RE-ABC §2(ユニーク!!びわ湖会議)

RE-ABCとは、公益社団法人滋賀県不動産鑑定士協会が、このほど主催されたびわ湖会議の英字略称のことである。 「Real Estate Appraiser Biwako Conference」の略称なのである。 記事subjectをRE-ABC §2とするのは、先号記事「びわ湖会議・点描」をRE-ABC §1とするからである。

RE-ABCは、その運営方法からしてとてもユニークな会議であった。先ず、昨今の鑑定業界に多い一般的な研修会とは明確に一線を画す会議である。 CRE戦略(Corporate Real Estate:企業不動産の管理運用に関する戦略)とか、PRE戦略(Public Real Estate:公的不動産戦略)とか、相続税対策、証券化不動産実務などの実務研修でもなく、不動産鑑定士倫理研修会でもない。 当然のことながら、研修単位も付与されない(されていなかったと記憶する)。
【追記】研修単位の件は誤認でした。 滋賀会事務局より「ファンダメンタルズ研修として8単位の認定有り」とのご指摘を頂きました。

『鄙からの発信』は、しばらくの間、びわ湖会議で取り上げられた幾つかのテーマについて、順を追って記事にしてゆこうと考えている。 記事を書く姿勢はネガティブリストの列挙にしないということ、賛意は示すものの批評者・傍観者に止まることはしないと考えている。

さて、冒頭に記した「ユニークな運営」についてであるが、会議参加者を募集した際の募集方法からしてユニークなのである。 会議傍聴者を募集したのではなく参加者を募集したのであり、参加希望者は申込に際して、ワード文書による意見の書き込みが求められたのである。(2012.06.20 〆切)
ちなみに、筆者・茫猿の参加申込書は、これ(120525moushikomi)である。 茫猿の意見書き込みなどは短くて可愛い方であり、長文の意見を呈示された方も少なくない。

次いで、六種類のテーマを設ける分科会が設置され、それら分科会への参加希望の問い合わせがあった。(06.21発信、06.25〆切)
六つのテーマ毎分科会一覧などは、こちら(120620kiboh)である。

つまり、会議参加希望届を送り、参加費を納付すれば事足りるのではなく、積極的に意見を表明し、参加希望分科会を届けることが求められたのである。 さらに、これで手続きが終わったのではない。 続いて、全参加者の意見表明が匿名ながら、全文抜き書き(C&P:PDF)一覧送付されてきたのである。 匿名とはいえ所属士協会は付記されているから、誰の意見なのか推量することは結構可能なのである。 何よりもA4全18頁の意見を読み込むだけでも(鄙里の茫猿ならいざしらず)、お忙しかろう各氏には結構大変な作業であったろうと思われる。 しかし、この意見総覧を読むことは参加者の関心が何処にあるかを知る上で、貴重な資料であった。 (注)この資料の版権は、明らかに滋賀県士協会に帰属すると考えるから、開示はしない。

ここまででも、ユニークかつ参加者に積極的な参加活動を求める《とても注文の多い》会議なのであるが、実はこれに止まらないのである。
各分科会のファシリテーター(facilitatorとは、会議やミーティングなどにおいて、議論に対して中立な立場を保ちながら話し合いに介入し、議論をスムーズに調整しながら合意形成や相互理解に向けて深い議論がなされるよう調整する役割を負う者) を務められる方から、所属分科会テーマについてアンケートがメール添付で送られて来たのである。 アンケートについては数日以内の回答期限が設けられていたと記憶する。(2012.07.09受信)

各分科会によって、ファシリテーターの運営手法は一様でなかろうから、茫猿の経験が総てではなかろうが、事務局やオーガナイザーそしてファシリテーター間のe.Mailによる連絡は密だったと仄聞するから、各分科会とも類似する事前の意見交換が行われていたようである。 茫猿に送られてきたe.Mail添付のアンケート用紙は、分科会構成者全員にe.Mail添付一斉返信するように指示されていた。 だから、分科会構成メンバーは07.20以前に、所属を希望した分科会構成者全員の意見概要を承知した上で、会議に臨んだのである。

さらに、更にである。 オーガナイザーや一部ファシリテーターから、結構長文の論述も送信されてくるのである。 一つはA4版21頁、いま一つは同じく11頁の論考であった。 七月十日から十九日にかけて、これら資料や論述を読み込むだけで、会議以前に疲れ果てたと云うのは言い過ぎにしても、十日間のバーチャル会議(オンライン会議)を行ったに等しいのである。

2012.07.20の会議は、業界で慣らされてきた会議と理解すれば誤るのであり、十日間も続いたオンライン会議の打ち上げ的オフ会なのである。
(注)ここでオフ会とは、オンラインで会議や意見交換する仲間たちが、オフラインすなわちリアルに顔を合わせて、意見交換する場の意味を持たせている。 一般的にはFB仲間やWeb仲間が顔を付き合わせる飲み会程度の意味で使われる。

オーガナイザーを務められた清水教授、並びに事務局長を務められた村木康弘氏のご尽力に敬意と謝意を表します。 何よりも事務局長の熱意に、同じく熱意と友情の「知と汗」で応えられたファシリテーター各氏のご尽力に、深甚の敬意と謝意を表します。 ファシリテーター各氏はオンライン会議資料などを基にして、パワーポイントなどの事前準備を済ませ、分科会終了後の全体会議(先進的取組例の発表)が行われている僅かな時間(休憩を含めても90分)に、分科会討議をまとめ、PP化された上で、分科会報告をされた方も少なくないのです。

今振り返ってみれば、六テーマ毎、全12の分科会 ファシリテーター各氏は、実に得難い経験をされたことと思います。 もちろん156名の参加者の多くも、オンライン・オフラインの会議運営、会議参加について素晴らしい体験を共有したのだと思います。 RE-ABCの成果について幾つかを挙げることができましょうが、実は、このWebとリアルを融合した会議体験の共有こそが最大の成果だったのではなかろうかと考えています。 Face Book「RE-ABC」も視野に入れて良かろうと思われる。

当然のことですが、呈示され討議した各テーマについて深化及び進化させること、即ちRE-ABCの持続的発展が期待されるわけですが、その有力なツールとしてRE-ABCの会議運営方法は大きな力となるでしょう。 Knowledge Management 的に云えば、オンライン会議に参加する構成員が示す姿勢の深度と斜度が、会議の成果を大きく左右するのでしょう。 だから、事前配布資料をロクに読み込まなかった方や、参加登録時の意見表明や分科会アンケートについて斜に構えていた方は、今頃は臍(ホゾ)を噛んでいるのかもしれません。 でも、それとても得難い体験なのであり、それら全ての体験が今後の業界に好ましい影響を与えてゆけば、誰かが述懐していた「びわ湖会議以前と以後」という用語が定着するのも、意外に早いのかもしれません。

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