新スキーム改善委リポート

記事掲載を先送りにしていました、新スキーム改善特別委員会リポートです。
去る02.10 13:30より、鑑定協会会議室にて 新スキーム改善特別委員会(たぶん今期二回目?)が開催されました。 議題は新スキーム改善第一次案、2011年度事業報告案、2012年度事業計画案並びに予算案 の承認案件です。 他には閲覧システム基本構想並びにシステム設計仕様書の作成経過報告がありました。 上程案件は審議のうえ、字句修正は委員長に一任することとしていずれも承認されました。
今後は二月から三月にかけて、全国各地の地域連絡会等にて事案説明・質疑を行い、四月開催予定の理事会審議を経て六月定例総会(新公益法人設立総会となる予定)における事業計画並びに予算案承認という手続きを迎える予定です。この間に常務理事会審議等を経ながら、間断なく新閲覧システム構築に向けて準備作業が進められてゆくであろうと予想されます。


以下各議案について議事録は未公開ですが、議案等配付資料は各委員が地元に持ち帰っていますし、作成中の一次案は理事会等にて報告されていますから、筆者の手許資料並びにメモに基づいて記事と致します。
なお新スキーム改善特別委員会の構成は、委員長後藤 計氏、担当副会長小川隆文氏、委員として副会長各氏、地域連合会会長各氏、その他委員若干名から構成されます。
「新スキーム改善一次案:骨子」
(目的)
情報の安全管理の徹底と透明性の確保をより一層確かなものとし、不動産取引価格情報提供制度の定着に寄与する。 合わせて地価公示価格の精度向上、鑑定評価の使命の実践、事例資料の適正な利活用を推進する。
(安全管理)
取引情報等閲覧管理システムを新たに開発する。
(閲覧管理規程の改正)
一次改善案の実効性を担保するために閲覧管理規程を改正する。
(透明性の確保)
現行閲覧管理規程26条を実効性あるものとするべく図ってゆく。
以上が一次改善案の骨子(文責は筆者)ですが、当該案に基づいて作成された2012年度事業計画案の概要は次のとおりです。
「2012年度新スキーム改善特別委 事業計画案」
1.全国統一の管理閲覧システムを開発する。開発を終え次第に都市圏域を中心にして、希望する士協会より年度内暫定運用を開始する。 2013年度には全国運用が可能と成るべく準備する。
2.閲覧管理規程等、関連諸規程の改正については、情報安全活用委員会にて検討を開始する。
3.閲覧の透明性確保の観点から、現行閲覧料等の合理性を検証する。
4.鑑定評価の精度向上に向けて、事例資料等の分析・集計等活用ルールを検討する。
5.一次改善案の実効性を高めるために、検討委員会の設置を要請する。
6.新スキーム制度運用費用、システム開発並びに運用費用について、その負担並びに徴収方法を含めて具体的な検討を開始する。
《上程議案に関して呈された主な質疑》
一、全国的にみる事例1件あたりの閲覧料額は相当の開差が生じている。比較的低額である都市圏域においては、閲覧料の引き上げは会員の負担を増すものであり軽々には容認し難い。
逆に比較的高額である地方圏域において閲覧料の引き下げは、士協会財政を揺るがすものであり軽々には容認し難い。 また事例資料入手の利便性を高めることや入手経費の低廉化は、評価報酬の低廉化競争を刺激すると同時に評価内容の劣化を招きかねず、軽々かつ安易な改善策は認めがたいものがある。
一部士協会においては士協会内部会員の閲覧は無料とするところが存在するが、それら士協会においても制度負担金や特別会費などの様々な名目で実質的に閲覧料の負担を求めていることに留意しておく必要がある。
《回答要旨:次年度以降の検討課題であり、慎重審議する。》
二、地域の歴史的事情に十分に配慮した慎重な改善策の推進を求めるものであり、拙速とも考える急進策に傾くことは容認しがたく、全国会員に十全の説明を行い理解を得たうえでの実行を求めたい。
《回答要旨:年度末にかけて全国行脚を行い、十分な説明を行い会員の理解を得るべく努力する。》
【審議における茫猿の発言】
1.本事案に関連して、鑑定協会は三度の間違い(問題の先送り)を経たと考えます。今回の改善策立案並びに遂行に際して、同様の轍を踏まないように願います。
※関連記事「事例管理と鑑定評価」
※関連記事「何処で間違えたか」
《間違いの1》
2003.05.30施行の個人情報の保護に関する法律並びに、2004.12.02国交省告示の個人情報保護法ガイドラインの規定があるなかで、安全管理措置の徹底について遵守義務を果たすに不十分であった。 特にトレーサビリテイの充実を怠ったといえる。
ガイドライン遵守を怠った一義的な責任者は当時の鑑定協会執行部であるが、当時の事例データベース管理者は士協会であったから、士協会執行部及び会員の責任も免れ得ないといえる。
《間違いの2》
2006/04から始まった、いわゆる新スキーム、すなわち不動産取引価格情報提供制度は何を目的としたのかについて、周知を怠たり理解不足を招いた。 不動産の取引価格情報提供制度の目的は「誰でも安心して不動産の取引を行えるように、 数多くの取引価格情報を蓄積し、国民の皆さまへ提供していく、国の制度」であるにもかかわらず、不動産鑑定評価の新しい取引事例収集制度であるがごとく矮小化して理解しようとしたことに、現状につながるそもそもの遠因が存在する。前項と同様に間違えた責任は協会執行部だけでなく会員も等しく負わなければならない。

