公取委警告を受けて

 昨年夏以来の重苦しいモラトリアムは、とにもかくにも一つのピリオ
ドを打ちました。公取委調査開始以来、思考停止を余儀なくされてきた
(社)岐阜県不動産鑑定士協会は、昨日以来新たなスタート台に立つこと
となりました。
 昨年10月に公取委調査開始が朝日新聞他で大きく報道されてから、
各界の皆様にご心配を頂いたことを、篤く御礼申し上げます。
 また、関係各方面諸氏には、多大のご迷惑をお掛けいたしましたこと
を関係者の一員として深くお詫び申し上げます。
 本日よりは、指摘された事項について二度と疑惑を招くことにないよ
うに、独占禁止法の趣旨を肝に銘じて(社)岐阜県不動産鑑定士協会の活
動を高めてまいりますことを会員の一人としてお誓い申し上げます。
そして「法抵触の疑いあり」という汚名を払拭して参りたいと考えます。
 茫猿としましては、今回の公取委の示達のポイントは、次の2点にあ
ろうと考えます。
一つは、
「標準宅地の鑑定評価業務について、一括して「鑑定評価に関する業務
委託契約」を締結することとし、会員が市町村と個別に契約することを
認めず、市町村に働きかけるなどして、会員が市町村と個別に契約でき
ないようにさせていた疑いがある行為が認められた。」という点です。
もう1点は
「なお、公正取引委員会としては、今後とも都道府県協会等がその会員
である不動産鑑定士等と市町村との間で個別契約を締結する行為を妨げ
ることのないよう注視していくこととする。」であります。
 公取委警告は、士協会による包括取纏契約を直ちに否定したものでは
ありません。しかし、士協会契約に収斂させようとする、士協会の不注
意な活動は、法の趣旨に抵触することが多いと指摘されたと考えます。
 茫猿は、今後の固定資産税標準宅値評価替えに際して、士協会はその
存在の社会性を自覚し、公益法人たる専門職業家集団の職能をもって評
価替え事業に貢献して参るべきと考えます。岐阜県士協会がその方向で
適正かつ透明な事業活動を続けて行くべく、会員の一人として微力を尽
くして参りたいと存じます。
 勿論私どもは、今回の公取委の示達を真摯に受け止め、(社)岐阜県
不動産鑑定士協会が随意契約の当事者になることを積極的に望むべきで
はなかろうと考えます。
 但し、過去の経緯を踏まえ、士協会の実績を評価頂いた自治体につい
て、先方からの希望があれば、固定資産税標準宅地評価包括取纏契約を
拒む理由はなかろうと考えます。
 しかしながら、公取委の警告書にもありますように、士協会が士・業
同体の社団であることから、誤りや様々な誤解を招くことが危惧されま
す。
 早急な組織変更も手続き的に困難ですが、可能な限り士会としての潔
癖性の保持に努め、社会のの信頼回復に努めたいと存じます。
 既に、組織上は会員以外の役員制度の導入を決定しており、総会決定
と所管庁の定款変更承認を待つばかりです。また、執行役員の体制一新
も日程の内にあります。
 何より大事なのは、13年度に入れば、直ちに業務着手が予定されて
いる、13年7月時点修正と、15年評価替え業務への対処方針です。
 冒頭にも申し上げましたが、士協会の包括取纏契約が直ちに否定され
た訳ではありません。しかし、多様な契約の存在を自ら容認することを
求められており、「個別契約締結行為を妨げる行為」は行ってはならず、
毛先ほどの疑いをも招いてはならないものです。
 茫猿が具申しております「固評業務に関する岐阜県士協会への提案」
の詳細を公開するには、まだ時期が早うございますが、折々にWebに
も公開して参りたいと考えますし、読者の皆様からのご提案やご助言も
お寄せ頂きたいと考えます。
 茫猿試案の骨子は、今後の固評業務対応方針を考えるにあたって、士
協会は、士協会包括取纏契約を標榜することにより、単価統一や業務標
準化や業務配分の適正化を図ろうと考えてはならないとするところにあ
り、士協会契約へ誘導する方策も基本的に行ってはならないと考えると
ころにあります。
 同時に、会員全体の業務成果物をより的確に、より適正に高めてゆこ
うと努力することを、第一義の目標とすべきと考えています。
 固評鑑定の的確さ・適正さ向上のために、地価公示に準拠した「評価
過程の分科会討議を充実させ、公示や調査との連携、市町村内価格均衡、
市町村間価格均衡をより一層確かなものに高めてゆく」、同じく「固評
に関する事例情報や標準宅地情報その他多くの評価関連情報の共有化を
一層高めて、評価の精度向上に寄与してゆくと同時に、多くの有益と考
えられる情報の積極的公開を図ってゆく」という公益的かつ会員の評価
支援事業に特化すべきと考えています。
 最後になりましたが、改めて御礼申し上げます。
この数ヶ月間、多くの皆様から、茫猿宛に激励やお見舞いを頂きました。
どれほど勇気づけられたかわかりません。
篤く篤く、御礼申し上げます。
 不注意のなせることでした。脇の甘さが招いたことでした。
しかし、災いを転じて福となしたいと考えます。
 公益法人の在り方が諸方面で問われている折から、専門家集団の在り
方を、今一度問い直して参りたいと考えます。これからも茫猿並びに
『鄙からの発信』さらには(社)岐阜県不動産鑑定士協会へ、旧倍のご支
援を頂きますようお願い申し上げまして、報告第一報と致します。

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