「瀬戸内国際芸術祭2010」については、かねてから記事にしていますが、つい先日(2010/01/28)の朝日新聞朝刊に島出身元香川県議である石井氏の「瀬戸内の芸術祭:島の個性と響きあう展開に」と題する意見記事が掲載された。
石井氏の主張は【このPDFをお読み頂きたいが】、突然に島を訪れるというよりも襲って来るであろう混乱、多数の来島客(予想では105日間の期間中に3万とも5万ともいわれる)、持ち込まれる自動車、来島客の食事、トイレ、交通手段(小さな島だが、最低でも自転車は必要)、等々数え上げればきりがない。 満遍なく105日間の開催期間に来島客が散るわけもなく、土日に集中するのは目に見えている。 島の人口は千人弱だしその半数近くは高齢者である。 早朝を除けば日に数便のフェリーの定員数は確か三百人くらいである。 島には今のところ、コンビニもスタバもファミレスも存在しない。 公衆トイレもないし、自販機だってとても少ない。
美術館建設や島内の展示スペースは用意できても、それら全体を取り仕切るノウハウも人的準備も心許ない、何より島びと自身の心の準備が心配である。 その挙げ句に島びとにも、訪問客にも不満が残ってしまえば、元も子もないのである。
瀬戸内国際芸術祭は7/19から10/31までである。 開催までまだ五ヶ月半もあると云うべきか、もう半年を切ったというべきか。 それとも、「瀬戸内芸術祭は2010年以降も継続し、ひいては世界に冠たる存在となっていくことを願っています。」というから、今年の混乱はあらかじめ織り込み済みで、来年以降に期待するというのであろうか。 島外の部外者が何かを言うところではないけれど、多少なりとも島の今を知っているだけに、心配なのである。
すべからく祭やイベントというものは、島の当事者が楽しんではじめて来島者や観覧者が楽しめるものである。 島に多い高齢者が楽しまずして何の祭かと云えよう。 心配するのは「千載一遇のビジネスチャンス」と考える人が現れることである。 いいや、心配などしなくとも、必ず現れるだろうし、それは何処の祭でもイベントでも同じことである。
島のジサマやバサマが笑顔で楽しむ祭であってほしいと願うことひとしおである。 そのために茫猿など何の役にも立たないが、それでも何か小さなお役に立てることが一つくらいはあるだろうと考えている。
《 【石井氏の記事を開く】 》
《 瀬戸内国際芸術祭2010 》
《 石井氏の記事中にある越後:大地の芸術祭 》
既に十年余の歴史を有している越後・妻有アートトリエンナーレと比較しては、島が可哀相だが、でも目標は其処に置くという考え方もあるだろう。 当然のことだが同じものを目指すのではない。 越後は山里、島は海里、島には島の有り様というものがあるだろうと云うのである。
《 直島地中美術館 》
このサイトでは、島に建設中の美術館について、このように報せている。
直島に隣あう島を舞台に、その複雑な地形が作り出す景観、また土地に刻まれた歴史とつながりながら、姿形を容易に掴ませることのない西沢立衛の建築。そして建築と一体のものとして内藤礼によりアート空間として構成されるアートプロジェクトは、2010年10月のオープンを予定しています。
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