頓挫?の真偽

 鑑定協会ネットワーク構築が暗礁に乗ったのではという観測記事を掲載したら、「私は、取り止めだの、暗礁だのは、聞いていないので、従来どおりに進むのだと思っていましたが・・・。」というコメントを頂いた。この記事はそのRESである。


『先号記事で茫猿はこのように書いた。』

 断片情報しか得ていないし、背景取材もしていないから正確なことは判らないが、鑑定業界におけるネットワーク構築事業に頓挫の気配がある。
 鑑定協会サイトにおいて、地価調査委員会は、[2007/2 更新]以後の議事録開示がなされていないし、情報安全活用委員会は未だに何の情報開示もない。しかし断片的未確認情報によれば「地価公示のオンライン化事業」に関して、国土交通省は来年度新規予算要求を見送った模様であり、それに伴い鑑定協会も事業化見送りに至ったようである。

 圧倒的に情報量が多い立場にある「コメント氏」がご存じないのであれば既定方針どおりなのであり、『鄙からの発信』が誤報というか先走りしたのかもしれません。 ただ、オンラインネットワーク構築と地価公示のオンライン化は従来から申し上げているように目的と手段の取り違えが見られます。地価公示のオンライン化、なかでもASP化に偏重する事業方針は危ういものがあります。
 地価公示のASP的オンライン化は霞ヶ関頼みが過ぎるところがあり、ASP化転けたら皆転けたになりかねない危うさがあります。鑑定士自身がネットワーク構築の必要性を認識しその負担に応じてゆくという共通認識が希薄なのを案じています。
 で、地価公示オンライン化頓挫の論拠である。
論拠その一は、地価公示室説明資料である。 この件に関して、H18.9.11付け「ICT一里塚」と題する記事で、地価公示のオンライン化に関してこう記した。

 この件に関して、「H19地価公示の実施について(H18.8.30付け分科会説明資料)」の13頁にはさりげないけれど興味深い記述がある。
2.幹事の負担軽減について (できることからH20公示に対応)
3)事務的負担軽減策
・提出書類の軽減 (ペーパーレス化)
・データ授受のオンライン化
 地価公示のペーパーレス化とオンライン化はまさに茫猿がかねてから提案してきたことであり、この両者の実現には安全なネットワークが必要なことは当然なことである。H19公示は地価公示の業務説明書や仕様書にペーパーレス化やオンライン化が登場した最初の歳として記憶されるであろう。

 ところが、「H20地価公示の実施について:H19.8.29」資料では、これらに関する記述が全部削除されているのである。「幹事の負担軽減について」項目は残されているが、内容は・分科会、幹事会の開催回数等について三項目が示されているのみであり、本来なら一年間の進捗状況が記載されるであるはずのペーパーレス化もオンライン化も一切記述されていない。
論拠その2は国交省土地・水資源局予算概算要求書である。
 H19年度予算概要(平成19年1月)と、平成20年度予算概算要求(H19.8)を対比すれば透けてくるのである。H19地価公示関連予算額:4,480百万円、H20同要求額:4,583百万円であるが、増額に対比する内容説明は「地価公示を的確に実施するとともに、将来の地価動向を先行的に表しやすい主要都市における高度利用地の地価分析調査を行う。」とあり、公示のオンライン化等については何もふれられていない。
論拠その3
 公示オンライン化頓挫については、他にもソフト作成関連情報等を二、三得ているが、伝聞情報であるしニュースソースの関係もあるからここには記さない。
 さて、地価公示のオンライン化頓挫がなぜ鑑定協会ネットワーク構築事業座礁につながるかといえば、鑑定協会においてはネットワーク構築に関する確固たる目標も到達点も方法論も存在しないからである。資金的にも方法論的にも全てを公示のオンライン化に依存しようとするところに根源的な疑問が存在するのである。
 今さらになるからくどくは云わないが、オンラインネットワークは安全・簡便・廉価を充足するものでなければならず、鑑定協会会員全員が必要に応じて参加できるオープンなシステムでなければならない。地価公示だけでなく、地価調査、新スキームデータ共同利活用等に柔軟に対応するだけでなく、会員のナレッジマネージメント(取引事例情報をはじめ各種情報の共同利活用)に寄与するものでなければならないのである。そのような視点からネットワーク構築を考えれば、官頼り、中央頼りという姿勢で構築されるネットワークに多くは期待できないし、何よりも構築に向ける鑑定士自身の意欲が感じられないのである。だから現下の推進力である「公示オンライン化」が頓挫するのであれば、必然的に協会ネットワークも頓挫するであろうと予想するのである。
 かくして、暗号化ソフトマイシェルターを利用したinetメールによる情報交換ネットが事実上機能する地価公示はともかくとして、「マイシェルター」が利用できない地価調査の安全性はどう確保すると云うのであろうか、さらに鑑定業界の広汎なインフラとしての情報基盤整備構築は何処へ向かうのであろうか。

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