清水氏講演感想緑(2010年12月10日)と題して、12/04に名古屋市で開催された講演会の受講感想緑を掲載しましたところ、清水准教授から長文のフォローコメントを頂戴致しました。 コメント欄掲載では見落とす読者もいるかもしれませんので、清水准教授への感謝の意を表して改めて記事と致します。 コメントについて、我が意を得たりと言えば清水准教授に失礼かとは思いますが、茫猿の年来の提唱にもそうものであり、読者各位が触発されることを期待します。
《清水氏講演感想緑へ投稿されました、清水准教授のフォローコメント再掲です。》
ご無沙汰いたしております。
夏に皆様にお会いして,いろいろとご示唆をいただき考えましたことを「不動産鑑定」に書くとともに,名古屋で話をさせていただきました。鑑定業界の新しいビジョン作りのきっかけになればと思っています。
統計分析は,いろいろな意味で様々な情報を提供してくれます。しかし,ベテランの鑑定士さんもいれば新米の鑑定士さんがいるように,能力の高い鑑定士さんがいればそれほど力のない鑑定士さんがいるように,統計屋さんにも,様々な経験の方や能力の方がいます。鑑定士がクライアントプレッシャーを受けていてけしからんといわれていますが(私がこの言葉を2002年の論文と2007年の役所の会議で最初に使ってしまいました),統計屋さんも,自分の都合のいいようにデータを加工したり,選択したりしている人も少なくないのです。明らかに結果を書き換えているような論文も目にします。
そのような中で,学者も倫理憲章ができてきました。それを作らなくていけないくらい,学者の倫理が問われているのです。海外の名の通ったJournalに掲載されている論文は,それを見抜く力がある方がチェックをしていますので,信じていいですが,日本の学術誌の査読能力は,ほとんど機能していないといわれています(私が言っているのではなく,東大や一橋の著名な先生の言葉です)。
鑑定評価書のレビューという議論もありましたが,学者の論文も常にレビューされ,しかし,そのレビューの能力が問題になっているということです。学者や統計屋さんが言うことを鵜呑みにするのではなく,専門家として自信を持っていただき,新しい産業へと発展していくことを願っています。GDPのような新規のフローが低下していくなかで,日本はストックから生み出されるフローを大切にしないといけなくなります。
そのストックの中心である不動産に関わる資格の中で,最も高いハードルを課され,そして,地域に精通されている鑑定士の社会的役割は,まだまだ大きいはずです。東京も,15年後には今の地方都市が抱える問題と同じ問題に直面します。東京対地方の対立などしている場合ではないはずです。残されている時間は限られています。
(コメント投稿者: 清水千弘)
《以下、過去記事の再掲》
名古屋講演会レジュメは、清水准教授がiNET公開されていますので、こちらからお読み下さい。
「不動産鑑定評価・地価公示の社会的意義」
「不動産市場分析のための統計学入門」
※不動産鑑定12月号掲載の清水准教授の論文「不動産鑑定評価・地価公示の社会的意義-不動産鑑定士の社会的使命は終わったのか? 」も公開されています。 清水氏はこの論考を以下の字句で結ばれています。
『世界経済の大きなうねりの中で,日本が再生するために残されている時間は少なく,鑑定業界にいたっては,もっと残されている時間がないといったことを知っていただきたい。 ここからのビジョン作成と戦略一つで,将来の業界の社会的な位置づけが大きく変化してしまうのである。表題の問いに答えると,従来型の不動産鑑定評価の使命は終わりつつあると言っても過言ではないであろう。しかし,事業の再設計を行うことができれば,成長産業へと転換ができるはずである。新しい社会的使命は,より大きくなっているのである。 本稿の議論が,新しいビジョン作成の一助になれば幸いである。新しい時代の担い手となるべく,今後の不動産鑑定業界のたゆまぬ努力に期待したい。』
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