強制入会制度?

 最近の「強制加入化?名称僭称?」記事を読まれた方に「規制改革会議は鑑定協会強制加入制度を検討か?」といった誤解が生じると困るので、改めて背景を説明しておきます。規制改革・民間開放推進会議は資格制度の見直しに際して各資格者団体の意見を求めているのであり、士法制定や鑑定協会強制入会制度推進を検討する方向を目指しているものではない。この点は誤解しないで頂きたい。


H18.7.31付けにて「規制改革・民間開放推進会議」は、規制改革・民間開放の推進のための重点検討事項に関する中間答申を公表し、その重点検討分野:基本ルール分野:(3)資格制度の見直しにて、明らかな基本方針を示している。
 中間答申は、「強制入会制度は、試験合格者に追加的な規制を課すとともに、他の資格者団体との間に業務領域などについて障壁を作り、内部においては資格者個々人の自由な業務の展開を抑圧する頸木としての役割を果たしており、これらは利用者である国民にとっての資格者の活用を不自由にする大きな原因となっている。したがって、資格者団体への強制入会制度の在り方については、引き続き検討を行っていく必要がある。 」と述べており強制入会制度を是とするよりも、その再検討を色濃く滲ませているのである。
『以下は内閣府サイトからの抜粋引用である。』
「規制改革・民間開放の推進のための重点検討事項に関する中間答申」
平成18年7月31日 規制改革・民間開放推進会議
6 基本ルール分野 (3)資格制度の見直し 【問題意識】
① 資格制度の見直しについて
ア これまでの取組とその成果
公的資格制度は、国民の権利と安全や衛生の確保、取引の適正化をはかるため、厳格な法的規律に服する資格者を置き、安心できるサービスを国民に提供することに、その目的がある。しかしながら、その資格をもった者でなければ一定の業務活動に従事できないとするもの、いわゆる「業務独占資格」については、個人の特定の市場への参入を規制する等の側面を有していることにより、国民生活に不利益を与えている場面もあると考えられる。このような業務独占資格を典型とする資格制度については、過去に総理府に設置されていた行政改革委員会が、平成7年に「規制緩和の推進に関する意見(第1次)」の中で弁護士の大幅増員を提言して以来、下記に掲げるような資格制度の見直しに関する取組が進められ、成果をあげてきたところである。
(資格制度の見直しに関するこれまでの取組とその主要な成果)
(中略)
イ 資格制度の見直しについての基本的な考え方
上記のように、平成 11 年3月、規制緩和委員会の「規制改革についての第1次見解」による提言に基づき閣議決定された「規制緩和推進3か年計画(改定)」に掲げられた資格制度に関する見直しの基準・視点に沿った形で、各資格について以後一定の改革が推進されてきたところであるが、業務独占資格については、業務の独占、合格者数の事実上の制限、受験資格要件などの規制が維持されることにより新規参入が抑制されたり、資格者以外の者が市場から排除されることにより当該業務サービスに係る競争が制限されるといった弊害が残っていると言わざるを得ない。
したがって、業務独占資格については、有資格者でないとできない業務をできるだけ限定するとともに、隣接職種の資格者にも取り扱わせることが適当な業務については他の職種の参入を認めるなど、資格の垣根を低くすることが必要である。
 また、社会状況等が急速に変わっていく中、資格者が担うべき業務の内容も時代の変遷とともに変わり、新たな技術・能力を身につけることが必要である。当然あらゆる分野において、そのような職能技術・能力を高めることは必要ではあるが、特に業務独占資格については、業務を行うことができる者が限定されており、競争原理が働きづらい環境であることから、業務独占資格者の質の確保・向上や資格者の職歴や懲罰等の情報の開示等が社会的に求められていると言える。
したがって、資格制度全般に関し、各省庁は、国民生活の利便性の向上、当該業務サービスに係る競争の活性化等の観点から、所管する業務独占資格等について、上述した資格の見直しの基準・視点に基づいて、業務独占規定、資格要件、業務範囲等の資格制度の在り方を更に見直すべきである。
② 個別の問題意識
ア 資格者の質の向上
