2013’参院選総括

茫猿が総括するのではない、以前にも紹介したことがある「内田 樹」氏が行っている総括である。
内田 樹の研究室:参院選の総括

詳細はお読み頂くとして、印象に残るフレーズを引用させていただく。
・ 現在の自民党は派閥が弱体化し、長老の介入が制度的に阻止され、党内闘争が抑圧された「ねじれのない政党」になっている。
・選挙制度の違う二院が併存し、それぞれが法律の適否について下す判断に「ずれ」があるようにわざわざ仕立てたのは、一党の一時的な決定で国のかたちが大きく変わらないようにするための備えである。言うならば、「ねじれ」は二院制の本質であり、ものごとが簡単に決まらないことこそが二院制の「手柄」なのである。
・それは人々が「スピード」と「効率」と「コストパフォーマンス」を政治に過剰に求めるようになったからだ、というのが私《内田 樹》の仮説である。

内田氏は、このようにも述べている。
・その「短期決戦」「短命生物」型の時間感覚が政治過程にも入り込んできたというのが私の見立てである。 短期的には持ち出しだが100年後にその成果を孫子が享受できる(かも知れない)というような政策には今政治家は誰も興味を示さない。 原発の放射性廃棄物の処理コストがどれくらいかかるか試算は不能だが、それを支払うのは「孫子の代」なので、それについては考えない。年金制度は遠からず破綻するが、それで困るのは「孫子の代」なので、それについては考えない。 TPPで農業が壊滅すると食糧調達と食文化の維持は困難になるが、それで苦しむのは「孫子の代」なので、それについては考えない。 目先の金がなにより大事なのだ。

茫猿は熱く、内田 樹氏に同意するのである。 かつての選挙では見受けられた「一党に勝たせ過ぎない。《一度は大勝させても、次回選挙では揺り戻す。》」という、日本人の優れたバランス感覚が失われたことを、とても残念に思いますし、とても危惧しています。 選挙前も選挙中も勝利インタビューでも「ネジレ解消」を得々と語る安部総理に「大きな危うさ」を見ています。

もちろんのこと、異論はあるだろう。 東京都で山本太郎氏が当選したことに救いを見る方もいるだろう。 低投票率がもたらした当然の帰結として組織が確かな政党が勝つべくして勝ったと考える方もいるだろう。 民主党のテイタラクがもたらした帰結であり、第三勢力の分裂と乱立がもたらした帰結であると考える方もあるだろう。 長く続いたデフレ現象や社会の二極分化がもたらした右傾化と考える方もいるだろう。 アベノミクス効果《為替相場や株式市場に限られた一時的現象であり、真のデフレ脱出が期待出来るかは未だ疑問である。》に浮かれた既成・既得権益層の期待感の現れと見る方もいるだろう。

様々に評論することは出来るのであろうが、衆参を通じて安定多数を一党一派に与えることの危うさを、多くの国民が考えなかったこと、そしてそれが故に投票をネグレクトした危うさと無責任さを思わざるを得ないのである。 民主主義とは手間暇のかかるもどかしい政治制度であり、良きリーダーを得なければ衆愚政治に陥りやすいと、改めて思わされるのである。

 

 

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