地価の下落

【茫猿遠吠・・地価の値下がり・・01.04.12】
 茫猿は地価公示の公表時期に合わせて、「地価の値下がりは是か非か」
と題して小論を用意しておりました。しかし、花粉症の影響や忌まわし
い飛蚊症に取り憑かれたことから、しばらくモニターから遠ざかるはめ
となり、いささか時期を失しました。
でも、敢えて葉桜的な便りをお届けします。
 参議院選挙が近いこともあり株価と地価の下落が実体経済に及ぼす影
響を案ずるあまりに、「地価下落は非であり、日本経済立ち直りにマイ
ナスの影響を大きく与える」という論調が「永田町」を中心に巻き起こ
っています。
 本当にそうなのか、株価のことはイザシラズ、地価の下落は全てにマ
イナス材料なのかと考えています。確かに、3月末決算期を控えて公示
価格が下落したとアナウンスされれば、不良債権はその範囲と額を増や
したことでしょう。
 しかし、それは不良債権処理を一日延ばしに先送りしたことの結果で
あり、別の観点から云えば、不動産市場が早期の不良資産処理を求めて
いることの反映ではないのでしょうか。所有から使用へ不動産市場の態
勢が大きく変化する中で、不要不急の未利用地や非利用地を抱え込むこ
とへの警告を、日毎厳しくしているのだとは考えられないでしょうか。
 要素価格均等化定理を持ち出すまでもなく、ユニクロや輸入葱・牛蒡
の例に見るまでもなく、国別に資本・労働・土地等の生産要素の存在量
が異なる場合でも、自由貿易下では、その価格(利潤、賃金、地代)は
どの国でも同じになるということではないでしょうか。
 つまり土地は輸入できないが、土地を多く使う財(農産物)を輸入す
れば、農地からの転用が可能になって土地にゆとりが生まれ、地価は上
がらないということであり、その結果が水田や畑地の有休化であり、工
場地の空き地化である訳です。
 茫猿の廻りでも、農地の価格下落は宅地より遙かに急ピッチであり、
今や農振農用地は買い手を探すことが困難になりつつあります。別に農
地のことを持ち出さなくとも、全国の新規造成工場用地の販売不振、草
生え地化を見れば明らかなことです。
 このような状況に有効な手が打てず、土地の流動性を高めようとか、
プライスキーピングを図ろうという政治姿勢は、事態をさらに悪化させ
るだけなのではないでしょうか。
「500平方メートルの敷地に150平方メートルの住宅を国民的目標にしよ
う」という政治家が何故現れないのでしょうか。「国民一人当たり700
万円の負債を残した財政省として歴史に名を残すでしょう」などと嘯く
お方しか、我々は何故得られないのでしょうか。
 昨今、話題の不動産投信だって、そのように考えてみれば危なっかし
い話である。全体に右肩下がり基調のなかで、当面の目論見はともかく
として、五年後十年後の転売価格は神のみぞ知るということではなかろ
うか。
 不動産流動化という美名のもとに小口債券をつかまされる「マグル」
と、証券化して売り逃げる「ヴォルデモート」と云うコトでなければよ
いのだが。
※筆者(注)
「マグル」と「ヴォルデモート」については、「ハリーポッターと賢者
の石」に詳しく紹介されています。この数年間に読んだ本のなかで、
「正法眼蔵随聞記」「他力」と並んで面白かった本です。
さすがに、マザーグースの世界が生み出す本です。
 ところで、地価公示の発表に合わせて、「第一勧銀総研ニュース」は
地価予測と地価公示について、大胆且つ辛口の記事を掲載しています。
第一勧銀と云えば、(財)日本不動産研究所と縁浅からぬ銀行なのです
が、時代は移り過ぎてしまったのでしょうか。
 同研究所は公示地価制度の課題と題して「土地取引価格の指標とする
には、市場価格と一致しない部分が多い。」とか、「投資信託協会は、
協会の自主ルールとして、不動産投資信託(J-REIT)が保有する不動産
の評価方法について、公示地価や路線価などの公的指標を認めない方針。」
とか、「3つの鑑定評価方式を勘案して求められるとされていることか
ら、逆に地価算出の基本スタンスが分かりにくくなっている。」などと
論評し、「公示地価制度の意義を再検討すべき時期にきている」と結ん
でいます。
http://www.dkb.co.jp/houjin/report/news/200103-2/index.html
いつもの蛇足です
この件に関して、年初に茫猿は「小さな疑問」と題して触れております。
お見逃しの方はお目通し下さい。
http://www.morishima.com/cgi-bin/np_boen/newspaper.cgi?action=view&code=985123972

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