忍び寄る危機

 鑑定協会執行部はこの事態の先の先に起きるであろうことについて何も気付いていないし、 一番肝心なことを後回しにしようとしているのではなかろうか。「知らしめず、寄らしむべし」なんて、明治時代でもあるまいに。混乱を避けることを優先し、今起きつつあることを報せることなく、協会が一般社団法人化しさらに公益法人化してから、連合会化することを最優先するという姿勢でよいのであろうか。執行部が認識している実態を正しく告知し、会員に周知したその上で衆知を集めるという姿勢が求められているのではなかろうか。


 規制緩和行政改革の一環として「公益法人改革」が進められている。
(社)日本不動産鑑定協会も(社)都道府県不動産鑑定士協会もこの改革の波に無縁ではいられないだろう。今まで鑑定業界は所管庁や都道府県の公益法人設立許認可制度と監督・指導に庇護されてきたと云えるのであろう。(社)日本不動産鑑定協会や全国の(社)都道府県不動産鑑定士協会は、一見しただけでは規制・監督・指導に見える公益法人設立許認可制度に庇護されてきたのである。2008/12/01からはその庇護も監督指導も取り払われた状態におかれるということである。
 表現が適切ではないかもしれないが、「小泉改革の置き土産:規制緩和グローバル化自由競争」の荒波に、2009年以降はもまれるという覚悟の有りや無しやが問われている。誰もが設立登記だけで一般社団法人○×不動産鑑定士会を設立することができ、公益法人認定を受けることができる時期がほぼ一年後に迫っているのである。我々の外部は云うに及ばず内部からも、様々な類似競合組織が設立される可能性がある。既に鑑定士等により設立されている既存組織である協同組合や中間法人が一般社団法人に組織替えされる可能性も高いであろう。無風状態のサンクチュアリから追い出される世間知らず箱入り状態の鑑定士達は何処へ往くというのであろうか。
 茫猿が如何様に警告しようとも、柳に風と受け流され、過ぎれば露骨にいやな顔を見せられる。ならば、躓くまで放っておこうよ、少しは痛い目に遭わないと気付いてくれないだろう。いやがられ嫌われてまで警告を続けなければならないほどの義理はない。
 実態的には不動産鑑定業界団体である日本不動産鑑定協会や都道府県鑑定士協会は、業益団体から脱皮することが求められているのに、相も変わらず業益優先主義から抜け出せていないのである。鑑定協会や都道府県士協会が業者中心の業益維持確保団体で在り続ければ、新法による設立される新しい一般社団法人は鑑定士でもって構成される資格者団体たり得るし、その存在意義を見出せるのではなかろうか。そのことがもたらすであろう事態を正しく予想すべきであろう。いいえ、多くの賢明な役員諸氏は十分承知し予想済みであろう。そして、しばらく前に流行った「想定の範囲」とうそぶくつもりなのであろう。
 既存の中間法人鑑定士会や鑑定業協同組合は一般社団法人鑑定士会に衣替えできるし、業態転換する組織も出てくるであろう。地価公示や地価調査の取り纏め業務を鑑定協会や都道府県士協会が受託するように、(業登録が望ましいが)固評取り纏め業務を市町村から受託が可能である。取り纏め業務受託後における個別業務割り当ては当該市町村から委託鑑定士を指名してもらえれば事足りるであろう。
 次いでは地価調査の入札に参加できるし、地価公示の入札を求めることも可能である。既存の団体が業益や業界主義から抜け出せずに士業併存という旧態のままであるならば、業者の既得権益を擁護し個々の鑑定士の窮状に目を向けようとしなければ、不動産鑑定士のみで構成される新法一般社団法人鑑定士会が登場してくるのにそんなに時間を要しないであろう。
 このように設立される新法一般社団法人が公益法人認定を得ることも可能であろう。全国唯一とか一都道府県一士協会という行政指導の保護壁が取り払われるのであるから、公益性認定基準に適合しているかいないかが問われる状況になり、民間が主導するより多くの公益事業展開を誘導するのが法改正の趣旨でもあろうから、適合すると認める法人に公益社団法人の名称を許可しない理由は存在しなくなる。団体乱立は業界の混乱を招くなどと云う理由は許されなくなるのである。
 まさに行政の許認可・保護というサンクチュアリから、準則主義・自由競争という規制緩和の荒海に「鑑定協会と鑑定業界」が、漕ぎ出してゆく覚悟が見えてこないのである。

 宋 文洲氏のメルマガよりその一節を読者諸兄姉に送ります。
「論長論短 No.48 美しい言葉が偽善に聞こえる瞬間」
 企業経営にもよく見られる現象ですが、自信を失いかける内向きの組織では高尚な言葉が多く使われる傾向があります。しかし、その言葉と実態の矛盾が必ず大きくなり、かえって人々の不信感を増幅させます。その瞬間、美しい言葉が偽善に聞こえてきます。
 

 情報加工処理を業態とする業界団体が、情報を管理したり、情報にバイアスをかけたりするなど、漫画なのだと気付いてほしい。意図的に管理しバイアスをかけているのであれば、あまりにも会員を愚弄するものである。この問題に関して理事会では多分昨年から(新法の成立前後から)報告されているはずであるが、ポイントの周知に欠けていると云える。
 このように云えば、「以上の件は事業報告、事業計画に掲載済みである。また、いたずらに混乱を煽りかねない予想記事を公式文書に載せるわけにはゆかない。また、不確実な予想に基づく議案を委員会や理事会に上程できない」と切り返されるであろう。この項に関して茫猿は「想定の範囲」なのである。
 もう一つ以外と気付かれていないことを書いておこう。多くの既存公益法人は現在も今後も業者団体で在り続けるであろう。鑑定士のように資格者関連社団法人は以外と少ないのである。だから他団体の動向などはあまり参考にならないのである。
 この件に関して詳細はこの記事をご覧下さい。「公益法人改革の陥穽

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