不動産金融工学学会総会報告

 去る2000年11月6日に日本不動産金融工学学会(JAREFE)設立総会が、
都内本郷の東京大学工学部1号館15号教室にて盛大に開催されました。
ご報告が遅れておりましたが、設立総会並びに記念講演会の概要をお報
せします。
 ※JAREFE:は以下の略称です。
 The Japanese Association of Real Estate Financial Engineering
 午後1時より開催の設立総会は、約1時間の審議を行い、原案通りに
「会則、初代評議員、初代会長(京都大学経済研究所・刈屋武昭教授)、
当初予算案等」を無事に承認可決しました。
今後の年度内日程は
2001年3月24日に千葉県浦安市(東京ベイサイド・デイズニーの近く)明
海大学にて第一回国内研究発表会が開催されます。
・現在、発表の申込みを受け付け中で、締め切りは01/19/2001です。
・以下をA4一枚以内に記入して下記までお届け下さい。
・発表題目、概要800字以内、発表者氏名、連絡先(電話・fax・
 E-mailアドレス、希望討論者)
※申込み問い合わせ先
 〒279-8550 千葉県浦安市明海8
 明海大学不動産研究科 前川俊一 氏宛
 TEL 047-355-5120 fax 047-350-5504
 E-mail Smaekawa@meikai.ac.jp
 総会に引き続き、下記五氏の記念講演が行われました。
講演要旨は、茫猿のメモによるもので記憶違いはお許し下さい。
なにせ、専門用語や術語が多くて、茫猿の知識では筆記すらままならな
いので、不正確な表現や誤記が多くあるものとお断りします。
「不動産金融工学の重要性」 刈屋武昭会長
・不動産金融工学は、不動産金融商品に関わるリスクと価値の関係を理
解する枠組みを与えるものであり、リスクとリターンの構造の明確化が
求められる。ファンドの価値の時間的変動の把握や最適不動産ファンド
構築法とリスク管理が課題である。
 リスク管理には、建物の陳腐化、立地の陳腐化、テナント管理、ファ
シリテイの陳腐化、地震リスク等がある。
 また、社会的に認知された不動産インデックスが必要であり、リスク
テイカーと証券市場をつなぐものとしてもインデックスは重要である。
「不動産金融工学への期待」 岡本好央(住信基礎研究所)
 メインバンク資本主義のもろさを実感した十年間でした。バブル以前
においては、「最後は大蔵省が何とかしてくれるであろう」と思考停止
していましたが、バブルの崩壊でシステミックリスクに遭遇してしまい
ました。
信用リスクを計測し、リスクの計量化を懸命にはかっていますが、倒産
確率データがない、企業格付けデータがない、格付け毎のデフォルト時
における平均的回収率がない、などのナイナイ尽くしです。
・貸出債権の証券化によるリスクの分散化
・リスク、リターンの情報公開
・レスポンシビリテイの強化等を、今後は図らねばなりません。
「不動産金融工学への期待」 角田勝司(不動産経済研究所)
 日本には五つのリスクがある。(諧謔をまじえて)
・Japanリスク、不動産リスク、金融リスク、不動産金融工学リス
ク(何かよく判らない)、JAREFE学会リスク(正体不明)
 不動産の価値をマーケットで計るために不動産経済価値の計量化シス
テムが必要である。同じく、情報の開示と情報の価値付けが重要である。
「不動産証券化ビジネスの展望」 田代正明(オリックス)
 機械リースから出発したオリックスは、不動産リースにも早くから着
目していました。不動産をファイナンスして、88年にノンリコースロー
ンを日本で最初に手がけたのもオリックスです。今後もファイナンスの
セキュリタイゼーションとエクイテイのセキュリタイゼーションを進め
てゆきたいと考えています。
「新しい不動産市場の誕生」 川口有一郎(JAREFE副会長・明海大教授)
【大変難しくて、茫猿の力ではよくまとめられませんでした】
 CMBS(?)のプライシングが重要である。プライシングモデルは毎
期毎に市場の評価にさらされる。リアルオプションモデルとは数学・理
学理論を不動産市場の現場に適用したもので、土木工学において流体力
学に基づいて橋脚設計を行うように、JAREFEでは不動産マーケットの解
析によってリスクマネージメント理論を確立したい。
 不動産の証券化とは、不動産市場を経済学教科書の世界で構築するこ
とであり、実物不動産の新しい見方、即ち不動産のリターンプロセスの
モデル化にほかならない。不動産市場に流入する資金のアベイラビリテ
イ(?)の向上を図り、不動産市場を機能的金融市場に変えてゆかねばな
らない。
以上で講演メモは終了し、以下は茫猿の感想です
 新しい組織の誕生に立ち会うのは、いつも胸がワクワクするものです。
特に昨今話題の不動産収益価格に大いに関係すると云うよりも、不動産
の収益力計量の根幹を為してゆく予感がする学問・学会の誕生は大きな
期待がもてます。
 全体に若い方が多く、仮会員名簿を拝見しても学界をはじめ不動産関
連各界の方が多数参加されておられます。以外と鑑定業界が少ないなと
云うのが茫猿の偽らざる印象です。ともあれ、川口氏をはじめとして実
質的に学会をリードする方々も参加者も若く、暗黒大陸と云われた不動
産市場を金融工学という新しい理論がどのように切り開いてゆくのか、
少しでも議論・研究の輪に参加してゆきたいと考えました。
 私事ですが、思わぬ出会いもありました。
 川口副会長は、福井の鑑定シンポジウムで記念講演を頂き、お近づき
も得た田中一行教授とは親しい間柄と伺いました。
 学会Associate Editorの東工大・上田孝之助教授は、東北大学の森杉
教授が岐阜大学にお見えになった頃に同じ研究室に在室されており、当
時に鑑定協会岐阜県部会が岐阜大学森杉研究室と提携研究を行ったこと
もご記憶にございました。
 「新しい出会いが新しい創造を生む」、そんな楽しい心地にさせてく
れた本郷での半日でした。
斯界の皆様も、明年3月24日には東京ベイエリアに集まり、新しい創
造の息吹を肌でお感じになっては如何でしょうか。

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