茫猿の紙魚(しみ)

 最近、茫猿が手に取った書籍を紹介します。
紙魚のような茫猿ですが、斜め読みも含めての話です。


※「ホーキング未来を語る」スティーヴン・ホーキング著 角川書店刊
 著者自身が判り易いという宇宙論であるが、当然それほどにスラスラ読めるものではない。でも以前の「ホーキング宇宙を語る」よりは、イラストも多くて読みやすい。 150億年前のビッグバン以前の宇宙、そして膨張の果ての宇宙。宇宙に満ちている暗黒物質についてなど、気宇壮大な話である。
 なによりも面白かったのは「人間原理」である。「我々が認識する宇宙は、何故そのような姿であるのか。もし、少しでも異なるものであれば、我々はここに存在しなくなる。つまり、宇宙はその存在を認識する人間の存在有ってのものであり、認識されるのは人間が誕生した宇宙のみである」という考えである。何やら、鶏と卵みたいです。
※「金融工学、こんなに面白い」野口悠紀雄著 文芸春秋刊文春新書
 金融工学で金持ちになれるかを問い、予測するエコノミストは真のエコノミストではないと云う。寝転がって読める金融工学入門解説書。
※「声に出して読みたい日本語」斉藤孝著 草思社刊
 朗読というものを、音読というものをしなくなって久しい。朗々と声に出して読めば、日本語のすばらしさを再発見するでしょう。第一、声を出すと云うことは、体に佳いことです。この書を座右に置くことから老後を始めたいと考えます。書中に、高校生の頃に暗唱していた詩を発見しました。
 幾時代かがありまして  茶色い戦争ありました
 幾時代かがありまして  冬は疾風吹きました
 幾時代かがありまして  
  今夜此処での一と殷盛り(ひとさかり)
  今夜此処での一と殷盛り(ひとさかり) 以下略 (中原中也作)
※「誰が日本経済を救えるのか」東谷 暁著 日本実業出版社刊
 著名な経済学者やエコノミスト達を実名で批判しています。かの長谷川慶太郎、中谷 巌、リチャード・クー、水谷研二、植草一秀そして竹中平蔵、金子勝などなど。 必見一読、落鱗眼前
※「本田靖春集1巻2巻」本田靖春著 旬報社刊
 ジャーナリスト本田靖春氏の著作集である。戦後50年・60年代の大きな事件の背景をえぐるルポルタージュである。
 誘拐・吉展ちゃん事件
 村が消えた・下北半島満蒙開拓団 
 私戦・寸又峡事件
 私の中の朝鮮人・筆者の体験を通じた朝鮮支配
 3巻以降は、戦後・美空ひばりとその時代、疵・安藤組花形敬とその時代、K2に憑かれた男達など全5巻が刊行の予定である。 新聞やTVで得た上滑り情報で、物事を判断する怖さや先入観の恐ろしさを実感させてくれるノンフィクションである。寡聞にして本田靖春氏を知らなくとも、1冊は手にとって、どこからでもよいから読んでみれば、自分のものの見方がいかにも皮相的であることに気付くでしょう。
・・・・・・いつもの蛇足です・・・・・・・・・
 最近、エンターテイメントは、女性作家の本に重きをおいています。
高村 薫、高樹のぶ子、宮部みゆき氏などの著作は、単行本文庫本含めて乱
読状態です。なかでもお薦めは「乃南アサ」氏です。 日常生活に潜む落とし穴を描くミステリータッチは、日常ホラーともいえるものです。特に女性心理の描写は怖いものがあります。
短編集・悪魔の羽根のなかの「はびこる思い出」乃南アサ著 幻冬舎刊
その最後の一節には、背筋に寒さを感じました。男なら読んでおくべき小説であり、女なら記憶しておくべき小説です。
追伸 もう一つ、声に出して朗々と
朝焼け小焼けだ 大漁だ
大羽鰯の 大漁だ
浜は祭りの ようだけど
海のなかでは 何万の  
鰯のとむらい するだろう  (金子みすゞ)

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