膝笑う旅-山寺編

11.04 仙台鑑定シンポジウム&地理情報プレゼン、11.05 被災地視察の日程を終えた茫猿は、翌11.06早朝に仙台を発って仙山線の乗客となり山寺立石寺へ向かいました。 前夜来の雨模様が残るなかではございましたが、芭蕉の名句で名高い山寺を訪ねるにはふさわしい天候にも思えたことです。 また二泊二日のあいだに伺った様々なお話しを反芻するにも、とても佳い機会のように思えました。 早朝でしかも仙台へ向かう通勤通学客とは逆方向の道筋ですから乗客はまばらですし、もう晩秋の気配が色濃く漂う沿線風景も、今の茫猿にはとても似合っているように思える仙山線車中でした。


仙台駅にて季節限定・芋煮そばを朝食にいただき仙山線フォームに入りますと、山寺へ向かう07:07発の前に06:37発作並行きがあります。 仙台駅で待ち時間を過ごすよりも、作並駅に下車するのも一興と考え、この途中駅までの列車に乗ったというわけです。 仙台駅の大時計は06:15を指しています。

季節限定の芋煮そばです。 全体の感じはケンチンそばに似ています。

この日以後三日間に乗った新幹線を除く列車の全てに共通していることですが、車内がとてもスッキリしています。悪口にすればなにやらもの寂しい雰囲気です。 その原因は乗客数が少ないことだけではなく、中吊り広告が無いことにあります。 都会の電車では煩わしい中吊り広告ですが、何もないのも広告主が集まらない経済事情という背景も思わせて、いささか侘びしさを感じさせます。

愛子と書いて、どう読めますか? 「あやし」と読めるのは仙山線通の方だけでしょう。
「アヤシ」と聞くと奇妙な駅名ですが、「愛子」という表記を見れば和みます。

07:26 に到着した作並駅では、後続の山寺経由山形行き列車の待ち時間が30分ありました。無人駅ですから駅前に出ていますと、パラパラと通勤通学客を送り届ける自動車がやって来ます。 この写真はフォーム側の駅舎風景です。こけしが迎えてくれるのも陸奥らしくて好ましいものです。作並駅は作並温泉への乗降駅です。

とても意外なことに、この山間の作並駅が日本交流電化発祥の地でもありました。 鉄道ファンとしては、作並駅に降り立った甲斐があるというもので、思わぬご褒美をいただいた気分です。茫猿も歩けば旧跡に会うということでしょう。

08:14 山寺駅に到着しました。駅舎には立谷川を挟んで向かいの山寺を望む展望台が設けてあります。

立石寺登山口から奥の院までの参道全ての石段数は千を超えるというが、とにかく行けるところまで行こうと、前夜の雨でところどころぬかるむ石段道を登り始めたのである。 この時はまだ、その後の旅程を何も考えてはいなかった。登山口から入って最初に立石寺根本中堂に参拝する。賽銭箱にはなぜか布袋様が鎮座している。

根本中堂から山門に至る参道沿いに、芭蕉と曽良の像が据えられている。

石段を登り始めてしばらくすると、山裾から霧も登ってきましたから、眺望もききませんし折角の紅葉もおぼろげですが、何枚かのスナップを載せます。

芭蕉が「閑かさや 岩にしみいる」と詠んだ岩肌は、どのあたりでしょうか。 あちらこちらの岩肌には磨崖仏が刻まれていますが、多くは風化して読みとれません。

奥の院ほど近くでみとめた紅葉と黄葉です。

あえぎながらも、一段登っては鑑定業界の安寧を祈り、一段登っては亡き父母を偲び、千余段を踏破して奥の院に到着しました。奥の院からも、眺望をうたう五大堂からも眼下の霧に遮られて何も見えませんが、でも負け惜しみなどではなく、閑かさと霧のあいまに覗く紅葉だけは堪能できました。

ふたたび仙山線の乗客となり山形駅に到着しました。別の乗降口をもつ新幹線に慣れていますと、在来線と並ぶ新幹線が物珍しく見えます。

山形駅前はしばらく前の岐阜駅前に似て懐かしい感じである。 駅前にて昼食をと三分ほど歩いてみつけた蕎麦屋さんが店構えも好ましい「さん七」。 注文したのは新蕎麦を使う「鴨汁と板そば」&ビール。 本来なら人肌燗のお酒だが、山寺千余段の石段後遺症を考えて、ビールにて自重する。 蕎麦の香り、喉ごし、そして鴨汁の旨さ、語る術(すべ)無し。 添えられていた山葵菜も旨かった。

山形駅から新幹線にて終着新庄駅まで、新庄駅からは陸羽西線にて余目経由羽越線吹浦駅へ向かう。吹浦駅は「ふくら」と読む。 写真は新庄駅に停車する到着列車と東京行き列車。

夕暮れ迫る吹浦駅は茫猿の他には降りる人もいない無人駅です。駅前の看板を頼りにタクシーを呼んで、今宵の宿へと向かいます。この日のもう一つのお目当てである日本海に沈む夕陽は、生憎の小雨模様で観ることは叶いませんでしたが、山寺の霧に浮かぶ紅葉、旨い蕎麦、作並駅の拾いものに加えて、さらに上を望むのは烏滸がましいというものでしょう。

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