苦悩する会計士(日経朝刊より)

【茫猿遠吠・・苦悩する会計士・・04.08.30】
 日経新聞朝刊に「会計ビッグバン・苦悩する会計士」と題するリポート記事が連載された。記事の概要は以下に記す通りであるが、鑑定業界が抱える問題点と類似するものが多い。 ご同様に資格者冬の時代に苦渋する鑑定士としては我が身につまされる話だ。
04.08.25 その1 「毎年が大学生」
 公認会計士には年間40単位(40時間)以上の義務研修及びリポート提出が課せられている。研修費用及びそれに充てる時間を含めて相当な負担である。
※不動産鑑定士にも研修制度は存在するが、現在では義務研修とはなっていない。近い将来には義務研修化が検討されているが、現在は任意研修であり、目標履修単位が設定されているだけである。ただ、実施された研修内容とその受講者は協会サイトで公開されている。
 粗末な椅子で2時間ときに3時間5時間と集中講義を受けるのは苦痛である。
しかも、終了時に受講票或いはレポートを提出しないと受講単位が認められないから、半日或いは一日、研修会場に張り付けられる。でも300人、500人の集中講義だから、居眠りしてても中抜き(途中エスケープ)してても、終わりの辻褄だけ合わせれば単位は認められる。茫猿にとっては大学の講義も似たようなものだったが、一応は終了考査があった。
04.08.26 その2 「年収ダウン時代」
 新卒会計士の年収は480万円が相場だが、年収引き下げが話題となっている。
背景は監査法人の業績悪化である。監査報酬の伸び悩みとシステム投資などの費用増、さらに時価会計、減損会計などチェック項目の増加がある。
さらに訴訟リスクが追い打ちをかけている。
ちなみに、最近号の日本金融通信によれば、銀行の平均監査報酬は2100万円強で、監査の平均述べ人日は253人日と報じている。
※鑑定評価業務報酬もH14実績までの推移でみれば、固評評価替え業務を除けば、微減或いは暫減傾向にあり、特に1件当たりの報酬は減少傾向にある。
固評評価替年を除けば、実績報告に見る最近の鑑定士一人当たりの年間評価報酬実績は900万円強で推移している。
04.08.27 その3 「まさかの就職難」
 公認会計士試験の合格率は8%強、毎年約1200人が合格しその九割は大手監査法人に就職する。しかし、会計士増員計画によって合格者が毎年増加するなかで、監査法人は収益低迷の影響もあり新規採用を手控えている。
試験合格後、会計士補として実務経験を積む必要があるが、その場所が狭き門となっている。
※会計士増員計画で、金融庁は2018年までに現在の約三倍5万人に増員する計画である。鑑定士も試験制度の改正が行われ増員も検討されている。鑑定業界でも実務補習引受事務所を求め難いことが課題となっている。
04.08.28 その4 「新天地をめざす」
 自分にふさわしい仕事は会計監査だけではない。そんな意識をもった会計士が少しづつ増えてきた。ベンチャービジネス、投資コンサルタントなど人材の流動化が始まりつつある。
※具体的な数値としては承知しないが、鑑定士資格を得ても鑑定業務に就かない鑑定士が増えているようだ。業界の新陳代謝と云う点から問題だが、何よりも新しい参入者が増えない業界というのは、それだけで衰退傾向にあると云えよう。同時に鑑定士が鑑定評価だけでなく、不動産の専門家として多方面の業務に携わるようになることは歓迎すべきことである。
 とまあ、綺麗事は云えるが、フロンティアが見えず、既存業務は衰退し、時価評価や証券化ビジネスなど東京集中ビジネスに絡んで業界のグループ化系列化だけが進んでゆく状況からは鑑定士の新天地がよく見えてこない。

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