これまでは、資格者が業務を行うにあたっては、有資格者としての倫理観・責任感が働くことにより、法が遵守されているという前提が当然にあるかのように信じられてきた。しかしながら、そういった信頼を裏切る行為による事件も続発しており、単純に資格者の倫理観・責任感に頼るだけでは、法秩序を守ることができない状況が生じている。さらにまた、社会の変化・複雑化もあり、資格者がその資格を取得した当時の知識や技術だけでは解決できない問題も発生している。これらを解決するためには、資格者の知識・技能の向上を図る仕組みが必要であると考える。これについては、現在でも資格者団体が講習を実施するなど資格者の知識・技能の向上を図る取組みがなされているところもあるが、必ずしも受講の義務付けなどがなされておらず、資格者の能力に個人差が生じていると考えられる。
したがって、競争制限的あるいは参入障壁的なものとならないような配慮を行いつつ、資格者に対する講習等の実施とともに、それらの受講の義務付けや、必要に応じて免許の更新制の導入なども検討すべきであると考える。また、医師・建築士のように専門業務がある程度分化されている資格については、各分野の資格者の能力を民間で認証できる仕組みや資格者の認証や業務実績の情報を開示する仕組みなど、利用者が資格者の質や専門性を判断できる仕組みを導入することが、利用者利便と専門能力の向上のために必要と考えられる。
イ 懲戒処分等の適正な実施
弁護士以外の業務独占資格においては、資格者はその行った法律違反を含め不適切な行為に対して、所管大臣から懲戒処分を受けることになっている。しかしながら、懲戒処分に当たっては、処分を行う基準等が明確でなかったり、資格によってはこれまで極端に処分実績が少ないものもあるなど、適正に処分が行われてきたことに疑念を抱かざるえない部分もある。また、処分の内容については、官報等で公表することとされていない資格もある。
懲戒処分に当たっては、まず、懲戒処分の基準を明確にすることが必要である。
さらに、不適正な行為を行った資格者に対しては、懲戒等の処分が厳格に行われるべきことは、資格者の倫理観・責任感を維持する観点からも当然であり、厳格かつ適正な処分により、他の資格者の不適切な行為に対する抑止力となると考えられる。また、処分等の対象となった者の氏名、行為や処分の内容等の公表は、不祥事事案の再発を抑止するとともに、資格者の提供するサービスの利用者である国民に注意を喚起することによって不測の損害を被ることを防止する観点からも重要である。
ウ 強制入会(団体)の在り方
今年度ヒアリングを実施した業務独占資格の事務系 10 資格のうち、公認会計士、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、行政書士の8資格では、法律により資格者団体の設立が義務付けられるとともに、資格者団体に入会しなければ当該資格者の業務を行うことができない、強制入会制が採られている。不動産鑑定士については、法律上、団体の設立及び入会を強制する規定はなく、実際、民法(明治 29 年法律第 89 号)第 34 条の規定に基づく任意入会制の社団法人が設立されている。
資格者団体及び関係省庁は、強制入会制を採る主な理由として、資格者の品位保持、資質の維持・向上、資格者の非行の抑制、低所得層等に対するサービスの提供、行政からの連絡・示達の利便性等を挙げている。
しかしながら、これらの理由は、当該資格者団体に入会しなければ資格者としての業務を行うことができないという追加的な規制を試験合格者に課することを正当化するものとは考えられない。強制入会制度をとらないと会員数が減少して資格者団体が維持できないという財政上の理由も上げられるが、資格者団体の維持は会員にとって魅力のある活動を当該団体が行うことによって図られるべきは当然のことである。
強制入会制度は、試験合格者に追加的な規制を課すとともに、他の資格者団体との間に業務領域などについて障壁を作り、内部においては資格者個々人の自由な業務の展開を抑圧する頸木としての役割を果たしており、これらは利用者である国民にとっての資格者の活用を不自由にする大きな原因となっている。したがって、資格者団体への強制入会制度の在り方については、引き続き検討を行っていく必要がある。

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