湖国八幡堀

先月末まで、中日新聞に藤堂高虎を主人公とする「下天を謀る(安部龍太郎)」が連載されていた。この小説のメインテーマは戦国乱世に終わりをもたらした高虎と家康との交情を描くものであったが、背景というか底流には病没した豊臣秀長からその後見を託されていた、主秀長の養嗣子・秀保(関白秀次の弟)が事故死(何者かに暗殺されたか?)するのを防ぎきれなかった”終生の悔い”というものも流れていたように思う。 近江八幡城は、その秀保の縁者秀次の築いた城である。 近江商人の町筋は歩いたことがあっても城址には登ったことがないから、止揚展に出かけるついでに近江八幡城址も訪れてみたいと考えていたのである。


05/10朝8時過ぎにJR岐阜駅を発った茫猿は、米原で近江鉄道に乗り換えたのである。 近江鉄道は米原・彦根・八日市と乗り継いで近江八幡に至るローカル私鉄線路である。 途中高宮駅からは多賀大社方面へ、八日市駅からは水口・貴生川方面へも分岐している。 貴生川駅ではJR草津線に接続し、米原駅や彦根駅および近江八幡駅ではJR東海道線に接続する。 つまり、米原からJR線を乗り継げば近江八幡へより早く着くのであるけれど、それはそれマニアの常としてよりローカルな近江鉄道を利用するのである。 何よりも米原:近江八幡通し切符が890円なのに、一日フリー切符は550円(土日祝日限定)という安さが嬉しいのである。 昨夏に近江鉄道の客となった茫猿であるが、この時は米原:貴生川間の往復だったから、今回は米原、彦根経由八日市:近江八幡のあいだを乗車したことになる。

さて、米原から乗車して最初の乗換駅彦根駅では、近江鉄道ミュージアムがあるという。早速に途中下車して博物館に向かうが、開館日限定でこの日は入館できなかったが、柵越しに古い電気機関車などを眺めることはできた。

JR線と近江鉄道駅をつなぐ跨線橋の窓越しに眺めるミュージアム。

もう田植えが終わって苗を定着させるために水が張られた田圃のなかを、彦根から八日市と乗り継いで近江八幡駅に着いた時は12時を少し廻っていた。バスかタクシーとも考えないではなかったが、暇な気儘旅だからと、駅前から八幡城趾に向かって真っ直ぐに北へ延びる駅前大通(愛称・ぶーめらん通、ブーメラン他の石彫が随所に置かれている。)を、止揚展の会場白雲館へと向かったのである。 人通りも少ない日曜日の昼下がり、後からニュースで知ればその日の気温は30度を超えた夏日だったという。 一休みする喫茶店などがまったく無いわけでもなかったが、八幡堀付近で佳い昼食を摂りたいと思うから、空腹と渇きを抱えて約3キロの道をひたすら歩いたのである。
会場の白雲館へ着いたら、もう午後一時半近かったから、昼飯は後にして学園の皆さんにご挨拶をと思った訳だが、結局そのまま写真を撮ったりしている内に講話などが始まり、午後三時半まで昼食抜きとなったのである。 講話や歌のイベントが終わって、ご挨拶もそこそこに向かったのが八幡堀沿いの「茶寮:浜ぐら」である。 白雲館へ向かう道すがら、良さそうな店だから昼食をと思ったものの、空席待ちの列を見て断念した店である。 茶店かと思って入ったのだが、なかなかどうして、築二百年・西川本家の蔵を改装して近江牛をメインとするレストランを営業しているのである。 八幡堀沿いの「茶寮・浜ぐら」(現在は経営者が代わって、茶寮からレストランになっている。)

昼と夕べのあいのことだから、店前のノボリにもある「赤の他人丼」とビールを注文したのだが、渇いたのどにビールが心地よく流れ込んだのは云うまでもないが、「赤の他人丼」も空腹を差し引いても十二分に美味しかった。 スキヤキ風に軽く火を通した牛肉と温泉卵が絶妙の組み合わせである。 牛と卵だから他人丼でよいのだが、どうして赤の他人丼というのかといえば、ドンブリが赤いことだけではなくて、近江八幡名物の赤コンニャクが添えられているのである。 赤コンニャクは小鉢だけでなく、さいの目に刻んだ赤コンニャクが糸コン代わりに炊き合わされて、三つ葉と牛肉のあいだに小さく見えているから”赤の他人丼”なのである。 《赤コンニャクとは酸化鉄で着色された、近江八幡名物のコンニャクである。》

腹が満ちた茫猿は、日牟礼八幡宮に日頃の無事をお礼してから、麓から山上に通じるロープウエイの客となったのである。 山上から眺める夕なずむ琵琶湖と西の湖あたりのモザイク模様の水田(みずた)の景色は美しいものだった。

意外と近くに安土城趾も望めるのである。 「八幡山、安土山、西の湖

秀次が築いたという、琵琶湖と八幡市街を結ぶ舟運の八幡堀。アヤメ?が咲いていた。

風に揺れる新緑を水面に映している八幡堀。

定番、近江八幡の蓋

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