先号に続く、解散についての続編である。
安倍総理の解散宣言は、「三年後の2017年には何があろうと消費税を10%に引き上げる」という宣言である。 同時に言外に「再び安定多数を得て、解釈改憲を行う、原発を再稼働する、沖縄に新しい辺野古基地を建設する」という宣言でもある。
二年前の総選挙では話題にもなっていなかった「解釈改憲:集団的自衛権行使、特定秘密保護法」などの復古主義政策を提唱した安倍内閣である。福島原発事故があらわにした原発の危険性すなわち原発安全神話が崩壊したにもかかわらず、原発を再稼働しようとするだけでなく原発の輸出まで押し進める安倍内閣である。 海外派兵は行わないという国是を変えようとするだけでなく、兵器の輸出も意図する安倍内閣である。
浮かび上がってくるのは、自民党内閣の原発産業擁護姿勢であり、兵器産業擁護姿勢である。円安による為替差益を享受しているのは名だたる大企業ばかりである。 この二年間で失業率は下がったと言うが、非正規社員比率が上昇し正規社員比率は低下しているのである。解散で廃案になるであろうが、今国会に提案しているのは労働者派遣法の改悪法案である。
内閣改造で吹き出した政治資金問題とアベノミクスの失政による景況悪化で内閣支持率が低下する前に、「消費税率引き上げの先延べ」という煙幕を掲げて選挙戦を戦い、今後四年間のフリーハンドを獲得しようと云う「目くらまし解散」であるというのが今回の解散の実態なのである。
安倍総理は常に強い日本経済の復活というけれど、平成に入ってからずっと云われてきたのは、量的拡大を追いかける時代は終わったのであり、質的転換を模索する時代になっているということである。 エネルギーにしても量的な拡大ではなく持続可能で再生可能なエネルギーに転換してゆくべきなのであり、戦後の日本経済の発展は軽軍備にあり、軍事力をもって介入しようとする積極的平和主義ではなく民生安定を目指す平和主義を選択すべきなのである。
地方創成についていえば、効率を優先し量的拡大を目指す東京一極集中主義を速やかに改め多極分散型日本へと構造を転換すべきである。今後何十年かは人口の減少が避けられない日本であれば、量的拡大は望み得べくもないのである。質的転換を目指すしか道はないのである。明治維新以来進めてきた霞ヶ関官僚がリードする中央集権国家から、地方分散型多極分散型国家へと今こそ転換を始めるべきであろう。
国民が今問われているのは、今でもまだ量的拡大を目指すのか、それとも質的安定を目指すのかということであり、不安定な格差の拡大を容認するなかでひたすら勝ち組を目指すのか、それとも安定した中間層の充実を目指すのかということであろう。
沖縄がハワイ・グアム沖における東シナ海の不沈空母として機能したのは三十年も前のことである。今の沖縄の存在感は、東アジア及び東南アジア交流における十字路と云う地政学的位置にあると云えよう。であればこそ、米軍基地の増強という政策を選ぶべきではなく、航空便とコンテナー船便のハブ的存在を目指すべきであろう。いにしえの琉球王国の復活と表現してもよい。 そのような大胆な発想転換や地方分権政策こそが求められているのであり、争点となるべきであるのが今回の解散総選挙なのであろう。
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