「D列車でいこう 」とは書名である。NHK週刊ブックレビューで紹介されていたから通販で購入して一気に読んだ。大人のメルヘンなのである。
書名: D列車でいこう、著者 阿川大樹、出版社 徳間書店
番組中の書評者:吉田伸子(書評家)
週刊ブックレビューが報せる「本の内容」
廃線が決定したローカル鉄道を建て直そうと立ち上がった3人の男女が主人公の長編小説です。鉄道オタクの元官僚・58歳。子会社への出向を命じられた銀行支店長・55歳。そして、彼の部下のキャリアウーマン・32歳。鉄道に素人の三人は、偶然、あるローカル線が廃線になることを知ります。
「だれにも迷惑はかけない。だから、もう五年、鉄道を走らせてくれ。」(本文より)3人は新しい会社ドリームトレインを設立、町の人々や全国の鉄道オタクを巻き込んでローカル線の再生にチャレンジします。困難を乗り越えて新しい人生に挑んでいく人々を描いた一冊です。
ブックカバーがいささかエキセントリックなのは、本を読み進んでゆくと判るのである。全国の過疎地ローカル線の抱えている問題が丁寧な取材をベースに綴られてゆくのである。
もっとも面白いのは、田舎というだけなら掃いて捨てるほどある普通の田舎を走り、通学生徒と車に乗れない高齢者以外に乗客がなく、取り立てて名所旧跡もないから観光客もいないローカル線の再生にインターネットやブログが関わり、ロングテールがキーワードになっていることである。
本文中で作者はこう語っている。
昔なら一億人の人口のなかに埋もれた二万人にアプローチするのには大変な時間がかかったし、広告を打つにしても効率よくメッセージを届けることはできなかった。マスメディアと市場の小さなセグメントとの間に距離がありすぎたのだ。
どのようにネットを利用し、どのような仕掛けで廃線寸前の鉄道を存続させてゆくか、大人の童話と云えばそれまでだが、エンターテイメントとしても面白いし、オヤジ族を勇気づけてもくれるのである。それに過疎地域振興とネットビジネス(ロングテール)の関わり方も覗かせてくれる。再生資金2億円の出処も以外なのだが実は結構タイムリーでもある。とにかく鉄道マニア&ブロガーにはお薦めの本というところです。
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