常備菜三種-3

【只管打座・・常備菜三種-3・・04.12.27】
 常備菜三種の最後は、真打ち登場「柚餅子(ユベシ)」である。
柚餅子というと、多くの読者は菓子柚餅子を思い出すであろう。
ぎゅうひ餅が柚子に詰められたもの、或いは羊羹や寒天デリーが詰められたものが各地で市販されている。


 ここで云う柚餅子は「味噌柚餅子」である。
この柚餅子は保存食であり、戦場食でもあったもので、茫猿が知るところでは三河地方の山間部で作られていたものである。最近は三州足助屋敷で土産物として季節的に販売されているようだが、茫猿が食したことはない。
 我が家では十数年前から、年末になると数十個から多いときは百個を越えた量を作って、年間の保存食としている。酒のつまみにもお茶漬けの伴にもとてもよい食品である。また時間が経てばたつほど塩加減が丸みをおびて好ましい味となる伝統食品である。
『柚餅子』
1.材料
 柚子(小振りな花柚子が望ましいが、一般の実柚子でもかまわない)
 味噌(岡崎の八丁味噌に信州味噌を合わせるのがベスト)
 クルミ、ごま、えごま、ピーナッツ、アーモンド
2.味噌造り
 クルミ味噌を作るのであるが、クルミでなくとも、ごま、ピーナッツ、アーモンドなど好みで作ればよろしいのである。この辺りは男の料理である。
クルミを殻から取り出して、すり鉢で細かくなるまで擂る。このクルミの擂り粉木作業の手を抜かないことが肝心である。手抜きのクルミ味噌は舌にざらついて美味しくない。
 すりおろしたクルミに岡崎八丁味噌と信州味噌を好みで合わせて加える。
味噌は各地の地味噌を好みで適当に合わせればよいが、甘味噌だけはよくない。
味噌をクルミに合わせる時に、味噌を柔らかくするために適量の日本酒で味噌を緩くするとクルミ味噌が作り易いが、あまりゆるくすると後々の作業に差し支えるからご用心下さい。
 男の料理ですから、味噌にはこだわって下さい。決して広告バーゲン商品の味噌などでやっつけないで下さい。男の料理が泣きます。
3.柚子の準備
 柚子は、頭の部分を蓋になるくらい切り落とします。この時に切り落とした部分は後ほど柚子釜の蓋にしますから捨てないで下さい。
続いて、細身のスプーンを柚子皮と袋身の間に入れて回しながら、皮と身をはがします。ゆっくりとスプーンを回せば、驚くくらい綺麗に袋身が取り出せます。取り出した袋身は捨てないで、搾って柚子酢を作り食卓においておけば、健康的な自然食品でもある果実酢ができます。男の料理は捨てる処がない。
4.柚餅子作成
 出来上がった柚子釜に、作っておいたクルミ味噌をスプーンで詰めます。
この時に、一杯に詰めないことで、八分目くらいが適量です。
味噌を詰め終わったら、切り取っておいた蓋を回し込みながら釜の中に入れます。丁度、落とし蓋の状態になれば結構です。
 この味噌柚餅子を蒸し器で約15~20分蒸し上げます。味噌に火が通り、柚子が柔らかくなれば出来上がりです。蒸し器から取り出して平たい籠などに並べて冷まします。仕上がりが不安でしたら、この時に味噌の火の通り具合を味見して下さい。味噌に柚子の薫りが移って、このままでも柚子味噌です。蒸し器がないときは電子レンジの茶碗蒸しモードでも蒸し上げできます。
5.仕上げの工程
 ここからが、手間と時間がかかります。
冷めた柚子を一つ一つ、和紙で包みます。丁度てるてる坊主を作るように包み込んで糸でからげるのです。からげるときに、糸の長さを約30cmくらいにして、糸の両端に和紙で包んだ柚子を振り分けにする干すときに重宝です。
 振り分けになった柚子を、風通しがよくて雨露の当たらない軒先などに干します。乾燥させる期間は約一ヶ月ですが、柚子の大きさによってはもっと長くかかります。最初の一週間ほどで、和紙に味噌がしみ出してきて茶色になりますが、それが乾いてくれば食べることができます。
6.食し方
 一ヶ月ほど軒先で干した柚餅子は、冷蔵庫で密封保存して下さい。
冷暗所に菓子缶などに入れて保存するのも良い方法です。また包みの和紙はしみ出した味噌で汚れていますから、包み直すと美しいし贈答にもできます。
 食し方ですが、基本的には好みでよいのですが、最も美味しいのは、皮ごと薄く、出来るだけ薄く切って食べることです。口の中でくるみ味噌と味噌のしみ込んだ柚子皮が絶妙な味わいを醸し出します。
熱い白ご飯に数片載せてお茶を掛ければ、幸せな一食ができます。
数ヶ月もすると、味噌がさらに馴染んでもっと美味になります。
その時期まで食するのを我慢して、保存できればの話ではありますけど。
7.最後に常備菜について
 今回、お知らせした常備菜三種について、数量的レシピは記載しませんでした。それは茫猿も正確な数量を憶えていないのと、試行錯誤して自分の味を作ることが大事だと考えるからです。男の料理は身体で憶えるものです。
舌と指と目と耳と鼻で、五感をフル活用させてダイナミックに料理するところに「男の料理の醍醐味」が生まれてくるのです。
 では、年末年始のひとときを、男の常備菜で楽しんで下さい。
 男の料理は捨てるところがないと書きましたが、筑前煮の時も根菜を金束子(金属タワシ)でこすり洗いすれば皮をむく必要はありません。捨てる処はないのです。何よりも通常の食材は身と皮の間に旨味も栄養も存在しているのです。

関連の記事

カテゴリー: 只管打座の日々 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です