不動産市場とマスデータ

マスデータとかビッグデータと云うものが、近頃はiNetをはじめ様々な報道などで取り沙汰されています。 マスデータ《mass data》とは一般的なメモリー《記録保存装置》では保存できないほどの大量のデータのことを云います。 このマスデータと地理情報《地理座標値》を活用した一つの解析結果《動画》を最近になって知りました。

詳しくは紹介するサイトをご覧いただきたいのですが、出会ったマスデータ解析情報とは「3.11大震災」に関連するもので、「人の流れプロジェクト」がYouTubeで公開している動画です。 この動画は、当日の携帯電話GPS情報によって、3.11 14:00から18:00にかけて、人々が移動してゆく様子を地図上に表したものです。 2011年3月11日14時46分18.1秒に大地震が発生し、その十数分後以降に三陸地方をはじめとする東北沿岸一帯に大規模な津波が到達したのであるが、その前後にGPS情報端末がどのように移動していったかを示している。 GPSに連結していない端末については中継局間移動情報を基礎とする解析を行ったと伺っている。

「混雑統計データ(R)」による東日本大震災当日の人々の流動状況《首都圏域》」では、朝のラッシュ時をピークとして地震発生直前まで活発に動いていた人々の移動状況が、地震発生と同時にピタッと静止し、その後夕刻以降は徐々に緩やかに都心から郊外へと移動を開始してゆく様子が画面から読みとれるのである。 当日、都心部を中心に帰宅困難者が多数発生し、夕刻から深夜に欠けて、その人々が徒歩を主な移動手段として動いてゆく様子が読みとれるのである。

さらに「復興支援調査アーカイブ」データによる東日本大震災直後の各地域の避難状況では、南三陸町と陸前高田市における人々の移動状況が画面から読みとれるのである。 津波が到達したと推定される時刻からは沿岸部に表示されていた「画面上の点」が消えてゆきます。 沿岸部が空白になってゆく様子が何を物語っているかは言うまでもないことです。

首都圏域と陸前高田市のマスデータが示す「人の流れ」は、様々な背景を物語ってくれますが、同時に益々進化してゆく携帯電話《GPS情報や検索経緯情報その他》は、我々の履歴をマスデータとして明らかにしてゆきます。 さらに当然のことながら、マスデータとして処理解析されるだけでなく、個人情報としても蓄積され、必要に応じて解析されたり利用されてゆきます。 検索ソフトの究極の有り様は、携帯画面を開くと同時に彼が《彼女が》今、何処で、何を求めているかを推理察知した上で、複数の選択肢を表示することだそうです。 その為には過去の彼のアクセス情報を蓄積し解析してゆくという経緯を辿ることとなり、その行動パターンの解析行為そのものが今や現実のものとなりつつあることを「人の流れプロジェクト」は暗示していると思えます。

人の流れプロジェクトは東京大学空間情報科学研究セン­ターと(株)ゼンリンデータコムの共同研究によるものであるが、それらとレインズスーモがリンクすることによって、マンション市場や中古住宅市場のあり方も大きく様変わりするであろうし、ひいては不動産取引市場だけでなく不動産鑑定評価市場にも大きな影響を与えることであろうと考えられます。 既にマンション市場で専任媒介契約を結べばレインズ掲載が必須条件であり、かつては主流であった一般媒介契約は選択者が少なくなっていると聞きました。

つまり不動産市場がデジタル化・iNet化してゆくことにより、レインズが大きく力を持つようになったということであり、レインズに搭載するのであれば一般媒介契約にこだわる必要が無くなってきたということでもある。 さらには地理情報やマスデータを活用することにより、不動産情報はiNetに掲載されるのが当たり前となり、供給者も需要者もiNet情報を有力な媒介手段として市場に参加するようになるわけです。 そこでは不動産の履歴情報や周囲の状況や価格水準もリアルデータとして示されるようになっているのであり、価格査定書もe.Mail添付ファイルで提供されるのが通例となっているわけであり、売出物件情報に十数項目以上の距離条件等の属性条件が示されるのも、十数枚の物件写真が掲載されるのも一般的となりつつある。

そのはしりが、首都圏並びに大都市圏のマンション市場においては既に現実のものとなり、近々には中古住宅市場にも波及するであろうと予想されるのである。 詳細で精緻なデジタル価格査定書が出回る時代には、取引市場に於ける不動産鑑定評価の存在感は小さくなってゆくという時代が到来しているといえるのである。 そして、そのような価格査定情報は日々蓄積を続けているのであり、その蓄積がある閾値に到達した時に、不動産市場全般に於ける不動産鑑定評価の存在意義はどのようなものとなっているのであろうかと考えさせられる。 リアルタイムに情報が開示され蓄積されてゆくマンション市場では、アンケート調査に依存する取引価格情報提供制度の存在感する希薄になっていると言えるのであり、それが不動産市場全般に波及する時代はそんなに遠くないとも言えよう。

 

 

 

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