分割と連帯

 先回の記事の標題は「歯止と連繋」であった。最初は連帯と書いたのだが、何かしっくりとこないから連繋に替えたのだが、今日は分割と連帯である。読者が厭きないように短く書く。


 英仏蘭などの植民地統治の歴史を探らなくとも、日本史にも江戸幕府をはじめ幾つかの例が求められるように「統治の原則は分割」にある。つまり被統治者を分割して統治し、互いに差別でイガミあわせることにより、被統治者が団結することの無いように分散させることに分割統治の本質がある。言い方は悪いが「近親憎悪」とか「敵の敵は味方」みたいな話である。税源委譲をめぐる東京都と過疎県との争いに代表される「都市と農村」も意識してか、せずしてか、分割統治の一例だろう。
 今の日本の労働環境がまさにこの状態にある。正社員と契約社員、派遣社員、パート社員、下請社員などという、職場における身分階級を増殖させて互いに反目させる。少なくとも同じ労働組合に団結させることを阻止する。「契約・派遣・パート社員の利用が、正社員の雇用を守るための安全弁です。」などというのが、その甚だしい統治例である。
 こういった労働環境の変化は、雇用の柔軟化とか自由化といった美名を装ってもたらされたけれど、その実態は、労働基本権や年金、雇用保険、健康保険などのセイフテイネットをなおざりにしただけでなく、雇用を不安定にしワーキングプアを増やしただけである。国内の労働者を分割統治し、グローバル化というお題目のもとで海外の貧しい労働者と国内の派遣・偽装請負労働者を競わせている。いわば「アンフェア・レイバー・トレード」といえるだろう。
 この原稿を用意している間に、またもや新しい分割統治という鎧が衣の下から見え隠れする。自民党の幹事長や総務会長などが何を云うかといえば、年金問題の原因は社保庁職員の怠惰にあると言い出したのである。彼らは国民の怒りの矛先を社保庁職員へ向けることにより、自らの失態をその陰に隠そうとしている。
 年金台帳のコンピュータ化導入時における社保庁職員組合の対応に幾つかの問題があったのは事実だし、報道もされていた。しかし、だからといって社保庁幹部や厚生省の幹部の責任が帳消しになるわけではない。基礎年金番号導入後の十年間、霞ヶ関高級官僚は管理者として正しい対応を行うべきであるにもかかわらず、渡り退職金を手に入れることしか眼中になかったのではないか。或いは歴代の厚生大臣や自民党社労族は社保庁・厚生省・社会福祉利権を我が派閥のものにすることしか眼中になかったのではないか。
 厚生省とか労働省という官庁は本来的に国民の側(消費者・生活者の側)に立つべき官庁と思っていた。そこのところが経済産業省や農林水産省と異なると思っていたが、最近の「ハシカ・ワクチン不足」問題を見ていても思うのだが、その実態は経産省よりも農水省よりも企業側に位置していたのではなかろうか。だから、コムスン問題も起きるし、年金問題も起きたのだと思う。
歴代の社保庁長官の渡り・天下りを見ると寒々しい、これはとてもとても長官独りだけのことでは無かろう、多くの厚生官僚の利権に供されてしまったと見るのが正解であろう。
 公開された一例では社保庁長官退官後に、
・全国社会保険協会連合会副理事長(在職1年1か月)
・社会保険診療報酬支払基金理事長(同6年1か月)
・旧医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構理事長(同3年11か月)
・社会保険健康事業財団理事長(同6年2か月)を歴任とある。
渡り歩いた法人のいずれもが厚生省外郭団体であり、高額の報酬と退職金を得ているわけである。医療福祉予算の増大化は必然的に天下り関連団体を増やし、いつのまにやら厚生省を、OB天降りに関して超A級官庁にしていたという訳でもある。
・・・・・・いつもの蛇足である。・・・・・
 天降りとは、本来は神が降下することを云い記紀に神話に元を発する用語である。すなわち天孫降臨のことを云うのである。品性下劣なキャリア組が高額報酬と退職金を求めてお手盛りで作った関連法人をウロウロすることを云うものでもないし、事業予算というお土産を背負って関連業界にタカリにゆくことを云うものでもない。日本語は正確に使ってほしいと願うのである。
 年金5000万件消失問題の前に、厚生年金保養基地問題があるし、厚生年金会館問題があるのであり、これらは年金消失でなく政官による年金喰い物であったことを忘れてはならないのである。
 身内のサイトを紹介するのは気恥ずかしいから、ひっそりと記しておく。
「自民党改正憲法草案についての記事」は納得できる切り口だから、お時間があれば覗いてみて下さい。連繋し連帯し歯止めをかけるのは今だと思うからリンクをかけておきます。

関連の記事


カテゴリー: 茫猿の吠える日々 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください