収益還元法の素朴な疑問

【茫猿遠吠・・収益還元法の素朴な疑問・・02.12.02】
 収益還元法について考えていますと、判らないことばかりです。
茫猿が不勉強だからと云えばそれまでですが、三十余年前に鑑定の勉強
を初めて以来、そんなものだと思いこんでいましたが、最近になって改
めて収益還元法を勉強し直しますと判らないことばかりです。
 近日中に、斯界の先達をお招きして「収益還元法セミナー」を開催し
ますので、極めて素朴な疑問を幾つかまとめてみました。セミナーで回
答が出れば、『鄙からの発信』に続報を掲載します。
今は、茫猿の素朴な疑問と云うことで掲載します。
 金融資産から不動産に至る各種の資産における元本と果実の相関関係
について、その異同について理解しているようで理解できていない。
例えば、現金、預金、債券、株式、不動産投資信託、不動産、企業価値
のそれぞれにおける元本(資産価値)と果実(利子・配当・純収益)の関係
はどのような連鎖になるのであろうか。現金と更地の相違点をこの連鎖
のなかで説明すると、どのようになるのであろうか。
 各種の資産はインカムがフィックスドされたもの、キャピタルがフィッ
クスドされたもの、あるいは片方がフロートするもの、両者がフロート
するもの、それぞれにおいてどのような連鎖にあるのか、また分析期間
の長短はどのように影響するのか。
 極く々、単純にそんなことを考えてみて答えを探そうとしています。
・固定収入、固定元本、変動収入、変動元本
・収益予測期間の長短
・元本取引市場の存在・透明度
・収入変動・・・収支差額の不透明さ
・割引率・・内部収益率・・取引利回り
 土地残余法について、こんな疑問があります。
土地残余法は原価法などで試算した建物価格(B)に期待利回り(r)
を乗じて、建物帰属純収益(b)を求めます。
次いで、土地建物純収益から建物帰属純収益を控除して土地帰属純収益
を求め、この土地帰属純収益を還元して土地収益価格を試算する手法で
すが、これは矛盾ではないのかと考えるようになりました。
 すなわち、建物帰属純収益(b)を還元(r)すれば、建物の収益価格が
求められます。 b/r=A
この建物収益価格(A=b/r)は、建物積算価格(B)と同じものである。
つまり B×r=bである以上、B=b/r=Aとなる。
 控除した残余額をもって土地収益価格の基礎とするのでなく、複合不
動産収益価格を積算価格の土地建物割合で配分すべきではないのか。
そこには、合成の誤謬を生じていないのか。
土地に帰属する純収益というものは、常にお余りでよいのだろうか?
 DCF法では大規模修繕費を計上する場合が多いが、この際に毎年の
修繕費積立金或いは修繕費支出との関係はいかに考えるべきか、
毎年修繕積立金を計上するとした場合の計算方法は?
直接還元法の修繕費計上との整合性は?
・・・・・・いつもの蛇足です・・・・・・・・・
 02.12.03日経朝刊に、日本土地建物(株)の全頁広告が掲載されてい
ます。題して「不動産ソリューションサイト・Vital Solution Net」と
云います。
・公示・基準地価格サーチ
・不動産価格WEB査定
・不動産知識、公共機関検索、不動産ニュース、不動産用語
・不動産WEBセミナー、不動産証券化入門、ビジネス知識、リンク集
http://www.vs-net.jp/
 見事な「Vital Solution Net」です。
専門家にとっても有用な座右のポータルサイトと云えましょう。
必見です。WEB査定などは種も仕掛けもある仕組みですが、しかしここま
で軽く動き(茫猿はADSL)、一般市民にとって取組み易いものであれば、
まさに、必須の解決法でしょう。
・・・・・・蛇足の2です・・・・・・・・・
 DCFについて、「ここに云うDCFは銀行評価法DCFですが、」
こんな話が日経Expressに掲載されていました。
2002.11.27 「DCFの眉唾、または邦銀再生策の決定版」より部分引用
 ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)ってのは、ありゃどうも相
当眉唾のシロモンらしい。
 まず第一に、discount cash flowという英語はござんせん。
discounted cash flowです。ま、これは重箱の隅。
 もっと大事なのは、結局これが鉛筆を舐める世界の話だということの
方だ。将来キャッシュフローの割引現在価値を求めるというからには、
(1)期間をどれだけと見るか(2)現在価値に割り引き直す時の金利を
どう見積もるか、の2つが重要になる。
 不良債権買い取りの際、外資系金融機関がよくやるのは、(1)につい
て「え、5年でしょ」、(2)について「え、10%じゃないの」とこう、
結構オウム返しの反応で語れる体のものという。
 知らないながらも、いわゆるfixed incomeの金融商品、つまり債券な
んかのDCFを計算するのと同じかと、漠然と思い込んでいた私が浅はかだっ
た。債券の場合だと、まず期間がはっきりしている。割り引く時に用い
る金利も、いわゆるLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)という基準金利に
ナンボ上乗せしたもの、というのが通り相場だ。
 同じDCFでもそれが「事業の」キャッシュフローを予測し割り引く話と
なると、考えてみれば上記の(1)も(2)もこれ1本という正解はない。
だから鉛筆を舐める世界なのである。
※茫猿独白
 DCF法というのは、適用対象によって詐術紛いとなりはしないか。
(1)fixed incomeの金融商品
(2)事業のキャッシュフローを予測し割り引く場合
 複合不動産のDCF法は(1)と(2)のどちらに近いのだろうか?
賃料推移、空室率推移、経費推移、修繕費予測などを考えれば(1)より
も(2)に近いものであろうし、ましてや建築想定であれば、想定の基礎
如何では(2)よりも危ういのではなかろうか。
 とてもとても、詳細に説明するからより好い手法とは云えなくなる。
・・・・・・・本日これまで・・・・・・・

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