ノーべル物理学賞を梶田隆章・東京大宇宙線研究所長(56)が授賞されることが発表された。梶田氏の師にあたる小柴昌俊・東大特別栄誉教授も2002年に同じ賞を授賞された。ノーベル物理学賞に決まった梶田隆章さんの研究において恩師とも言えるのが、素粒子ニュートリノに質量があることを発見し、物理学の常識を覆した戸塚洋二さん。小柴昌俊博士の次にノーベル賞を受賞するとまで言われながら、2008年にがんで亡くなった。
実験を通して生涯、宇宙の生と死に向き合った戸塚さんは、がんに侵された晩年、自らの死にも科学の目で向き合った。《66歳にて逝去》宇宙の誕生と死を自らの命と重ね合わせたその半生に迫る。《NHKハイビジョン特集「物理学者 がんを見つめる 戸塚洋二 最期の挑戦」より引用する。》
戸塚洋二氏についてのおぼろげな記憶では小柴教授がノーベル賞を受賞した時に、次のカミオカンデからの授賞者は戸塚氏だと云う下馬評を目にした記憶が有る。今回、梶田教授が授賞したのを機会に放映された前掲のNHKアーカイブスを見て、改めて戸塚教授のことを知った。そしてiNet検索をして表題の記事に出会ったのである。
東京大学立花ゼミが伝えている「見聞伝」のなかに、『素粒子物理実験の第一人者が科学好きの皆さんへ贈る明快解説”戸塚洋二の科学入門”』がある。アインシュタインの「E=mc2」から解説は始まり、植物の基本は「いい加減さ」、19世紀末科学の困難:光の科学、ニュートリノ、そして番外編へと続くのである。門外漢には難解な数式も多少は出てくるけれど、判らないところは飛ばして読んでも全体として判り易く興味深い、戸塚氏最晩年のインタビュー記事である。
戸塚氏の最晩年、死を目前に意識して科学を語る記事である。アインシュタインからニュートリノへ、ダーウインからガリレオそしてニュートンを語っている。「E=mc2」から植物が種子をつくるメカニズムについても語っている。それほど長い記事ではないが、示唆に富む記事であり、心豊かにしてくれる記事である。《写真、前列右が戸塚氏、他の三名はインタビューを行った立花ゼミ生。写真は”見聞伝・科学入門”より引用する。》
1987年に発見された「大マゼラン雲の中で爆発した超新星SN1987A」から放たれたニュートリノが、16万年の旅を経て、地球内部を通過し、日本の岐阜県神岡鉱山跡にある地底千メートルの東京大学宇宙線観測所の観測装置・カミオカンデで検出された。
太陽内部の物質は真綿のように熱伝導率が悪いので、核融合反応により中心で作られたエネルギーが太陽表面まで昇ってくるのに数10万年かかります。また、エネルギーが作られる中心部分では温度が1500万度もありましたが、物質を拡散している間に温度が下がり、表面では6000度になってしまいます。私たちは、この6000度で燃えたぎっている球(光球)を見ているわけです。《我々が見ている太陽からの光は八分前のものであり、その熱源は数10万年以前に太陽の深奥部でつくられたものであるという不思議さ。》《科学入門より引用》
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