数は少ないが、とても大事なことを、とても簡潔に明解に言う人がいる。
内田樹氏もそのひとりである。「内田樹の研究室」に今年最後かもしれない記事が掲載された。
「食糧安保とグローバルビジネス」と題する記事である。
氏は、経済を語るための語彙を経済以外の事象、例えば政治や教育や医療のありかたについて用いるのは、用語の「過剰適用」であると言う。 詳しくは記事を読んでいただきたいが、氏は「食糧は供給量があるラインより上にあるときは商品としてふるまうが、ある供給量を切ったときから商品ではなくなる。そういう特殊なありようを秘めている資財である。」という。 食糧、医療、教育そして公共公益サービスなどについて、経済効率性の概念を過剰に持ち込むことの愚かさを内田樹氏は明解に解説している。 繰り返すが、食糧や医療や教育や公共サービスに経済性概念を持ち込むなと言うのではない。 過剰に持ち込んでは為らないというのである。
蛇足的に付け加えれば、内田氏のような言論人がマスコミ《メジャーあるいはジャーナリズム》から遠ざけられている現状こそが、悲劇のプロローグなのであろうと思える。
もう一つ蛇足を加えれば、留意しなければいけない経済的効率性を過小に見積もっているというか不都合な部分には目を閉じているのが、原発であり公共土木事業である。 原発については廃棄物処理や事故リスクを過小評価しているだけでなく、ウラン燃料採掘に伴う環境汚染問題なども見過ごしているのである。 公共土木事業については、小さく産んで大きく育てる論理が横行することにより、一度始まった事業は取り巻く状況の変化に応じた見直しが為されることもなく中止されることもないのである。
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