【茫猿遠吠・・NPOと固評開示の補足・・02.06.12】
『鄙からの発信』での最近の話題二件、
即ち、NPO建物鑑定協会による広範な業務侵蝕(その可能性)の件と、資産評価
研究センターによる固評等公的価格情報開示の件について、茫猿はどちらを重大
視しているかと云えば、固評等価格情報開示の方でです。
その理由は、(茫猿が識る範囲でという限定条件付きですが、)情報というも
のの在り方について鑑定士は閉鎖的で有りすぎるのではないかという疑念が常に
あるからです。
不動産鑑定評価という業務は優れて不動産情報の収集・加工・分析・翻訳・開
示に関わる業務であると考えています。 別の表現をすれば、業界内に於いても、
業界外に向かっても、最もよく開示する者、最もよく報われる者(優れた情報を得
ることができる)と考えるからです。
鑑定士が単なる情報の収集屋・加工屋段階に留まるのでよければ、自己の保有
情報に対して閉鎖的になるのも理解できますが、情報の分析・翻訳に重きをおけ
ば自己の保有情報を開示することに重きをおかざるを得ないと考えます。
つまり進んで情報開示することにおいてのみ、より上位且つ深層情報に到達し得
ると考えるからです。
ですから、地価公示や地価調査そして固評標宅価格に関するより進んだ、精度
の高い情報開示事業にこそ、不動産鑑定士は取り組まなければならないと考えて
いるのです。それが公益法人としての鑑定士協会の在り方でもあろうと考えるの
です。またそういった情報開示こそが、くだんのNPO法人への優れた対策となり得
ると考えます。
その意味で、本来、多くの情報を保有している鑑定士が関与しない世界で情報
開示が進められてゆくことに、いい知れない不安と虚しさを感じているのです。
(財)資産評価研究センターが行おうとしていることは、我々が主導すべきこと
ではなかったのだろうか、少なくとも提案し企画し、事業化を進めるべきことで
なかろうかと考えるのです。
NPO建物鑑定協会の件は、ウエブサイトにて「建物に関する知識の乏しい不
動産鑑定士には作成できない」と広言されたことに、衝撃は受けています。
しかし、[さもありなん]と容認する「もう一人の茫猿」がいることも認めなけれ
ばなりません。
また、この件は市場が決めてくれることであり、市場の評価に委ねるしかない
し、鑑定士が鑑定士自身の能力向上と自己ピーアールに務めるしかないと考えま
す。
同時に建物鑑定協会の在り様には少なからぬ疑問を感じてはいます。
特定非営利活動を目的とするNPOという在り様、建築士諸氏が建物鑑定評価に
本格参入されるその在り様、等々詰めて検討しなければならない問題は多いと感
じています。 しかし、それは日本鑑定協会が為すべきことでしょう。
※鑑定法55条3号の規定によって、「建築士法による建築士事務所の業務として、
建物につき鑑定するとき」は、鑑定法の適用除外となっている。
NPO法人も、既に設立登記から一年半を経過しており、建物鑑定協会の会員
募集が開始されてからでも16ヶ月を経過している訳ですし、その間に於いて日
本不動産鑑定協会が何のアクションも起こしていないのだとすれば(茫猿が知る
限りにおいて鑑定協会が何かをしたとは聞いていません)、それはそれで日本不
動産鑑定協会として容認しているというか、容認すべきことなのでしょう。
※NPO日本建物鑑定協会は、平成12年9月、建物鑑定業務の普及と啓蒙を目的
に、建築士・弁護士・公認会計士らにより設立されました。
(平成13年1月25日NPO法人として登記)(サイトより引用)
●活動の指針(建物鑑定協会のウエブサイトより引用)
1.消費者に対し、建物に関する意識改革を行うための教育・啓蒙活動を行う。
2.建物に関する紛争の予防と解決を目的として活動し、
紛争解決のための鑑定書を作成する。
3.国際会計基準に適応する不動産の時価評価の統一基準を創出し、普及させる。
4.不動産証券化のための情報開示図書・投資インデックス・投資判定の
基準を作成し、普及させる。
5.不動産の公的評価に関する情報を開示させ、公平な評価基準を示し普及させる。
・・・・・・・本稿終わり・・・・・・・
関連の記事
- 競売評価モデル開示 : 2004年11月9日
- 士法検討委議事開示 : 2004年9月28日
- MapClientのご案内 : 2011年10月17日
- 読者投稿編 その1 : 2002年6月13日
- 建物鑑定士登場 : 2002年6月10日
- 国交省ガイドライン案開示 : 2004年9月24日
- 掲載図表一覧 : 2004年10月2日
- 関連情報の掲載 : 2005年2月27日
- 鑑定協会NW構築私案 : 2005年9月27日
- 取引価格の開示-3 : 2003年12月5日