カウンセラー会は何処へ

【茫猿遠吠・・カウンセラー会は何処へ・・04.12.18】
 不動産カウンセラー会が、独立法人化(特定非営利活動法人・NPO法人)を巡ってアンケート調査を開始している。
独立・NPO法人化の背景は
・社会的認知度の低さの解消
・財政基盤の弱体化(低額会費と基金取り崩し)の改善
・鑑定協会から独立して、自由な独自活動を行う
 ことにあるようだ。
 しかし、カウンセラー会十数年の歴史を振り返ってみれば
・創設当時に問題があった。
 カウンセラー会発足当時に、似たような資格制度として「不動産コンサルタント」が創設された。同制度は現在も持続し財団法人不動産流通近代化センターの主宰のもとで、不動産コンサルティング技能試験を毎年実施している。
当時、鑑定協会では鑑定士に無条件でコンサルタント資格(技能者資格)を与えるように要求したが拒否されたので、独自にカウンセラー資格創設に動いたという背景があったように記憶する。
『創設動機の不純さ』
・会員増強が低調
 記憶が確かであれば、鑑定士資格取得後7年以上の実務経験、その他のハードルやバリヤーを用意して鑑定士即カウンセラーとみなさないことにより、意図したか否かに関わらず鑑定士の分断化、二層化につながった。
というよりも、資格取得のハードルと取得後入会金その他ハードルの高さが若手鑑定士の拒否感と無関心を煽った結果、新規参入会員が増えなかった。
『鑑定士の分断化、差別化』
・組織底辺の無力さと不透明さ
 東京でのカウンセラー会の活動は、それなりの成果も挙げただろうが、組織末端では役員の選任も事業計画も何も見えないというか、地域代表がどのように選任されるのかも不透明なままに経過してきた。
 歴代の役員方は大いに努力されたのであろうが、それら役員諸氏に委任した意識すら一般会員、少なくとも茫猿にはないのである。
また、新規会員が増えないことは、カウンセラー会の高齢化及び弱体化に直結したのである。
『組織運営の不透明さ』
 この組織が独立法人化を目指すというが、問題はなかろうか。
・鑑定士は不動産の専門家であり、今も鑑定士としてコンサルタント行為やカウンセリング行為を行っているものである。今回の鑑定法改正は、この点にもふれている訳で、今さらに屋上屋を強化する必要があるのか。
・鑑定協会は会員数5千名強である。多いようにも見えるが、他の資格者団体と比較すればその人的基盤及び財政的基盤の弱さは自明である。
鑑定業界に逆風とか冬の時代とかいわれる現時点において、その5千名の内から相当数を割いて別組織を形成する意味や意義がそれ程にあるのだろうか、疑問である。
・独立法人化は云うまでもないことであるが、独立した事務局の設置に伴う負担増を招くものであり、鑑定業界が鑑定協会とカウンセラー会に分断されることによる人的資源の浪費も招くであろう。
 高々、5千名の組織である。いたずらに器を増やし、役員を増やすことに走るよりも、それらの人的財務的資源を本体というか母体である鑑定協会の強化に充てるべきではないのだろうか。
 もう一つ、見落としてはならにのは、今回のアンケート調査並びに今後の帰趨が現在のカウンセラー会員にのみ預託されていることである。
業際業務の重要さが叫ばれて久しいのであるが、「二台の馬車を用意するのが望ましいのか」、「一台の馬車に二頭の馬を用意するのが望ましいのか」は鑑定協会会員全体に問うべきことではなかろうか。
『張り子の虎がトロイの馬になるのでは?』
 創設を予定するNPOカウンセラー会の会員は、現在のカウンセラー会会員が母体となるのであるが、事業構想趣意書に拠れば新規会員について、
・別途基準により、複数会員の推薦と会の審査により認定するとある。
・希望する不動産鑑定士には準会員資格を与える。
・その他、専門資格会員、学生会員、法人賛助会員等が挙げられている。
 つまり、現状と同様に非カウンセラー会員鑑定士には既存会員推薦と審査を必要としているのである。既得権(たいした既得権でもなかろうに)保持の姿勢がチラチラとするのである。
 カウンセラー制度創設以来の会員にすれば、払ってきた入会基金や会費それに活動への尽力等の背景があり、安易に門戸開放はできないであろうが、それにしても改めて既存組織の発展的解消を図り、鑑定士以外の専門家との連繋を図る組織の樹立を目指すという方向は選択できないものであろうか。
 杞憂でなければよいのだが、カウンセラー会の独立法人化は新たな独立法人化を招くような危惧を抱くのである。
・競売評価人ネットワークのNPO法人化
・固評評価業務従事鑑定士ネットワークのNPO法人化
 他にも多くの業務毎組織の乱立を招く糸口となりはしないだろうか。
いわば、固有の業益を追求する組織が乱立して、鑑定協会がますます弱体化、分断化してゆく2005年以降ということでなければ幸いである。
 折しも、取引情報開示制度創設に際して、この制度に協力を要請されているのは「地価公示分科会所属鑑定士」と明示されており、鑑定士でもなければ鑑定協会会員でもないのである。ここでも取引事例を巡って、公示従事者と非従事者に分断される状況がある。
・・・・・・いつもの蛇足です・・・・・・
 NPO法人化構想趣意書Q&Aより
Q1:法人化のメリット
「行政からの業務の受託」が挙げられている。
※衣の下の鎧でなくてなんであろうか。鑑定協会や士協会では受託できない行政委託業務など存在するのか。他にもメリットとして「借入等の金融取引」「不動産の所有・登記」などが行えるとあるが、新生独立法人は借入を行い不動産を取得するというのであろうか。
Q6:鑑定協会との関係について
「専門特化したスペシャリストの重要性が高まることから、本会(カウンセラー会)は、そのニーズに応えるべきである。」
※鑑定士の二層化及び分断化につながるものであろう。
Q7:カウンセラー会以外の鑑定協会会員との関係
「鑑定士が幅広く参加できるような連繋・交流の方策を考える。」とある。
※複数推薦や資格審査を前提としているのに、門戸開放と云えるのか。
 混迷し求心力が衰えつつある鑑定業界&鑑定協会だからこそ起きる問題なのかもしれないが、屋上屋を造ったり別け隔てする組織に未来があろうとは思えないのだが如何だろうか。

関連の記事


カテゴリー: 不動産鑑定 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください