公開質問(平澤氏発)

【茫猿遠吠・・公開質問(平澤氏発)・・04.06.06】
「茫猿遠吠・士法への改正アンケート・04.06.03」にて紹介している、平澤春樹氏より、日本不動産鑑定協会宛の公開質問状(写)を頂きました。平成15年度協会事業報告のうち、1.企画委員会-5 に関する質問状です。発送済み公開質問状として頂いたものであり、先般来、話題にする「不動産鑑定法改正について」、鑑定協会の対応に関する質問書でもありますことから、本サイトに転載致します。


 ADRと鑑定協会に関する問題は、単にADRに不動産鑑定士がいかなる形態で関与してゆくか、或いは関与してゆけるかに止まらず、不動産鑑定士が隣接法律専門家(隣接法律専門職種)としていかなる位置に立脚しようとするのか、社会においていかなる存在感を得ようとするのかという、いわば不動産鑑定士という専門職業家そのもの根幹にふれる問題であろうと、茫猿は考えます。
 平成14年2月5日開催の司法制度改革推進本部・ADR検討会・第一回会合以来、本年5月開催の第32回会合に至るまでの二年余の審議に、さほどの関心を払ってこなかったことを少なからず後悔しながら、ADRと鑑定法改正について本サイトで取り上げてゆきたいと考えています。
 読者の皆様においても、ご意見を本サイト宛てお寄せ下さい。明らかな誹謗中傷に関わるものや、著しく品位に欠けるものでなければ、原則として原文のまま掲載させて頂きます。
 尚、平澤氏は鑑定協会横須賀会長宛の質問という形式をとっておられますが、この質問状は、企画委員会事業報告を承認した鑑定協会全理事役員宛の質問状であろうと考えます。全理事役員諸氏がこの質問状にどのようにお答えになるのか、我々は注目してゆかねばならないと考えます。
(注) ADR(Alternative Dispute Resolution):裁判外紛争処理
 判決などの裁判によらない紛争解決方法を指し、民事調停・家事調停、訴訟上の和解、仲裁及び行政機関や民間機関による和解、あっせんなどを意味する。このうち、(民事)調停や訴訟上の和解は、民事訴訟手続に付随する手続として裁判所において行われるが、紛争解決の作用面に着目して、ADRに分類されることが多い。
 裁判による解決が法を基準として行われるのと比較すると、ADRは、必ずしも法に拘束されず、紛争の実情に即し、条理にかなった解決を目指す点に特徴がある。
「法律学小辞典(有斐閣)」より(第一回ADR検討会配付資料より)
【以下は、平澤氏より寄せられた公開質問状・全文です】
平成16年6月4日
社団法人日本不動産鑑定協会
会長  横須賀 博 殿
会 員 株式会社 都市開発研究所     
   代表取締役 不動産鑑定士 平澤 春樹 
公開質問状
 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
ADRをめぐって明らかになってきた幾つかの疑問点について、事前に文書で質問致しますので、総会開催日までに、文書をもってご回答いただきますようお願い申し上げます。
 尚、社団法人日本不動産鑑定協会の総会出席者は会員数に比較して極端に少ないので(少ないことはそれ自体問題ではあるが)、何らかのメディア等を使って会員に公開することを前提に、この質問状を提出していますので、御配慮いただけますようお願い申し上げます。
1.不動産鑑定士の担当するADRについて
(社)日本不動産鑑定協会の広報誌『HIROBA 146号』及び第40回総会書類によれば、平成16年2月17日(火)開催の企画委員会において、ADR等の司法制度改革にあたっては、「協会が高度な倫理性を有する団体であることを説明してゆけば足りるとの認識の下、資格者と業者を含む現行法の体系を改正する必要はないとの結論に至った。」とのことですが、既に成立した総合法律支援法の第3条では、括弧書きで「法律により設立を義務付けられた法人」となっており、(社)日本不動産鑑定協会は法律により設立を義務付けられた法人ではないので、この法律の対象団体でなくなってしまったことは明らかです。
 また、ADRにおいても、司法改革推進本部のADR検討会におけるオブザーバーとしての出席も認められない状況となっています。 「高度な倫理性を有する団体」であるか否かは外側の評価であり、事実認識と方向性を誤った結果、協会幹部(専務理事も含む)の姿勢がこの様な結果を招いているものと思います。仮にそうでないとすれば、根拠を明示して、企画委員会及び理事会執行部は説明責任を果たすべきであると思いますし、協会の方向性を誤ったと認識するなら辞任する等責任を明らかにして下さい。事態は、「説明していけば足りる」程度では済まされないはずです。
2.(社)日本不動産鑑定協会以外の会員及び業者数について
 私達不動産鑑定士は、(社)日本不動産鑑定協会に入会していますが、不動
産鑑定業者は、協会の強制加盟が条件となっていませんので、協会のメンバーでない開業者が存在します。
 平成16年2月17日企画委員会の一連の報告を読みますと、不動産鑑定士法の改正と、強制加盟の社団とすれば問題が解決されることが明らかにもかかわらず、現行法の「制定経緯があってのものである。」等と、わざわざ正面か
ら検討することを避けている印象を受けます。
そこで、①本会のみに入っている会員数、
 ②士協会のみに入っている会員数、
 ③双方の協会に入っている会員数、
 ④開業者数のうちいずれの協会にも属さない業者数、
 のそれぞれについて明示して下さい。
3.社会的責務を真に果たせる協会体制について
 現在、社団である都道府県士協会は全国的に設立されていますが、それぞれ独立した法人であり、連合会制度となっていません。
 一方、県士協会であるそれぞれの社団は、(社)日本不動産鑑定協会の下部機関ではありませんので、法律上は協会の会長の指示指導に従う義務はないと思います。また、不動産鑑定業の業務受託は、いずれの社団に属さなくても可能となっています。
 実際、綱紀委員会に懲戒処分申請をした業者を、協会の会員でないことを理
由に野放しにした例があります。どう考えても協会の内部自治は協会の外にいる業者には及ぶはずがありません。この様な体制にある職能集団が、ADRにおいて代理権を取得するにふさわしい社会的責務を果たすべき体制にあるとは言い難い状況と思いますが、いかがでしょうか。
 従って私は、現行不動産鑑定業法を不動産鑑定士法に改正し、不動産鑑定士法に基づく特別法人である社団を設立し、不動産鑑定士の全員が強制加盟とする鑑定制度を実施できる体制を早急に創るべきと思いますが、いかがでしょうか。また、理事会、正副会長は、国土交通省の支援を受けながら法律改正運動に取り組むべきと考えます。
 聞くところによると、会長、副会長及び専務理事、理事会の各位も、現職の
大半がその様な方向にないと聞いています。そこで伺います。協会の大半の会員が士法への改正を望んでいることが明らかになった場合、これに反対あるいはこれを阻止しようとする理事及び専務理事並びに副会長がいるとすれば、意向が明らかになった時点で、協会役員を辞任すべきと思いますが、どの様に責任を取るのでしょうか。
4.配賦金の配布根拠について
 第40回総会書類によりますと、配賦金として、160,870,000円が支払われています。会員数の小さい県士会にとっては、財政上の支援を受けることになり、今後とも必要なお金であると認識しています。ところで、前記1,2,3と思考を進めた結果、協会及び各士協会はそれぞれ独立した法人であるのに、協会から配賦金が交付されるというのはどの様な根拠によるのか、経理処理上の科目の問題ではなく、性格について明示して下さい。
以 上
※総合法律支援法 第三条 (H16.6.2公布、同日施行)
 http://www.ron.gr.jp/law/law/sogohori.htm

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