというわけである。 かねてから何度も記事にしているように新スキーム問題の根幹はネットワーク問題に帰結するものであるし、Client Influence Problem問題にしたところでその帰結は情報の開示と共有に収斂されるのである。 だから、鑑定協会に於けるネットワークの有り様について論じることは、それほど的外れのことではないのである。


一、Rea Netの現状について
2011年度のRea Map活用推進事業等を概括する前に、Rea Netの現状について若干ふれておきたいと存じます。Rea Netは事例閲覧(Rea Jirei)、データ・情報交換(Rea Data)、電子会議(Rea Info)並びに地理情報(Rea Map)の四つの機能から構成されています。 さらにRea Netを十全に運用するための機能として、アクセス会員管理機能並びに閲覧料徴収機能が付属しています。
Rea Netは情報安全活用委員会が2008年度より運用を開始していますが、その普及は遅々として進んでいません。その最も大きな理由は、Rea Netの運用主体が士協会に委ねられていることにあります。 Rea Netの運用基本指針には以下のように定められています。
運用の原則(2008年5月20日制定、Rea Net運用指針より)
第4条 REA-NETは、士協会の内部的な会員相互間のオンラインネットワークの構築及び士協会事務局における閲覧事務のコンピュータ化を主眼として運用されるものとし、その運営維持管理については、士協会を一つの単位として士協会が自らの裁量により主体的に行うことを原則とし、本会はこれを支援する。
この運用指針がRea Netの全国普及に際して大きな障害となっていることは否めない事実であります。同時にこの運用指針は士協会単位における自主的かつ自律的運用を求めるものであり、地域の実情に応じた機能的かつ弾力的な運用を意図するものであることも否めません。
なお、運営維持管理を士協会に委託することの実質的意味は維持管理費用を士協会の負担のもとに置くということ以上の意味はありませんが、Rea Jireiに関わる維持管理費と、Rea Data、Rea InfoそしてRea Mapの維持管理費を混同しているところに大きな問題があると云えます。
2011年10月に鑑定協会業務課が主導して構築し運用が開始された「電子掲示板(BBS)」が誕生した経緯も、それらRea Netの運用実態が背景に存在します。
新スキーム改善第一事案において、Rea Jireiの増強改良を目指すことなく、新しい閲覧システムを構築しようと企画されていることの背景にも、この運用実態が反映しているものと思われます。 Rea Netの運用指針を現状のままに士協会の自主管理に委ねておくべきか、鑑定協会全体を統括するネットワークシステムとして再構築すべきかが問われている時機にあると思われます。
二、Rea Mapの現状及びMap Clientについて
地理情報活用検討チーム(NSDI-PT)が構築して、2010年度より東京、大阪など全国14の都府県士協会にて試験施行が実施されたRea Mapは、現在も試行が継続中です。 この試行中のRea Map は以下の仕様です。
a.背景の電子地図は地理院地図及びYahoo Map(変更可能)を使用している。
b.搭載データは地価公示、地価調査、相続税標準地、固定資産税標準宅地、並びに取引事例である。 公示、調査データについては国土数値情報を用いるものであり、その他の評価データ並びに事例データは参加士協会が提供するデータを、当該士協会会員に限定して閲覧に供している。
c. Rea MapはRea Netの機能の一部であり、Rea Jireiともリンクするものである。Rea Mapにて閲覧参照できるエリアは所属士協会所掌エリアに限定されている。
2011年度はRea Mapの機能を向上させるものとして、事例資料等地理情報(緯度経度等)取得システムとしてのMap Clientの構築に着手し、2011.09よりRea Netにおいて全国開示を開始している。 Clientの意味はネット上の地図(Yahooもしくは地理院地図)を背景図として使うが、データはクライアントマシン上におきオフライン作業を行うという意味である。
さらに、以上の工程で取得した事例地地理データや標準地地理データを読み込んで地図に表示するモジュールとしてMap ClientⅡを開発し、2011.10より全国開示したところです。Map ClientⅡでは、標準地のメモ価格を表示して、価格の均衡を検討するほかに、事例地の位置修正も可能である。
Map Clientは開示したものの、一部エリアでの試行並びに限られた会員の利用に止まっており、地理情報(緯度経度情報)活用が全体の流れとはなっていない。それは情報安全活用委のアナウンス不足もあるが、関連機関の理解不足に帰するところが多いといえよう。 今後の鑑定評価にとって必要不可欠と考えられるツールを用意することがNSDI-PTの本旨であり、
三、Rea Net並びにRea Mapの今後の展開
以上の説明でお判りのように、鑑定協会においては会員全員が参加できる(参加している)ネットワークは未だに存在していないのである。 情報処理加工を基幹業務とする不動産鑑定評価業界において、会員全員がアクセス可能な(イントラ)ネットワークが存在していないというのは驚くべきことであるが、協会ではさほどの問題とは意識されていないのがお寒い実情である。
適切なコミュニケーションツール無くして、鑑定協会の求心力を高めようなどと願うのは絵空事と知るべきであろう。 その意味からはReaNet本来の機能充実と発揮が図られ得る体制整備が待たれるのである。

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