会者定離

猛暑の8月、厳しい残暑と干天続きの9月から10月上旬が過ぎたら、台風と秋雨前線の活動が活発な昨今の気候である。 連続して襲来する秋台風で、伊豆大島では土砂崩れによる人命被災が起きている。今も洋上にある台風による二次災害が懸念されている。

10/20 10/21と、昭和33年(1958年)輪之内中学卒業生の同窓会を開いた。 我々が古稀を迎えたことを記念して、伊勢神宮式年遷宮参拝・一泊同窓会で開催するものである。 同じく傘寿を迎えた恩師を加えて、参加者は丁度三十名だった。 幹事としては盛会に安堵する。

第一日は遠路沖永良部島や埼玉・東京からの参加者を岐阜羽島駅に迎え、高速道路を伊勢に向かう。 外宮参拝は足元が濡れしきる雨のなかだったが、遷宮間もない新社殿の檜の香りが神宮の杜に満ちているのがとても心地良かった。 同窓会はたいそう盛り上がった、カラオケを歌う者や踊る者も現れ、赤字を出すのを心配するほどにビールや銚子が追加された。

翌朝、同室者のイビキで早く目が覚めた私は宿を出て、鳥羽駅の東西通路を越えて鳥羽佐田港に出る。 前夜の雨も上がりまるい月がまだ快晴の西空に残るなか、海際の小公園で朝の散歩やランニングで行き交う人々と挨拶を交わしながら日の出を待つ。 静かな海を黄金色に染めて坂手島越しに昇ってくる朝日を待つのである。

朝食後に二見浦夫婦岩を小学校の修学旅行以来58年ぶりに眺めてから、内宮に参拝する。 58年ぶりの夫婦岩は波風に浸食されて、小学生の頃修学旅行で見た時は見上げるほどの大きさだったのが、今は海岸も整備され店舗も建ち並ぶ二見浜にこぢんまりと立っていた。 58年間の波風が岩も浸食したみたいである。 《何も無かった浜辺から小学生が見上げた夫婦岩を、整備された海岸遊歩道からオトナの目線で眺めれば、小さくも見えることであろう。》

内宮も御祓い町も結構な人出であったが、月曜日ということもあり、大混雑というほどでもなかった。 熊野サンマ寿司サバ鮨と生姜糖を家人への土産に買い求め帰路につく。 昼食は自由行動としたが、伊勢うどんや松坂牛丼などで思い思いに買い物をしながら楽しんだようだ。 私は焼き秋刀魚鮨を買い求めて宇治川河畔で神宮の山並みを眺めながら昼食とする。

旅行は、傘寿の恩師もご機嫌で過ごされ、集まった同窓生の皆も旧交を温めて和やかにまた賑やかに過ごしてくれてとても盛り上がった。 遷宮の歳に古稀祝い傘寿祝いを兼ねた同窓会を開けたことをとても嬉しく思うのである。 それにしても新卒で溌剌としていた恩師が、今は同窓生と変わらない風貌になっているのを、何やら訝しく思える。 60年近く前には23歳と13歳の倍近い年齢差が明らかだったものが、今や80歳と70歳となり年齢差は無きに等しくなっているのである。

2013.10.23 雨模様のなかを、危篤状態になり個室に移った高校の同期M.Hの見舞いに行ってきた。 しばらく前に見舞った時よりもとても痩せて、ずいぶんと小さくなっていた。 痛み止めのせいもあり、意識は薄弱と云うよりも、もう昏睡状態だった。 今朝ほどはいっとき危ぶまれたが、その後持ち直したとのこと、今日明日が山場のようである。

「よう頑張った。長いこと有り難う。」と声をかけ、しばらく枕元で、某社の長野支局長だった同じく同期のYを訪ね、二人で北信濃を旅したことなどを奥さんと娘さんに話す。 昼食時に酒が飲めるからと列車で行ったこと、小布施の北斎館や蕎麦屋や足湯を廻ったことなどを話す。 「また、顔を見に来るからな。」と言って辞してきたものの、生前にはもう会えないかもしれないが、別れはもうできたと思っている。

台風が近づいているなかを沖永良部島からやってきた中学同期生、危篤状態の高校同期生、脳梗塞で倒れ重い言語障害が残る大学同期生、様々である。 様々に今を生きている同年代の仲間たちに会い、そして別れてゆくこの秋である。 ふた親を看取って以来、様々な人たちを送ることばかりで、おくることに慣れるつつある自分を感じている。 見送ることに慣れ、時代を共有した仲間がひとりふたりと去ってゆく寂しさを、肌寒い秋雨のなかに感じている。 会いまみえた者に別れが定めとはいえ、それに慣れてゆく自分に老いるということの実相を思い知らされている。

10.18に名古屋市で日中韓鑑定会議が開催された。 関東から参加した方を岐阜に迎え一夜をともにし、昨今の業界のあれこれを語りあったが、現役を引退して四年になる茫猿にはもうとても遠い話のように聞こえてならなかった。 翌日の会議に参加登録はしてあったものの、隠居の身がいまさらと思え、前夜祭も会議も参加しなかった。 去る者は日々に疎し(うとし)なのである。

内宮では、備中神代神楽が奉納されていた。131021isejinguu

2013.10.24 先ほどM.Hの訃報が届きました。 これから通夜に伺います。

 

 

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