特効薬は何処に

 多くの老壮若年会員諸兄姉から、現状を打破する方策についての御質問を頂いております。私の答えは一つです。「直ちに効果の現れる特効薬はございません。そんなものがあれば、私とて、現理事任期中に提案し、実行を求めてきました。」


 しかし、現状を打破する方策はございます。
 一つは、制度創設以来の成功体験の呪縛から離れることです。過去の延長線上でものごとを考えないことです。
 一つは、鑑定業界の外界の変化に俊敏に対応する柔軟性を持つことです。つまり、多角的で同時に鋭敏なセンサーを持つことと、柔軟で許容性の高いセンスを持つことだと思います。
 そして、自分たちが不動産業界の一員であり、情報産業の一郭を構成するものであるとの認識を新たにして、自らの足腰を強化することだと考えます。
 ネットワークの整備・強化(コンピューターネットワークのみならず、人的オフライン的重層的ネットワークの充実)、取引・賃貸情報の整備・充実(特に、価格・賃料を調査する前の原始資料の整備)、公的評価データの整備・充実(特に、視覚的な、地図情報的な整備)、以上三つの情報基盤整備を行うことにより、情報の質を高め、量を拡充し、トータルコストを低くすることにより、均質的且つ精度の高い情報を安価に提供できる環境を作り上げることだと考えます。
 これらの武器を手にして、今まで放置されてきた、一般市民への安価で且つ広範なサービス提供に着手することだと考えます。「変化は辺境より興り、カオスの縁より創造は誕生する」と云います。改めて、原点に戻って、一見遠回りにみえても、サービス提供の裾野を拡大し充実することが、私達の社会における有用性を高めると同時に、社会の認知度を確かなものにできると考えます。云うほど簡単なことではありませんが、五年十年前と異なり、規制緩和の流れは勢いを増し、ネットワーク整備のコストは低下しています。その意味で、外部環境は追い風が吹いていると考えるのです。
 高品質・低価格サービス提供の提案は、多分、既存領域を侵すという批判がでるでしょう。ですから、この件に関しての詳細はもう少し時間をかけて企画案を練り上げる必要性を自覚しています。しかし、間違いなくいえるのは、近い将来に情報の公開と共有の状況が到来することです。そのことは「鄙からの発信」中の寄稿文において伊藤氏や田中氏がふれられている通りです。付加価値をいかに加えるかが問われる時代は目の前でしょう。その準備を始めなければいけないのです。

関連の記事


カテゴリー: 茫猿の吠える日々 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください