小さな疑問ですが

 多くの行政情報の公開が進められつつある。地価公示や地価調査や固
定資産税標準宅地評価の鑑定評価書が全面公開される時期も近い。
 そこで思うのだが、現在の地価公示の標準地価格は一般人にとって親
切で判り易い価格であるのだろうか。
 不動産鑑定士と国土交通省にとっては常識であることが、一般社会に
おいても常識として理解されていようか。地価公示価格は「標準地を選
定し、その正常な価格を公示する」ものとされている。地価調査価格は
「通常と認められる画地(基準地)を選定し、その標準価格を判定する」
とされている。
 字句通り読めば標準地や基準地の価格すなわち標準(基準)価格と理解
されるのが当然の帰結ではなかろうか。
 しかし、地価公示に従事する鑑定士にとっては自明のことであるが、
公示標準地といえども、標準画地ではない場合が相当に存在する。
角地や二方路地も多いし、接面道路方位は東西南北が混在する。
 画地の規模や形状も多岐にわたるといってよい。
公示価格等は各々の標準地(基準地)の鑑定評価額であるから、当然に各
々の画地の個性(個別的要因)を反映した価格である。
 (平均的あるいは中庸的という意味で、或いは個別格差補正を要しな
いという意味で)標準的な価格ではない場合が結構に多いものである。
このような説明を顧問先に行うと「エーッ」という返事が返ってくる場
合が結構に多いのである。
「公示価格は標準価格ではないのですか?」という問いかけを受ける場
合も、ままある。
 例えば、同じ近隣地域内に近接して存在する「6m道路に南面する角
地」と「4m道路に北面する中間画地」とでは、少なくとも5%、地域
の状況によっては10%以上の価格差があり得るはずである。
 容積率が価格にストレートに反映する地域では予想外の価格差を生じ
るはずである。他にも間口と奥行や画地形状等が反映する標準地等であ
れば、鑑定士と一般人とでは価格認識に大きな乖離を生じる可能性を否
定できない。
 不動産鑑定士にとってみれば、「地価公示標準地の個性を反映した鑑
定評価額ですよ」と言い得ても、一般社会にすれば、標準価格からの試
算過程が明らかでなければ、指標とすることすら叶わないのではなかろ
うか。
 地価公示は鑑定評価書の公開に先駆けて、「標準地及び標準地の価格」
という概念規定を、一般社会に誤解が生じる余地のないほどに明確にす
る必要があるのではなかろうか。
 勿論、昨今あらためて話題になりつつある「正常価格」の再定義も含
めてのことではあるのだが。
 適正な価格を公開し、取引その他の指標とするという公示の目標から
すれば、評価額の公示に止まらず、標準価格・個性率・比準価格・収益
価格の公示をも目指すと同時に、「正常価格」というバーチャルリアリ
テイの不可思議さを追求することも忘れてはならない。
・バーチャル‐リアリティー【virtual reality】
・コンピューターの作り出す仮想の空間を現実であるかのように知覚さ
・せること。人間が行けない場所でのロボット操作などにも応用する。
・仮想現実。仮想現実感。
 当然に、現在の標準価格判定の在り方からすれば、収益価格に大きな
問題を生じる。つまり、住宅地であれ商業地であれ、画地の規模及び形
状並びに接面道路は建築可能な建物の規模を規定し、画地規模と有効利
用度との間には相関関係が認められるから、一定規模以下の画地におけ
る土地残余法収益価格は比準価格に対比すれば相当程度低位に試算され
る場合もあり得る。
 誤解されるといけないが、画地規模が比準価格形成に反映しないと云
っているのではない。敷地規模が比準価格単価にもたらす影響度に比較
して、建築可能延床面積は可能総賃貸収入に直接的に反映され、収益価
格単価に大きな影響をもたらすと云うのである。
 望ましい住宅地の規模、望ましい賃貸住宅の規模、有効利用度の高い
商業用建物の規模は当然にある訳で、そこから標準地選定をはじめ直す
必要があるのではなかろうか。
 近隣地域における標準的画地という表現も一般には理解され難いと考
える。A近隣地域では間口対奥行が1対1.5、画地規模が250平方メート
ルが標準的画地であり、B近隣地域では間口対奥行が1対4、画地規模
が 300平方メートルが標準的画地であると言っても、一般社会では直ち
に理解されるであろうか。理解してもらう努力も必要であるが、この辺
りを整理してみることを考えられないだろうか。
 即ち、官報公示事項における画地条件等について、「地積240m2、間
口12m、奥行20m、6m市道に東面する長方形地」というような事項を
公示することにより、「当該公示事項は選定された標準地の実際位置に
おける設定された標準画地条件である・・・実存しない場合もあり得る」
として、価格公示を行えないのだろうか。
 逆に、そのような地価公示方法には、何か問題が生じるのであろうか、
どなたか、御教示いただけないでしょうか。

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