消尽の世紀の涯に

 久しぶりに内橋克人氏の発言にお目にかかった。 週刊金曜日09/01/09号巻頭で佐高信氏との対談である。 週刊金曜日の2009年第一号は「暮らしとカネを考える」がテーマである。”豊かになれない日本”と題する内橋氏と佐高氏の対談に続いて、【暮らしの困窮】内政はなぜガタガタなのか (中村うさぎ)  【格差・貧困】岩盤をコツコツ叩き続けるしかない( 湯浅 誠)  【巨大株式会社】トヨタ・ソニー・三菱をどうするか (奥村 宏)   【世界同時不況】環境分野で成長を創り出せるか( アンドリュー・デウィット) などが掲載されている。


 内橋克人氏の「同時代への発言:消尽の世紀の涯に」を読んだのは1999年頃である。 当時、茫猿は『鄙からの発信』にこのように記している。

 内橋氏の凄いのは、10年前の発表原稿はおろか、20年前の連載原稿を今回全8巻にまとめられたことです。勿論、99年に入って書き下ろされた原稿もございますが。とにかく10年、15年前に書かれた原稿が今でも輝きを失っていないとは、凄いじゃないですか。小説や文芸評論なら兎も角、経済学原論なら兎も角、折々の経済評論が、バブル期を越えて、バブル崩壊期を経て輝きを失っていないとは、希有のことに思います。
 その時々の時流に乗っかって、煽動まがいの言論をまき散らす経済評論家が多い中で、10年を経ても色褪せない原稿を発表してこられた、氏の評論活動には敬意を通り越して、感動します。

今また、改めて変わらぬ本物の凄さを感じています。 内橋氏はかねてから、市場原理主義や規制緩和万能主義を批判してきたのですが、週刊金曜日09/01/09号では「改革が足りないからだ、もっと改革を」と叫ぶ竹中平蔵氏や日経新聞を「改革ハングリー派」と名付けて批判し、八代尚宏氏を「小泉改革の道を掃き清めた学者」と評します。
 「いざなぎ超え景気」は日本を超不均衡国家にしてしまったと嘆き、その間に輸出は11.4%伸びたが、個人消費の伸びは1.5%、雇用者報酬は▲0.3%にとどまった。超低金利状態のあいだに、家計から奪われた利子所得は331兆円と示す。
 円安水準を維持し、低金利やゼロ金利を維持し、円キャリートレードを助長し、雇用所得伸び率をゼロにし、労働市場規制を緩和してコストを極限まで切りつめて輸出を伸ばした結果が現在であると氏は云う。
 日本という国が成長しても、日本人が豊かになれないのはなぜか?
それはグローバルズ(トヨタ、キャノン、ソニーに代表される輸出企業)の肥大化にのみ意を用いてきた『改革』のもたらした必然であると内橋氏は云う。 今や米財務省、IMF(国際通貨基金)、世界銀行の三位一体で進めてきた「ワシントン・コンセンサス」(破綻した国への財政支援と引き換えに新自由主義を呑ませる)の崩壊であり、今後の道筋は「分断・対立・競争」ではなくて、「連帯・参加・共生」にあると云う。
 それでも新自由主義改革派は「改革なくして成長なし。」と云うのであろうが、シェアナンバーワンを追い求めた結果が現在であるとすれば、拡大至上主義といういつか辿った道を今も歩むのではなく、オンリーワンを目指す方向がやはり正しいと考えるし、日本という極東に位置する島国の目指すべき方向であろうと思われるのである。
 内橋克人著書 同時代への発言 全八巻(1,4巻を除いて品切れ)
1 日本改革論の虚実
2 「消尽の世紀」の涯に
3 実の技術・虚の技術
4 企業社会再生論
5 環境知性の時代
6 周縁の条理
7 90年代不況の帰結
8 多元的経済社会のヴィジョン
 内橋克人著「悪夢のサイクル・ネオリベラリズム循環」文芸春秋社刊
 内橋克人著「共生の大地」岩波新書

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