Data,Information,Intelligence

不動産鑑定業は情報処理加工業であると茫猿は考えている。 そこで、Data,Information,Intelligenceについて、特に日鑑連執行部のあり方という視点で考えてみたいのである。

「Data」とは、基礎的な事実や資料を意味する用語である。 情報処理や考察によって付加価値を与えることを目的として収集され、一般的に複数個の事象や数値の集合である。例えば、降雨量データ気圧データなどである。 鑑定評価的に云えば、加工されていない、或いは収集者によるバイアスが掛かっていない事例資料と云える。
「Information」とは、一般的に、事象、事物、経緯などについて知りえたことを云う。例えば天気図を指すと云えばよかろうか。 鑑定評価的に云えば、ある種の目的に沿って加工し、比較や趨勢を把握できる資料と云えよう。
「Intelligence」とは、集積した情報を解析する知能を云う。先の気象情報の延長線で云えば、「明日は雨だから、弁当の仕込み数量を控えよう。」という判断とでも云えようか。  鑑定評価的に云えば、前項のInformation資料をもとにして行う、鑑定士の判断や依頼者への方向性示唆を指すと云えよう。

前置きはともかくとして、日鑑連執行部の最近の動きを見ていると、「Data:収集能力、Information:加工分析能力、そしてIntelligence:判断能力」に、疑問を持たざるを得ないのである。 既に2013.04からの既定路線となっている「取引価格情報調査(不動産業課)、不動産価格指数(不動産投資市場整備課)」という組織変更或いは所管替について、日鑑連執行部がどのように考え、対処しようとしているのかが、さっぱり見えてこないのである。

国交省土建局が何を考えているのかと云えば、「平成25年度土建局予算概算要求」によれば、
※地価公示については、行政事業レビューの結果を踏まえ、地点数及び予算を10%強削減するとともに、外部有識者による委員会を設置し、制度のあり方まで含めた抜本的検討を行うというのである。
※取引価格情報等の整備・一元的提供については、全国を対象に取引価格等の調査を行い、不動産取引の際に必要となる取引価格情報等を整備して、一元的提供を行うというのである。  《概算要求書8頁、9頁

同時期に公表された「不動産情報整備のあり方研究会:中間とりまとめ」によれば、
※情報ストックの一元的整備の方策については、新たに総ての情報を一元的に集約する仕組みにこだわらず、既存のデータソースとの連繋による中核機能(ハブ)として、情報保有について権限と責任を有する各情報保有機関との連繋により情報整備を行うことも選択肢に入れた検討が考えられるというのである。
情報整備のあり方研究会:中間報告7頁

以上、ここまでがData、もしくはInformationである。 ここからは日鑑連執行部のIntelligence能力が問われるのである。 執行部が以上の情報を分析していないというのであれば、お話しにならないが、それはないであろう。 この二つの情報から何を読みとるのか、如何なる対応策を講じるのかが問われているのである。

既に「地価公示のあり方検討会」は発足し、検討課題及び今後の進め方についても公表されている。 日鑑連がこの二年の間、対応に苦慮している新スキーム改善問題についても、一次改善案は国交省から否定され、土建局の組織改編までに残された期間は数ヶ月となっている。

また取引価格情報整備についても、「不動産流通市場の活性化のためにレインズ機能のあり方」についての検討が開始されているようである。 例えば成約価格情報などについても、①適正な相場観の形成に資する不動産取引情報提供サイト(RMI)のような市場参加者に広く提供される仕組みの充実、②売り主と買い主間のマッチングに際しての透明で高い納得感をもたらすルールの形成を通じてその一層の活用が図られることが期待されると述べている。 《情報整備のあり方研究会:中間報告5頁

最近数年間に起きている幾つかの事象、依頼者プレッシャー問題、かんぽの宿事件、現物出資不適切評価事件、新スキーム改善問題の2年ちかくの混迷、地価公示評価員相対評価問題、等々は単独の事象として取り上げて解決や改善に当たろうとしても、適切な解に至ることは困難であろうと考える。 それらの底流に存在するのは、半世紀を経て制度疲労が認められる不動産鑑定評価と地価公示に、どのように対処し抜本的かつ戦略的改善策を立案できるかであろうと考える。

地価公示二者鑑定の単独鑑定化や地価公示地点数の大幅削減という事態が、直ちに現実のものになるとは思えないが、想定外事項と等閑にしておいてもよいとも思えない。 想定されるリスクに日鑑連としては、どのように対処するのかが問われていると考える。

何よりも、地価公示の(土地取引の指標としての)現代的意義について日鑑連は如何に考えるのか、公的土地評価等における地価公示の意義・役割について日鑑連は如何に考えるのか、地価公示の評価主体である鑑定士の組織体として、社会に鮮明にする義務があると考える。
同時に取引価格情報の調査並びにその利活用に深く関わっている日鑑連であればこそ、 取引価格情報を不動産市場において如何にして有効に活用すべきかについて、組織としてその立脚する位置を社会に鮮明にする義務があろうと考える。 当事者にとっては重要な問題であっても社会全体(不動産市場)にとっては枝葉末節的問題に、いつまでも時間を費やして良いとは思えないのである。
※関連記事:鑑定協会と情報管理(収集と分析)

さて、我が鄙里では秋が深まり快い季節を迎えている。

秋を彩る花も見頃である。 左が小菊、右が南天。
   

左が地味だが枇杷の花、右がつわぶき。

 

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