銘醸あれば吟醸粕あり

久々の草深包丁である。この冬は白蕪が良くできた。浅漬け用にでもと考えて作った蕪であるが、出来過ぎると始末にも困るのである。

今朝程、三十年振りに来訪いただいた業界畏友の奥様にも幾らかはお持ち帰りいただいたのであるが、畑には大きく育ったカブラがまだ幾つも残っている。いずれ花芽が出る前に我が腹に納めなければならないのである。

カブラは漬け物以外には蕪蒸しなどの調理法があるのは知っているが、合わせる食材も必要だし、調理作業が面倒だから試したことが無い。もっぱら浅漬けと味噌汁の実に使っている。先日のこと、ものは試しとスープカレーの具材に使ってみたら、これが見事にはまるのである。

軟らかく火の通ったカブラの甘さとカレースープの辛さが絶妙の出会いだった。カレーの具材は玉葱とジャガ芋、夏であれば揚げ茄子とトマトにパブリカなどと云う固定かつ既成観念は及びでないほどに旨いカレーが出来上がった。調理法を「CoCo壱番」に売り込みたいくらいである。

適当な大きさに切ったカブラを下ゆでしておき、鶏モモ肉に冷蔵庫の隅に眠っている野菜のアレコレ、例えばニンジン、ブロッコリー、白葱などを合わせて炒める。そこへ茹でたカブラも合わせて軽く炒め、カレースープを注ぎ入れれば、カブラカレーの出来上がりである。 熱々で口のなかでとろけてゆくカブラの甘さとカレーの辛さが醸し出すハーモニーを一度は味わうべしである。《ご注意、カブラの皮は厚く剥くべきである。皮むきが薄いと、皮に残るスジや、カブラ固有のほろ苦さが苦になるだろう。》

カブラの漬け物は浅漬けだけではないのである。粕漬けがとても旨いのである。皮むきして2〜3cmの厚さに切り、軽く塩をふり重しをのせて一晩漬けておく。カブラが冠るくらいの水が出てくれば、漬け込み準備完了である。

この浅漬けカブラの水気をきって「粕床」に漬け込んで二昼夜もすれば旨い自家製蕪粕漬けが出来上がる。粕を洗わず拭うだけで刻めば、絶品の蕪粕漬けが食卓にのぼる。

さて、肝心要めの問題は漬け込む「粕床」なのである。以下、箇条書きにしてみる。
1. 粕はスーパーの店頭で板粕を買い求めてはいけない。地元の造り酒屋で自社製酒粕を買い求めなければいけない。買い較べれば一目瞭然であるが、絞られ方がまったく違っているのである。酒の残り香、残留アルコール&酵母などが大きく異なっている。

2. 酒粕を店頭に置いている地元の造り酒屋については、iNetなどで探せば簡単に見つかるだろう。そんなに高いものではないから、幾つか買い求めて好みに合う酒粕に出会えばよいのである。私が買い求めているのは、地元三輪酒造の吟醸酒粕である。買い求めて冷凍庫に保存している。

三輪酒造:吟醸酒粕」《以下はサイトより引用》
『昔ながらの上漕(ふね)で濾された吟醸の酒粕です。 袋詰めした後まだ醗酵が進み、袋がパンパン膨らむほどもろみをたっぷり含んでいます。 他の酒粕と比べてとても柔らかく、香りもとても良い酒粕です。商品が無くなり次第販売終了とさせて頂きます。』

3. 茫猿はこの酒粕に、粕量の半分程度の焼酎を混ぜ合わせ、電子レンジで人肌くらいの温度に暖めてから、琺瑯容器で常温保存している。焼酎を混ぜるのは乳酸発酵を防ぐ為と、粕床の熟成を促す為である。粕床が少なくなる毎に、冷凍保存の酒粕をもどして焼酎と合わせて追加するのである。《戦後、焼け跡派の小説などには、カストリという酒がよく登場するが、多分、この酒粕に焼酎を混ぜて絞ればカストリ酒が出来るのだろう。小説に登場するカストリ酒は、カラカラに絞った板粕と飲用アルコールを混ぜたものであろうから、較べてはいけないだろが。》20160117kasu

4. 熟成が進んでくると粕床が琥珀色を帯びてくると云われるが、そこまで通年保存したことが無い。今年こそは土用越しの粕床を味わってみたいと考えているところである。もうしばらくすれば、寒造りの吟醸酒粕が店頭に並ぶであろうから、必ず買い求めて冷凍保存する予定である。《地元の名酒は酒だけではないので、酒粕にも目を向けたい。》

5. こうして熟成した粕床に、夏野菜、胡瓜、白瓜、茄子《茄子の紺色が滲むだろうから漬け方には一工夫要るであろうが。》などを漬け込みたいし、その前には、塩糠《しおぬか》に漬けてある大根《タクアン予定》や赤カブの粕漬けも試してみたいと考えているところである。

この冬は、またひとつレシピの数を増やした草深包丁なのである。今宵は敬遠している「蕪蒸し」にでもチャレンジしてみるか。 細やかな暮らしのなかのそれとても、老いの共観、愚観、諦観の一つなのだと、独りほくそ笑んでいる茫猿なのである。

《2016.01.17   23:00  追記》
今夕の献立は予告どおりに蕪蒸しに初挑戦しました。参考にしたレシピはキッコーマンのサイト記事です。 畑から収穫したての蕪の皮を厚くむき、擂り下ろします。具材は鱈の切り身《皮と小骨を除く》、ホタテ貝柱、椎茸、蕪の上を飾るのは花ニンジン、キヌサヤ、刻み柚子皮です。 擂り下ろした蕪は塩と片栗粉を少しふり、しっかりと泡立てた卵白と混ぜます。 鱈と貝柱は酒と醤油で下味漬け込みをします。

以上の下ごしらえを済ませてから、自家用ですから深皿に卵白蕪を敷き、鱈切り身を並べてから強火で約五分蒸し上げる。 次いで火を弱め、椎茸、貝柱の順に並べてから、卵白蕪をたっぷりとかけて中火で約十五分蒸し上げます。丼を取り出してから湯通ししてあるニンジン、キヌサヤそれに刻み柚子皮を並べ、出汁に片栗粉を引いたトロミアンを掛け廻せば、「草深包丁・蕪蒸し」完成です。

ポイントは、鱈の一口大の切り身はしっかりと火を通すこと。生食用のホタテ貝柱はレア状態に仕上げること。下味は薄く、トロミアンも出汁は濃く醤油は薄味にして卵白蕪の白さと甘さを生かすことでしょうか。

脇皿には、これも畑採りのニンジンを乱切りにして軟らかく湯がいたものと、キヌサヤの和風サラダです。ドレッシングは柚子絞り汁とオリーブオイルそれに細切り汐ふき昆布をあわせたもの。本日が此の世に生を享けてから?回目の記念すべき日であった家人も大いに満足したようでなによりでした。もちろんのことですが、買い出し、畑の収穫、下拵えから皿洗いまで、全部を茫猿が仕遂げました。

余談になりますが、茫猿が草深包丁にこだわる一つは、それが認知症予防になるだろうと考えるからです。 同じく、献立、下拵え、調理、後始末の全作業を無駄無く流れよく進めてゆくことは、不動産鑑定評価 の処理計画と作業手順に通じるからです。

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