REITの下落

 新聞報道によれば、東証リート(不動産投資信託)指数が低落しているとのこと、iNetで検索するやはり相当に(約10%)下落している。サブプライム問題に端を発し、海外投資家が売却に転じたと云われることや、証券化対象の有望な投資先が乏しくなったことが原因しているようだ。新聞記事によれば、投資先としての商業施設などでは小売り競争の激化から賃貸収入が低下しREIT価格下落に反映していると云う。


 2003/3/31時点を1000とする東証リート指数は、2007/09に2060を付けた後、下落に転じて、2007/12は1800台で推移している。東京・名古屋・大阪そして札幌や福岡、仙台各地方中枢都市の都心地区地価上昇に支えられて、好調を謳われてきたREITも転換点に差し掛かったようである。そもそも都心地価の上昇自体がREIT価格の上昇やREIT投資先不動産取得価格の高騰を反映するものであったと云える。REITや私募債などの不動産証券化が都心地価を引き上げ、引き上げた地価がREIT価格を引き上げるという、ある種の循環論であり、マッチポンプとも云えるのである。ただし、識者はこれを正のスパイラル効果とも云う。
 同時にREITの新規上場は、上場中止が相次ぎ2007年は2件にとどまり、2006年の1/6とのことである。拡大一方の不動産投資証券市場も踊り場に差し掛かったというか転換点を迎えたようである。

※東証リート指数
 東証REIT指数は、Jリート(J-REIT)の中で東京証券取引所に上場している不動産投信全体の値動きを表す指数です。従ってJREITを投資対象とする投資信託の多くがこの東証REIT指数をベンチマークとしています。


 ところでH20年前半の地価動向を八卦見的に云えば、この数年下げ止まりや上昇傾向を示してきた地価は、来年前半に上げ止まり地域と下落幅拡大地域に分化すると予測する。半年も先の経済動向など本当のところは誰にも判らないが、短期的な理由と長期的な理由に分けて考えると自ずと見えてくるものがある。
 短期的には、都心の賃貸不動産を中心に証券化が進むことにより、REITや私募不動産ファンドが主導してきた主要都市中心街区地価上昇が一段落すると考えるからである。無限に上昇し続ける土地も無いし、証券化が可能な不動産にも限界があり、既に限界値に来ていると考えるからである。
 日本の中心商業地地価は先進諸国の商業地に比較して割安と言われ続けてきたが、原油高に脅かされる日本経済のファンダメンタルズは海外投資家を躊躇させるに十分であろうとも予想する。REITに限らず私募債にしても証券化対象不動産は、その収益原資である賃料推移に敏感である。賃料上昇傾向とキャップレート下落傾向が08年は踊り場に差し掛かるだろうと予想するのである。小売り商業施設はともかくとして、およそ証券化になじまないだろうと思われる物件にまで拡がった私募債市場も様子見状況になるであろう。
ちなみに、12/14に発表された日銀短観によれば、大手不動産業の業況判断最近DI値「37」で変化幅は▲13である。先行きも▲10の「27」である。同じく中堅企業では最近値▲2、先行値▲8、中小企業では最近値▲8、先行値▲4である。要するに全産業平均の最近DI値「17」変化幅▲4よりはDI値は良いが、悪化傾向にあり、さらに来春の動向にも懸念をもっているのである。ただ、これら不動産業の景況感悪化は、建築基準法改正による建築確認申請停滞の影響という見方もある。 以上はあくまでも八卦見的な予想であるが、それでも「REIT掲示板」などを読んだ上での感想である。
 もう一つの長期的な視点とは、順不同的に云えば、日本の都市計画規制の曖昧さ、米価の長期低落傾向と農地価格、少子化と人口減、企業も個人も所有から賃貸へ、住宅購入可能総額と居住地面積シビルミニマムなど、いずれの要因を挙げても地価上昇にはつながらないのである。長期的には地価はまだまだ下落基調にあると考える。勿論、バブル崩壊後の地価はマダラ模様であり、上昇するところ、安定するところ、下落に歯止めがかからないところと二極分化、三極分化が続くのであろうが、基調的には下落にあると考える。
 何よりも今や全世帯数の20%に近づいているという世帯収入200万円以下層の増加に歯止めが見えないのである。このいわゆるワーキングプア層増加は社会の好況感に冷や水を浴びせるものだし、社会の不安感を煽る以外のなにものでもない。 さらに悩ましい問題は、望ましい居住面積シビルミニマムや生計費に占める居住費負担割合が未だに見えてこないことである。目標値設定へに、コンセンサス形成の兆しもないのである。

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