地価調査の安全管理

 昨年度末から今年度初めにかけて、幾つかの地方圏士協会並びに関係機関との意見交換を行いました。事例収集の実態、新スキームへの対応策、ネットワークなどインフラの整備状況等々、互いの状況に関わる情報交換並びに意見交換は示唆に富み得るものが多い機会でした。これらの詳細な内容は追って記事にしますが、本日の話題は地価調査業務遂行上の安全管理措置についてです。
 新年度に入ると同時に、H18地価調査業務が開始されました。地価調査地点の点検・選定替え業務を始めているわけですが、一つだけ奇異に感じていることがございます。


 先月、調査結果が公示されたH18地価公示評価においては、その業務仕様書第12、第七項に以下の規定が示されています。
「コンピュータによる各書式、各調書及び各資料について磁気媒体で授受を行う場合には、監督職員の指示に従い、暗号化等による情報漏洩防止策を講じること。」
 地価公示においては、鑑定評価書をはじめとする各書式、各調書及び各資料(事例等)の大半はコンピュータによる作成が求められており(事実上義務づけられている)、それらの調書・資料の磁気媒体(FD等)による交換及び提出に際しては暗号化が求められ、暗号化・復号化ソフトが提供されていました。
 ところが、H18地価調査では、このような業務仕様書も暗号化ソフトも用意提供されていません。地価公示は国土交通省委嘱業務であり、地価調査は都道府県委嘱業務という違いはありますが、公示基準時点が一月一日か七月一日と半年間の違いがあること、複数の不動産鑑定士評価か単独評価か、及び調査地点が異なること以外に両者の実質的業務内容に大きな差異が有るわけでなく、慣例的に地価調査は地価公示仕様書を踏襲して行われてきました。ですから、「暗号化等による情報漏洩防止策を講じること」は暗黙の了解事項というか、慣例的遵守事項であろうと考えられます。
 しかも個人情報保護法ガイドラインをあえて持ち出すまでもなく、安全管理措置の履行が重要な課題であるにも関わらず、地価調査においては適切な具体的措置がとられていません。また地価調査の一部業務は「地価公示との共通地点:代表標準地」並びに「半期動向調査」という国土交通省委嘱(関連)業務が含まれていますが、これに関しても適切な具体的措置がとられているとはいえない状況にあります。
 もっと重要なことは、地価調査においても「新スキーム関連事例資料」が、共同利用されていることです。地価公示において講じられた安全管理措置を、地価調査においても継続しようとしない日本不動産鑑定協会のコンプライアンスを疑問に思うのは独り茫猿だけなのでしょうか。
 さらに付け加えれば、個人情報保護法の全面施行後一年を経過しました。安全管理措置については新スキームのみが話題になりますが、旧スキーム(従来型事例収集スキーム)もそのスタートは「所有権移転情報:異動通知情報」であり、ともに行政情報を端緒とすることに相違はありません。つまり、新スキーム試行区域だから安全管理措置に留意し、旧スキーム施行区域だから放置してよいということにはならないのです。
 当然のことですが、不動産鑑定士及び不動産鑑定業者は法により守秘義務が課せられています。同時に不動産鑑定士及び不動産鑑定業者は日本不動産鑑定協会並びに国土交通省が制定する個人情報保護に関するガイドラインを遵守する義務を課せられているのです。
 ですから、個々の評価員或いは分科会においては安全管理に十全の注意を払い、万々が一にも事故など起こさないように務めています。
しかし、個々の不動産鑑定士や分科会組織の努力に委ねてしまうには限界もみえます。やはり、日本不動産鑑定協会或いは各都道府県士協会として然るべき対応が必要であり、早急の措置が求められるのではないでしょうか。
「何とやらの一つ憶え」と、誹られることを承知の上で申せば、
一刻も早い、「安全で、高速で、安価なネットワーク・・ブロードバンドWAN・・即ち強固なインフラ」整備が待たれるのである。

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