年金問題の真実

 新聞やTV報道によれば、安部総理は年金問題について、「年金時効特例法案と社会保険庁改革法案を成立させた上で、一年以内に国民のすべての記録を調査し、年金の支払い漏れがないようにする。」と言う。また、このような問題が起きた原因は、「自治労という組合に支配されていた、社会保険庁の職員がダメだったからだ。」と言う。 本当にそうだったのであろうか、終盤近くなった国会審議を傍聴すると、年金問題の原因は別の処にあるという実態が見えてくる。


 この頃はとても便利なのであり、疑問をもったら直接その実相に迫ることができるのである。即ち、年金問題の実相に接するには国会審議を直接傍聴するのが近道であり、国会審議ライブラリーを見ればよいのである。
【 衆議院インターネット審議中継 : ビデオライブラリー 】
【 参議院インターネット審議中継 : ビデオライブラリー 】
 そこで、下記の会議を傍聴すると、ことの実態というかバカバカしさが見えてくるのである。
『開会日 : 2007年6月14日 (木)  会議名 : 厚生労働委員会  収録時間 : 約7時間20分 』
・日本年金機構法案(閣法第78号)
・国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案(閣法第79号)
・厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律案(衆第37号)
審議案件は、いわゆる年金時効特例法案と社会保険庁改革法案なのである。
 6/14の委員会審議収録時間は約7時間20分と表示されている。とてもじゃないが、7時間もの会議を延々と見続けるわけにはゆかない、最近は暇な時間が多い茫猿だがそれでも業務納期は待ってはくれないし、何かと野暮用も多いのである。そこで、つまみ食い的に野党質問と与党質問を垣間見たのだが、垣間見ただけで判ったことがある。
 一つは、レガシーシステム(古くさいシステム)問題である。社保庁の年金管理システムは、富士通、日立、NECの三社の大型機(メインフレーム)で運用されていて、しかも三カ所に分散設置されている。さらに運用委託を受けている業者も二社(NTTデータ、日立)に分かれているという。(民主党藤末議員質問)
 しかも、このシステムは基礎年金番号が導入された十年前から変更されていない、十年前に導入・運用されたということであるから、開発はさらに数年さかのぼるであろう、WIN95以前なのである。誰が考えても、少しコンピュータが判っていれば「古すぎるシステム」なのである。
 使用しているコンピュータ言語はCOBOLだそうだ。COBOLとかFORTRANといえば、茫猿がパソコンに取り組み始めた80年代初め頃にほんの少しだけカジッタ言語である。懐かしい記憶であるが、今や古典というか死語といってよかろう。
 さらに富士通などとの契約形態が特殊というか、一方的に業者側に有利になっていて、社保庁がさわれるのは端末のみで、端末から向こう側(メインフレーム)についてはアンタッチャブルだという。しかも長期リース(レンタル?)契約の残債務が数百億円残っていて、この残債処理ができないから今まで延々と使用を継続していたということのようである。数百億円の残債と五千万件の年金データが天秤にかけられたと云うことである。藤末議員は二年前にも質問したというが、それが現在まで放置されてきたのである。つまり、システムの古さや不統一が引き起こすであろう事の重大さを政府・小泉元総理以下・厚生労働大臣・社保庁長官も、自民党社労族(安部晋三氏は若手ボス)も、野党も認識していなかったということである。
 ところで、藤末議員と柳澤厚生労働大臣との質疑を聞いていて判るのは、安部総理が言っている「一年以内に国民のすべての記録を調査し、年金の支払い漏れがないようにする。」は正しくないということである。選挙向けだけのその場しのぎ無責任答弁と言って悪ければ、すり替え答弁である。
柳澤厚生労働大臣の答弁は「カナ氏名、年齢、性別の三種のデータ情報で突合した結果を本人に送付し確認を求める。」である。 これが一年以内に行うことであり、その後にデータ統合を始めるというのが実態である。しかも、一年以内の本人送付は住所が確かで突合できた送付可能なデータのみであるし、作業予定の希望的観測でもある。
 審議を聞いていて、柳澤厚生労働大臣が気の毒になってきた。彼は東大卒、大蔵省出身、71歳である。一般的にいえば多分、資質優秀な方であろう。しかし、残念ながらデジタル問題には明るくない、茫猿のまわりを見ていても(鑑定協会などですが)、この年齢では無理なのである。現場の第一線にいる時に、つまり四十代までに、コンピュータを体感していなければ無理だろうと思える。柳澤厚生労働大臣が、日常的にキーボードに親しんでいるかどうかを伺ってみたいのであるが、多分月に一回も触っていないであろう。柳澤大臣が国会議員に当選する前、霞ヶ関の現場にいた1980年以前はワープロも身近には無かった頃である。
 ファイルが4種類、コンピュータハードが3機種、コンピュータ設置場所が3カ所、運用管理者が2社という、今の日本では最古・最悪に近い全体システム構成であろう。このシステムが今も残っているという問題点を理解せよというのが無理であろう。親子ほど年齢が違う、柳澤厚生労働大臣と藤末健三議員(43歳、東京工業大学とマサチューセッツ工科大学出身) の噛み合わない質疑を聞いていて、しどろもどろの答弁を繰り返す柳澤大臣が気の毒になったのである。辞めることができなかった松岡農水大臣もある種の意味で気の毒だったが、柳澤厚生労働大臣も「俺リャー、辞めたいよ!!!」というのが本音ではなかろうかと、ビデオライブラリーで柳澤氏の辛そうなお顔を拝見していて思わされた。
 総務省に検証委員会が設置されて、これから歴代の厚生大臣や社会保険庁長官などの責任を追及するというが、これは参議院選挙向けの人民裁判的或いは文化大革命的素人受けを狙ったパフォーマンスに過ぎない。道義的にはともかくとして、小泉元厚生大臣・元総理や坂口元大臣(公明党)の法的責任をどう問えるというのであろうか、歴代社保庁長官の責任をどう問えるというのか。

『小泉氏ならば、人生イロイロ、年金もイロイロと宣うだろうか。』
『人命に関わる薬害エイズ問題の折りに、当時の薬務局長の責任を問えなかったのである。その元薬務局長正木馨氏はその後に社保庁長官をはじめ関連法人を歴任した正木馨氏なのである。』

 今、最も大事なことは、原点に戻ることであろう。今のシステムを捨てるという決断が最初である。次いで四種類のファイルに分かれているデータを統合するために、データフォーマットを統一してデータをコンバートすることである。次いで最新のオープンシステムを構築してデータ統合を行うということではなかろうか。藤末氏の言うようにCIO(専門家)に任せることであろう。厚生労働省のCIO4氏は錚々たるメンバーである。4氏が就任したのはどうやら昨年度のことであろうから、厚生労働省は彼らの配置を宝の持ち腐れにしていたという訳である。
 ことは国民の資産に関わることであり、老後の安心と安全に関わることである、平成23年度に導入予定の新システムを直ちに前倒し導入すべきであろう。この決断ができるか否かが、政治家と政治屋の分岐点であろう。
 【07/6/14:厚生労働委員会  藤末議員質問ビデオ 】
※上手くアクセスできない場合は、上掲の参議院ライブラリー、会議検索より、6/14 厚生労働委員会よりアクセスしてみて下さい。藤末健三氏の他にも、七月選挙が絡む片山虎之助氏(自民) 、舛添要一氏(自民) 、小池晃氏(共産)、福島みずほ氏(社民)などが、この問題に対して行う質疑は面白かろうと思うのだが、残念ながらまだ閲覧傍聴する時間が取れないのである。
・・・・・・いつもの蛇足である。・・・・・
 社保庁問題では自治労問題は当然に俎上に挙げられねばならない。ただし、自治労のエゴと政府の管理者責任を混同してはならないのである。管理監督責任や雇用者責任をほったらかしにしておいて、今さらに責任転嫁するのはそれ自体が無責任というものである。今までQサイものに蓋をしてきたのは政府御自身ではないですか、安倍総理殿。

関連の記事

カテゴリー: 茫猿の吠える日々 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です