サイトアイコン 鄙からの発信・残日録

Data管理の茶番劇

鑑定協会はData管理に関して2011.11.30付けで、概略以下の要旨を記載する誓約書を少なからぬ会員から徴収したとのことである。 どうでもよいと云えばどうでもよいことではあるが、見逃すにはあまりにも重要な齟齬を認めるから、茫猿はあえて記事にする。

 「事例資料の取り扱いにつきましては、守秘義務及び個人情報保護法、その他鑑定評価業務の実施における遵守事項に則って慎重かつ厳重に資料の管理を行っていくとともに適正に取り扱い、提供された当該事例資料は※※の鑑定評価以外に使用しないことを誓約いたします。」


何が茶番なのかと云えば、『守秘義務及び個人情報保護法、その他鑑定評価業務の実施における遵守事項に則って慎重かつ厳重に資料の管理を行って・・云々』なる文言が茶番なのである。
もう少し説明しましょうか、個人情報保護法を謳う以上、当然のこととして個人情報保護法ガイドラインが前提でなければならない。 即ち、十全の安全管理措置が実施されていなければならず、それはトレーサビリテイ(追跡蓋然性)を充足するか否かに尽きるのである。 しかし、仄聞する限りにおいて、トレーサビリテイを充足している管理が行われているとはとても認められないのである。
可能な限り具体的に云えば、トレーサビリテイ可能なつまり十全のLog管理を行っているであろうデータ提供は(多分?)稀なのであるというよりも、鑑定協会としてそのような安全管理環境を整備し得ていない状況下で、オンラインであれオフラインであれDataの一括提供が前提の誓約書徴収なのである。
茫猿は安全管理について大いに配慮することを否としているのではない。十全の注意を払うべきなのは自明である。 しかし「個人情報保護法、・・・遵守事項に則って」と謳う以上は、同法に対応する相応の措置が施されているべきこともまた自明なのである。
つまりData提供者と受領者が相対(あいたい)の関係になく、その過程並びに関係が頗る曖昧なのである。 遵守履行できそうもない事項を記述し、実質的に意味を持たない誓約書徴収などは百害あって一利も一理も認められないのであり(鑑定協会お得意の倫理に期待するというのであれば、それまでのこと。)、コンプライアンスの名に悖るのである。 さらに云えば、このような実態のない事大主義や形式主義の蔓延が斯界を損なっていると云えるのである。 鑑定協会執行部は鑑定士に自署押印文書を求めることの重みを理解できていないと云っても差し支えないであろう。 責任逃れにも等しい形式主義には違和感を感じる以前に、何も判っていないのではと云わざるを得ないのである。
このような僅かな字句を論うに(あげつらうに)等しい記事でかつ、内部告発とも受け取られかねない記事は、多くの読者が忌避するところであろうと思います。 でも専門職業家であればこそ字句文言は大切にしたいと考えます。 同時に木に竹を継ぐような誓約書が対象としている行為は未だ進行中のことであろうと思いますから、実態に応じた適切な改訂を図るに遅きは無かろうと考えるのです。 頓挫したかにもみえる新スキーム改善問題の本質は、安全管理措置を十全に担保することにあるのだということを、執行部はお忘れになったようです。
満開の菊はよいものですが、枯れ始めた残菊もおつなものです。
菊葉が紅葉し、香りも心なしか濃くなったように思われます。
菊刈れば  残の香漂う  冬陽(ふゆび)かな (茫猿)

関連の記事

モバイルバージョンを終了