鑑定士の米櫃

【茫猿遠吠・・003.02.04・・鑑定士の米櫃】
 先号が凍り付く話であったから、今回は梅便りに先駆けて少しは暖ま
るというか、先々を遠望する話を考えてみたい。
 茫猿は不動産鑑定業が不動産情報処理加工分析業であると考えている。
とすれば、鑑定士の米櫃(飯の種としての基盤)は「不動産情報」であり、
エンジンは情報処理加工分析技術であろうと思う。
 ややもすれば価格判定結果に重きがおかれ、その部分(評価額)をもっ
て多額の評価報酬を得ていた時代は、今更言うまでもなく終わっている
のであり、価格判定に至る過程が重視され、将来の価格に至る分析シナ
リオが重視されうる本来の鑑定評価時代が到来しつつあるのだと考える。
 同時にもう一方では、低廉な価格判定業務が求められているであろう
し、WEBの世界では無料の価格判定サービスが既に登場している。
アナリシスと低額サービスに二極分化しつつある状況にどう対応してい
くかが問われている。
 コンピュータースキルでもある分析ツールや情報提供ツール等エンジ
ンにふれるのは別の機会にするとして、米櫃について考えたい。
茫猿にとって身近に詳細を知り得る岐阜の例を示せば
 取引事例悉皆調査事業 年間予算 約2000万円
 収益事例インデックス調査事業 約500万円
 その他情報処理事業 約1200万円
 これには、各種CD発行事業等を含めると  総計 3700万円の支出
 鑑定士会員数約40名  会員一人当たり 約93万円の負担である。
 地価公示・地価調査収入が、約10,700万円であるから、
 公示・調査等評価報酬対比率は 35%を占める。
 地価動向調査や成約価格動向調査等の士協会受託事業収入その他があ
るから会員一人当たりの負担が単純に93万円と云うことではないが、士
協会支出ベースでみれば、会員は毎月78千円の負担をしていることにな
る。これを多いと見るか、少ないと見るかは見解が別れるであろうが、
基礎的情報収集費としてこの程度の負担は避けられないのが現実である。
「情報はタダではない。」と言われる。
Yahoo-掲示板-ビジネスと経済> 不動産
このなかの最近のトピック(スレッド)に
「不動産売買価格の公表制度の是非」というのがある。
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?action=topics&board=1073724&sid=1073724&type=r
 取引事例公開や鑑定評価、地価公示等について、興味深い書込があり
ます。もちろん当を得ていると思われるものも、不当と思われるものも
混在していますが、世間はこう見ているという意味で興味深い。
そのなかに、こんな書込があったので引用する。
・これだから鑑定士は使えないと言われる由縁だな。
・情報はタダぢゃない。
・あんたは情報ソースになにか与えられるか?
・なにもできない奴に限って、情報公開だ、なんて言うんだよ。
・できる人間は公開されてなくても上手くやっている。
 私達は好むと好まざるに関わらず、
・取引事例・収益事例の収集・整理・分析・加工システム、
・マッピングシステム、
・CADシステム、
・投資採算分析ツール、
・情報交換の為のインターネット・ウエブサイト、イントラネット
 これらをトータルシステムとして構築運用することが必須なのであろ
う。でも最近の風潮として、少なからぬ鑑定事務所が全国的ネットを構
成しグループ化して業務の囲い込みを行おうとすることにある種の危惧
を抱いている。
 情報の蓄積という米櫃を満たすことは単位士協会エリアと云えども、
個々のグループでは困難であろうに、小規模会のなかでのグループ化の
進行は米櫃と業務収入を分断することにつながり、広義の情報ネットワー
クを破壊しかねないと危惧するのです。この辺りは難しい問題を孕んで
いると思いますが、なおざりにしていてよいとも思えない。
「鑑定士は孤(個)たり得ず。」
 単位士協会エリアで全員が協力して収集加工した不動産情報を、一部
特定グループの利益に供することと為りかねない行為は慎重であるべき
と考える。エリアに属する会員が収集したエリア情報はエリア会員の手
で活用される方向を第一に模索すべきであろう。もちろんのこと、情報
公開というテーマとは矛盾する話であり、ジレンマを感じてはいるので
すが。
 公益法人改革の方向は未だ定かではないが、士協会は公益法人として
位置づけを確立して、別途業益法人部門を育成することにより、エリア
情報を有効に活用することを考える時期に至っているとも思う。
同時に、単に地価公示等の付随として不動産情報が集積される状況を打
破して、集積された不動産情報の活用する一形態が地価公示であるとい
うような方向を目指すべきではなかろうか。
 取引情報の開示は望ましいことではあるが、開示スタイル、利用方法
その他について鑑定協会が主体的に取り組むべきであろうし、鑑定士協
会自身が積極的に方法開示を目指すことにより主導権を確保するという
視点があってもよいと思われるのだが、如何だろうか。

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