見えない年金問題

 5000万件の年金番号が宙に浮いているという問題の背景がよく見えない。そもそも不明5千万件が発生した理由も、5000万件の内容もよく判らないのである。報道はただただセンセーショナルに年金番号5000万件が行方不明だ、けしからんと云うばかりである。


 この件に関して自民党国会議員河野太郎氏発行ブログ「ごまめの歯ぎしり」が比較的判りやすく背景を伝えている。ブログが伝えるところが真実か否かは判らないが、河野氏は年金問題をテーマに昨秋の自民党総裁選挙を戦おうとした方であり、当たらずとも遠からずであろうと考えて引用する。
 以下は「河野太郎のごまめの歯ぎしり」より抜粋引用する。

1.平成九年に基礎年金番号ができるまで、年金番号は二億件あった。
2.かつては、転職すると転職先で新しい厚生年金番号がついた。
3.国民年金の人が就職し、厚生年金番号がつき、退職して国民年金になるとまた新しい番号がついた。国民年金の人が他の市町村に引っ越しても番号が変わる。
4.平成九年に基礎年金番号が導入された。新しく一億件の基礎年金番号が導入され、それまでの二億件の年金番号を、この新しい一億件の番号に統合することになった。
5.消えた年金5000万件などと言われるが、5000万件のうち、2200万件は、60歳未満の人たちの年金手帳に載っているこうした年金番号の数だ。
6.現在、60歳未満の人たちが年金を受ける年齢になったときに、年金手帳の年金番号は基礎年金番号に統合される。
7.残りの2800万件は、すでに年金を受けている年齢に達したと思われる人の番号だ。
8.可能性として、対象者が年金受給開始前に亡くなって、年金手帳による統合をおこなっていないもの、
9.対象者が年金の受給資格がないため、年金の裁定がおこなわれていないもの
10.中には、無くしてしまった年金手帳に載っていた年金番号があるだろうし、氏名、生年月日などが違っていて統合できなかったものもあるはずだ。
11.だから、今回、2800万件の統合されていない年金番号の氏名と生年月日、性別を今、年金を受給している3000万人の氏名と生年月日、性別と照らし合わせて、ひょっとして漏れている可能性がありそうな人に、通知を出すことになった。
12.だから5000万件は、消えたわけではなくて、2200万件は今後、その年金番号が載った年金手帳を持った人が年金をもらう年齢に達するごとに、基礎年金番号に統合されていく。
13.2800万件の大部分はお亡くなりになった方と年金の受給資格がない方の年金手帳に載っていた番号で、これらは統合される機会が無かったため、いわば宙を漂っている番号だ。

 さもありなんと思う。戦争が有ったわけでも大災害があった訳でもないのに、如何に何でも5000万件が消えるわけなど無かろうと思っていたが、やはりそうかと頷けるのである。
 ただこの説明で問題が解消したわけではない。一つはこのような事件がなぜ起きたか、なぜ今まで放置したのかという背景である。もう一つは正しく迅速な解決方法は何かということである。
 最初の問題点は1997年の基礎年金番号導入の際に発生したのである。当時、社保庁職員も加入する自治労はコンピューター化は労働強化につながると反対運動を展開し、様々な労使協定や遅延行為を行ったと報道されている。この時、反対した自治労にも責任はあるが、最も責任を問われるのが適切な労使協議を行わなかった事勿れ体質の社保庁幹部や当時の厚生省幹部であろう。時の政府責任も問われなければならない。
 同時に、問題点の存在を承知しながら現在まで十年間も放置した歴代の政府や厚生労働省・社保庁幹部の責任も問われなければならない。
 帳票管理するデータや複数のデータファイルを統合する場合の基本原則などというものは、デジタル処理を少しでも学んだ者であれば自明のことであり、幾つかの事項が指摘できる。
a.データ統合が完了するまで、元データの保存(帳票、旧データファイル)。
b.データファイルの入力に指してダブル入力による入力ミスの検証。
c.統合結果を本人に送付して本人確認を求める。
 他にもあるだろうが、これらの措置を的確に行っていれば、今騒がれているような事態の多くは防げたのではなかろうか。
次の問題点は解決方法である。
a.レガシーシステムの更新
 急がば回れはこの際も鉄則だろう。レガシーシステム(legacy system 遺産; 遺物システム)の更新を先ず最初に行うべきであろう。名前、フリガナ、生年月日、性別、番号毎の加入(納付)期間という共通するデータ項目による検索照合が迅速に可能なシステムを開発し、現行システムからデータを置き換えて全データの照合と統合を行えば、さまよっている多くの番号は落ち着き先を得るだろう。
 例えば、報道によるとフリガナの付け違いで照合ができないと云う。山谷が「ヤマタニ」と読むか「ヤマヤ」と読むかで照合できないというのである。それなら「山谷」で照合すればよかろうが、レガシーシステムは数字とカナには対応していても漢字検索にどうやら対応していないようだ。十年以上前に作られたこの古いシステム更新が最初に着手すべき事柄のようだ。そしてファジーなアイマイ検索にも対応できるシステムを構築すべきだ。どうも年金はお馬鹿な古くさいシステムで運用されているようだ。
b.解決の順位
 続いては解決の順位である。デジタルチェックが終わった後に、それでも多く残るであろう統合該当番号不明の件数について、残された帳票や本人申請に基づく照合確認が行われなければならないが、まず高齢者を優先すべきである。並行して遺族年金や障害者年金など社会的弱者を優先すべきであろう。理由などは云うまでも無かろう。
 昨今の国会審議の有り様が理解できないのは、問題点を掘り下げるこういった筋道立てた議論が行われている形跡が見えないことである。新聞やTV報道も強行採決や政局問答は伝えても、事態の背景、解決方法などを的確に伝えているとはとても見えない。「消えた5000万件」というオドロオドロしい見出しが踊るだけである。
それに加えて、システムを改訂しデジタルチェックで解決する部分と、手作業で古い帳票や証拠資料と照合するアナログ作業が混同して話題になっているから、話が余計混乱するのである。
 不払いで話題になっている生命保険でも毎年々々、加入者に記録を送ってきていいるから転居先不明にも早く対応できるだろう。他人の財産を預かっているという基本的な視点が社保庁には欠けていたのだろう。年金を交付してやるとでも言いたそうな姿勢が見え隠れするのである。社保庁や厚生労働省の姿勢転換を云う柳沢厚労相は語るにおちたというか、今までは国民の方を向いていなかったと語ったに等しいのである。

 五日の参院厚生労働委員会で柳沢伯夫厚生労働相は、社保庁が管理する公的年金記録の不備問題で、誰のものか分からなくなっている年金記録約五千万件の照合を来年五月までに終えるなどの新しい対応策を四日に公表したことについて「社保庁、厚生労働省の姿勢が転換したと受け止めてほしい」と意義を強調した。

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