先日、名古屋市にて中部連絡協議会主宰の清水千弘氏講演会が開催されましたのは既報のとおりです。生憎と父の葬儀日程と重なり茫猿の受講はかないませんでしたが、出席された方々より幾つかのコメントを戴いておりますので、お伝えしたいと思います。
講演会は申込者130名、当日出席者101名、比較的若手の会員が多かったと聞いております。地価公示や新スキーム調査の今後について、関心が高いのも若手会員でしょうから、当然といえば当然のことでしょう。
先ずは清水氏の講演について。
《T.K氏より》
不動産には(1)comparable(事例)と、(2)market price(市場価格)、(3)worth(本源的な価値)の3者があり、偶発的な取引事例(10-15%程度)を基礎とし、さらに回収率の低さや個別的事情を考慮すると、(1)だけで(2)を論じえないし、ましてや課税の安定性等考慮すると、(3)が必要になってくる。 だから三者の特性並びに差異をよく見極めなければいけない。
国際化に関しては、世界的にIVSのmarket valueが主流となりつつあり、IFRSがこの概念を採用しいることからこの傾向は加速してゆくであろう。 今後ますます、課税の安定性を指向する地方と、国際会計基準の導入を背景にmarket valueが強調されていくトレンドとのギャップが広がってゆくだろうというのが正直な感想です。
《K.A氏より》
地価公示に対する批判に、鑑定士はきちんと反論すべきである。
また学者のテクニカルな統計分析結果(サイエンス)も、アートな(鑑定士の)評価も、信頼度はともに70%程度で大きな違いはない。 個別性の強い不動産の評価については、鑑定評価モデルによる指数の作製の方が適している。
次いで、地価公示室長の挨拶について
《A.T氏より》
H24年公示委嘱要領の見直し作業を進めている。 今後の地価公示は評価書の開示が前提となるから、自己責任に耐えうる不動産鑑定士のみの少数精鋭の過酷な制度になるような予感がします。
《K.A氏より》
社会的要請に応えるために大規模地の公示地点を増やした。2年後に評価書の開示を目指している。そのために委嘱の基準等を見直し、手引きの内容も変える予定である。
《T.K氏より》
平成25年の地価公示は評価書の開示を行い、ユーザー・サービスの向上と質の向上の両方に配慮する。 また、評価書の質の向上を通して、地域の各種ビジネスにおいて鑑定士がキーパーソンとなっていくことを期待している。
平成24年地価公示の委嘱要領を大きく見直すことにより、評価書の質的向上だけでなく、分科会活動、事例収集への貢献も評価員評価の要素としていく。
地価公示手引きについても、バージョンアップして、国民への周知に応えたい。
《T.M氏より》
地価公示は国土交通省主導で変わろうとしており、これは少なからず良い方向に進むと感じました。
新スキ-ムには大きな変化が予想され、協会の取引事例の閲覧に大きな影響(事例閲覧に関する受益者負担の問題)が考えられるでしょう。ことの本質をみんなで議論することが必要な時期に来ていますが、地方士協会と東京会の温度差が大きすぎて進まない状況にあると感じます。
小川地価調査委員長挨拶について
《A.T氏より》
小川氏の努力は多とするが、協会の問題点の一つである中央対地方の違いが大きく、それを同じ俎上で処理しようという中央集権的システムそのものの、制度設計に無理があるようです。国土交通省を後ろ盾に協会を動かすのも金属疲労度が高くて疲労困憊の様子。
《M.N氏より》
地価公示と鑑定評価は車の両輪である。 地価公示を通じて有益なデータを収集し鑑定評価に役立てると同時に社会にも還元してゆくべきである。そのために鑑定協会は地価公示と新スキーム制度を改善しつつ維持してゆきたい。
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