《間違いの3》
2008.05.20制定の「REA-NET運用指針」において、「REA-NETは士協会の内部的なオンラインネットワークであり、士協会を一つの単位として士協会が自らの裁量により主体的に運用することを原則とし、本会はこれを支援する。」としたことに不十分な現状を招いた遠因が存在する。 REA-NET運用指針を作成したのは協会であるが、活用しなかった士協会にも責任の一端は存在する。
本来は情報交換の安全管理を充足するために、そして会員の利便性を向上させるために構築したRea Netを「士協会支援システム」と矮小化あるいは誤解することにより、問題を先送りした。 同時にRea Netを事例閲覧システムであるかのように矮小化することにより、鑑定協会における安全で便利で双方向性が維持できるコミュニケーション・システム構築という目標を等閑(なおざり)にした。
2.閲覧料を考えるうえで視点を変えてみたら如何であろうか。
透明性に疑義をもたれるような開差を生じている閲覧料について、現行徴収料金額を是正するという観点から検討するだけでなく、閲覧管理規程26条2項に規定する実費主義に立ち帰って検討したら如何であろうか。
※関連記事「事例管理と鑑定評価」
資料収集郵送費等(約三億)、システム構築費の償却額及びシステム運用維持費等(約二億)、並びに資料作成実費補填額(約十億)の合計額約十五億について、資料閲覧の便益を享受する会員が負担するという視点からの検討を試みたら如何であろうかと云うのである。(実費補填額は年間作成件数合計約三十万件を基礎とする概算額)
この提案は悉皆調査の意義というものに着目して作成一件あたりの実費補填額は全国一律であるべきと考えるものであり、閲覧収入は作成件数に応じた傾斜配分を行おうと提案するものである。 同時に2012年度予算においては、システム構築初期費用を十分に確保して万全を期するとともに、この初期費用は受益者負担とすることにより数年をかけて償却し閲覧料から回収すればよいと考えるものである。
3.いわゆる地価公示事例カード等の二次利用は類似の公的な評価と分類されるところの地価調査、相続税土地評価、固定資産税土地評価に限定し、一般鑑定利用はいわゆる三次データに限定したら如何であろうか。
※関連記事「茫猿の現実認識」
意味するところは、鮮度の劣る四次・五次データは閲覧に供されるまでに最短でも三ヶ月以上の時間差があります。 しかし、この鮮度落差は大きな問題ではありません。 最も大事なことは他者が整えたデータを、安易に自らの鑑定評価の基礎とする不都合さです。 事情補正、時点修正、標準化補正、配分法などのとても大事な属性データについて他者の施したバイアスを、的確に吟味補修正することなく採用する不都合さを糺さなければならないと考えることにあります。 賞味期限切れの古いデータを使い廻しする不自然さを根絶しようということです。
(いわゆる公的評価においては集団協働作業であることから必然的に資料作成も共同作業であり、指摘する弱点は分科会討議において是正されている。)
4.原始データの入手に努めよう。
回収率から逆算して、ブラックボックス化した取引事例が三分の二近くも存在するというのは如何にも不自然且つ不合理である。 不動産鑑定評価の社会的使命という大義に照らして取引情報原始データの入手に尽力すべきである。情報開示請求という方法その他様々な方法を駆使して原始データの公開を求めてゆくべきであろう。 最終的には鑑定協会の公益的使命かつ業務として不動産取引価格悉皆調査(センサス)の実現を図りたいものである。
※関連記事「茫猿の現実認識」
5.士協会窓口閲覧の問題点
士協会外部会員等については、オンライン閲覧を制約し士協会設置の端末閲覧に限定することを容認するという改善策は、関連法規が規制する差別的行為禁止に抵触する畏れがある。 さらに閲覧ダウンロードしたデータをCDやUSBメモリーで移動させることは事故発生の危険性を増しかねないものであり、ガイドラインを遵守するとは云い難いものがある。 この件に関しては再度検討を願いたい。

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