漏洩防止策

 週刊ダイヤモンド2/12誌記事に関連して、鑑定協会のA氏から「漏洩防止策」について意見を求められた。急遽とりまとめた意見を記事としてUPするのである。なお、ここで云う漏洩防止対象資料とは地価公示関連価格資料のみでなく取引事例資料等も含むものである。両資料に関して、守秘すべき重要性に軽重はなく、漏洩事故に伴い生じるであろう影響も共に重大である。


 週刊ダイヤモンド誌記事のニュースソースとなった「全国都道府県別データ」シート漏洩に関して云えば、漏洩者Xは地価公示法第24条他に規定される守秘義務に違反することを承知の上の確信犯であるか、もしくは漏洩した資料が守秘義務対象であるとの認識に欠けていた不注意犯である場合の二者の可能性が考えられる。 確信犯の犯行を防ぐことは不可能であるが犯行抑止策は講じるべきである。不注意犯についても事故防止策を講じることにより不注意事故発生件数は減るであろう。

 いずれにしても事故を全てなくすことは不可能である。
「事故を起こさない」という考え方よりも、「事故は必ず起きる。問題は事故を予防するためにどのような安全管理措置を実施してきたかであり、事故後の危機管理対策を講じているか」ということであろうと考える。

「確信犯に対抗する抑止策」
 守秘義務違反を承知の上で漏洩する確信犯も、漏洩元が明らかになる可能性が高ければ漏洩を躊躇するであろう。抑止策とはそういう類のものである。
1.全ての守秘対象資料について、印刷物配布は中止すべきである。関係者はマル秘資料は安全管理措置が施されたネットワークを通じて閲覧し、閲覧者は必要に応じて自己のパソコン並びにプリンターを通じて印刷するという方法を速やかに採用すべきである。なお、ネットワークが構築されるまでの間、会議資料として従来通りの資料印刷物が必要なのであれば、全部数に通し番号を刻印し会議終了後は回収することにより漏洩を防止すべきである。
2.前項の過程を経ることにより、閲覧者はネットワークにアクセスを許可された特定の者に限定される。次いで閲覧者の閲覧・印刷日時並びに閲覧資料が記録されて、そのLOGが保存されることにより事故後の追跡が可能である。
3.さらにネットワークを通じて印刷されるマル秘対象印刷物には、(A)守秘対象資料であること、(B)利用後は速やかに裁断もしくは溶融処分をすべきこと、(C)閲覧・印刷者氏名並びにその日時が印字されることにより、注意を喚起し資料の再複写等が抑制される。
「不注意事故の予防措置」
 ここで云う不注意事故とは、安全管理を考慮しない不用意な廃棄処分、紛失事故、盗難事故等を云うものである。同時に不注意事故が起きる原因について、いかなる場合が想定されるかと云えば、一つは資料の重要性を認識していない場合である。この重要性認識に関しては当の不動産鑑定士の認識だけでなく、不動産鑑定士周辺のスタッフ・家族等の認識の有無も問われるのである。
 もう一つは保管・管理の不十分さである。この場合も重要性認識が足りないが故と云えばそうなるが、盗難などは管理者の認識不足にのみ帰因させられない場合もある。
 以上の事故を防止する意味から、重要な資料には全て注意喚起文言の印字が必要である。前項抑止策はそのまま注意喚起策となるものであるが、ネットワークが整備されるまでの補完措置としても、重要な印刷物には全て注意を喚起する文言を印字すべきである。
 その上で、各事務所において必要以上に資料を保管しないことが重要である。事故を防ぐという意味からは、地価公示の評価資料に関しても取引事例資料に関しても不動産鑑定士は不要不急の資料を大量に保管すべきではない。保有しない資料を漏洩させることはあり得ないのである。これら資料の保管、管理状況について調査し安全管理措置について注意喚起すべきである。
1.資料の保管状況
 各士協会事務局並びに鑑定事務所における取引事例等守秘義務対象資料の保有管理状況、何をどれだけ保管しているか、安全に保管されているかについて申告を求める。例えば、H19公示に係わる資料の管理状況について次のような事項の申告を求めるべきであろう。
・廃棄した場合は廃棄方法(一般廃棄物処分、裁断処分、溶融処分)、
・保管する場合は保管庫の状態や管理責任者の有無等、
・シュレッダーの有無
2.漏洩対策の実施状況
 士協会事務局並びに鑑定事務所に設置するPC並びにLANを構成するPCや関連する自宅等PCについて、ヴィールス対策やファイル交換ソフトの利用状況等についての注意喚起並びに実態についての申告を求める。
・PCにパスワード保護が設定されているか否か
・利用するヴィールス対策ソフト名とLive Update実施状況等(自宅も含めて)
3.携帯可能メディアの管理状況
 関連して、地価公示並びに鑑定評価において、携帯メディアの利用の有無とその内容について申告を求める。(ノートパソコン、FD、MD、CD、携帯HD等の利用の有無と安全管理対策の内容)
・日常的に利用する携帯可能なメディアの種類
・持出し禁止、持出しする場合の暗号化等、実施している安全管理措置
・裁断、破壊、初期化等、PC並びに携帯可能メディアの廃棄処分方法
4.責任の所在と範囲を明確にすること
 全ての事故を無くすことはとても困難であるが、事故発生を抑止することは可能である。その意味からは守秘対象資料の管理責任者を明確にするとともに、とるべき安全管理措置を実施していれば免責されるであろうことも明確にしておくべきである。即ち、鑑定協会として実施すべき安全管理措置とその実施状況の確認であり、都道府県士協会として実施すべき安全管理措置とその実施状況の確認であり、個々の鑑定事務所において実施すべき安全管理措置とその実施状況の確認である。
 以上を明確にすることにより、各々の責任の所在とその範囲が認識されるものと考えられる。

『安全、廉価、簡便なネットワークシステムの構築』
 事故の多くはローテク的に発生する。ローテク的な事故の発生を防ぐには、不動産鑑定士事務所にはアナログ取引情報であれデジタル取引情報であれ、地価公示の評価資料を含めて一切を保管させないことを目標とすべきである。即ちネットワークを利用した、必要なときに必要な資料を入手し利用後は速やかに廃棄するオンデマンドシステムへ早急に移行すべきである。

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